自在コラム

⇒ 日常で観察したことや環境問題、金沢大学での見聞、マスメディアとインターネットについての考察を紹介する宇野文夫のコラム

☆海女、美のフォルム

2013年04月25日 | ⇒ランダム書評
  「海女さん」が注目されている。今月から始まった、NHKの連続テレビ小説「あまちゃん」は初回視聴率20.1%(ビデオリサーチ・関東地区)で、2006年の「芋たこなんきん」以来の20%超だそうだ。ドラマの舞台は三陸地方の海女の町で、ヒロイン天野アキ(能年玲奈)が海女をめざし、地元のアイドルになって町を元気にしていくという単純なストーリーなのだが、明るくほのぼのとしている。連続テレビ小説と言えば、1週間の間に起承転結があって、暗い場面があるが、その点、この「あまちゃん」は楽しく明るいのだ。

  朝日新聞の書評欄に『海女(あま)のいる風景』(大崎映晋著・自由国民社)=写真=を見つけ、本を書店に注文した。大正9年(1934)生まれで、水中撮影家でもある著者は昭和30年代から全国の海女村に取材に出向き、特に石川県輪島市の舳倉島(へぐらじま)に通い、当時は普通だった裸海女の仕事ぶりを撮影した。その写真が多数収録されているというので、価値があると思い、注文した。当時の裸海女の写真はモノクロではいくつか本がある。ただ、カラー写真はお目にかかったことがない。届いた本の写真は予想通りカラーだった。水中を潜る裸海女の写真は、まるで人魚のような美しさである。それはまったく無駄のない、潜水技術の洗練されたフォルムなのである。素潜りで数分のうちに、岩にへばりついたアワビを見つけ、剥ぎ取るのである。採取ではない、海底でへばりついたアワビと格闘する、まさに自らの命をかけた狩猟なのである。英語での表記は female shell diver だ。

  自分自身も新聞記者時代に舳倉の海女さんたちをルポールタージュ形式で取材した。1983年ごろ、今から30年も前の話になる。いまでも、輪島市では200人余りがいる。もうそのころは『海女(あま)のいる風景』で紹介されているような裸海女ではない。ウエットスーツを着用していた。もちろん素潜りである。そのころ、18㍍の水深を潜ってアワビ漁をしていた海女さんたちがいた。このように深く潜る海女さんたちは「ジョウアマ」あるいは「オオアマ」と呼ばれていた。重りを身に付けているので、これだけ深く潜ると自力で浮上できない。そこで、夫が船上で、命綱からクイクイと引きの合図があるのを待って、妻でもある海女を引き上げるのだ。こうして夫婦2人でアワビ漁をすることを「夫婦船(めおとぶね)」と今でも呼ばれている。

  海女さんから一つ、怖い話を聞いたことがある。アワビが大好物なのは人間だけではない。ウミガメも大好きなのだ。海女さんが採ったアワビをめがけてウミガメが食らいついてくることがある。そんなときは、アワビを捨てて逃げるのだそうだ。アワビが分厚い殻で岩にへばりつくのも、大敵ウミガメから身を守ることだったのだとこのとき知った。

  海女さんという生業(なりわい)は注目されている。2010年6月、「輪島海女採りあわび」「輪島海女採りさざえ」が商標登録された。アワビとサザエの商標登録は国内で初めてだそうで、ブランド化するまでになった。また、ことし10月に輪島市で、全国各地の海女さんたちが集う「海女サミット」が開催されると報じられている。海女の伝統漁法と文化を国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産登録を目指している。

  私が知る海女さんたちは実に気高く、人に媚びようとしない。素潜りにより自然と向き合い、共生しながら漁をする海女さんたちの生き様、その知恵がもっと見直されていい。

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