自在コラム

⇒ 日常で観察したことや環境問題、金沢大学での見聞、マスメディアとインターネットについての考察を紹介する宇野文夫のコラム

☆車窓から見える能登の風景

2017年04月25日 | ⇒トレンド探査
  先日(23日)JR金沢駅で「北陸トライアングルルートきっぷ」を買った。能登半島の穴水町でワインの勉強会があり、現地でのテイスティングや懇談会でのアルコールのことを考え、乗用車ではなく列車での往復にした。金沢駅のIRいしかわ鉄道の窓口で往復切符を買おうと係のスタッフに尋ねると、「北陸トライアングルルートきっぷがお得ですよ」と勧められた。チケットはJRの窓口で買った。

  通常なら金沢と穴水の往復で4000円余りの値段だが、2日間乗り放題で2800円なので確かにお得だ。しかも、この切符はJR西日本、IRいしかわ鉄道、あいの風とやま鉄道、のと鉄道、加越能バスの5社が連携する切符で、5社の駅、たとえば金沢駅、七尾駅、穴水駅、氷見駅、高岡駅、城端駅などまさに地理的に三角点を結ぶトライングルの列車とバスが乗り放題なのだ。

  さっそく穴水駅に向けて列車に乗り込んだ。普通列車で6両編成。能登に行くのに列車に乗るのは何十年ぶりだろうか。いつもなら乗用車か特急バスを利用する。久しぶりのせいか、車窓から眺める景色はどこか新鮮だった。

  少々肌寒かったが晴天で視界が広がって見えた。宇野気(うのけ)駅。かほく市宇ノ気は2つのイメージがわく。駅の向こうにコンピューター関連メーカー「PFU」の本社がある。中学や高校の同級生も何人かこの会社に勤めていた。PFUの創業時の社名は「ウノケ電子工業」。1960年に地元の歯科医師らが出資して新たな町の産業にとつくった電子計算機メーカーがツールだ。駅のたたずまいを見て、かつての同級生たちの通勤姿を勝手に想像した。もう一つ、宇ノ気は哲学者・西田幾多郎の生まれ故郷だ。私は学生時代に西田の『善の研究』を読破しようと試みたがあえなく挫折した。駅前には西田幾多郎の像がある。

  七尾駅でのと鉄道に乗り換えた。今度は一両編成。能登のレ-ルは基本的に単線である。駅で止まっている対向列車はほどんどが「ラッピング列車」と呼ばれる。のと鉄道ではアニメの「花咲く いろは」を、JR七尾線では宇宙人と空飛ぶ円盤を描いた「UFO」列車があった。なんとも華やかな。

  能登中島駅。「演劇ロマン駅」と愛称の駅名がついている。俳優の仲代達矢が率いる無名塾はこの駅の近くにある能登演劇堂で毎年ロングラン公演を行っている。今年も10月14日から約1ヵ月(25回)の公演を予定している。演目はブレヒト作の『肝っ玉おっ母と子供たち』。17世紀のヨーロッパで起きた三十年戦争が舞台、仲代氏は戦争で子供を殺されてもたくましく生き抜く「肝っ玉おっ母」役を演じるようだ。

  中島と言えば、越中国司だった歌人の大伴家持が能登へ巡行した折、この地で歌を詠んでいる。「とぶさ立て 船木伐るといふ 能登の島山 今日見れば 木立茂しも 幾代神びそ」(『万葉集』)。船を造るりっぱな木々が茂っている、なんと神々しいことか、と。天平20年(748)、家持29歳のときの歌だ。この船とは当時の大陸の渤海(698―926年)からの使節団が能登をルートに奈良朝廷に朝貢し、帰国する際には能登で建造された船を使った。

 能登鹿島(かしま)駅。ここは「さくら駅」として知られる。ホーム沿いに数十本のソメイヨシノが「桜のトンネル」状になっている。列車がこのトンネルに滑り込むと桜吹雪が見事に舞ったのが印象的だった。終点の穴水駅には到着したのは金沢駅を出て2時10分後、車窓から見えたのは、能登の山海の自然であり、歴史であり、現代の風景だった。

⇒25日(火)午後・金沢の天気  はれ
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