自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆さいはてのアート <上>

2017年10月16日 | ⇒トピック往来

   能登半島の先端・珠洲市で開催されている「奥能登国際芸術祭2017」(9月3日―10月22日)にこれまで4度訪れた。その中から自らの私の感性に合った作品をいくつか紹介する。

     ~海沿いの寂れた小屋と捨てる貝殻が作品になる「サザエハウス」~

   前回ブログで紹介した珠洲市馬緤のキリコ祭り(13、14日)に参加した後、国際芸術祭のポイントをいくつか巡った。途中、沿道の広場で衆院選の候補者用の掲示板があり、近所のおばさんたち3人が候補者ポスターを見ながらにぎやかに話していた。たまたま、通りかかったので、聞き耳を立てた。石川3区(能登地区)では自民の新人(48歳)、希望の元職(43歳)、共産の新人(36歳)の3人が立候補している。「今回の選挙は若い人ばっかりやね。元気があっていいね」と笑っている。すると、一人が口元をほころばせている自民候補のポスターをのぞき込んで、「この人、ちょっと歯並びがよくないね、前歯がガタガタや」と。するともう一人が同じく歯を見せて笑っている希望元職を指さして、「この人はしっかりした歯やわ」と比較した。あとは雑談で終わったようだ。人物は見た目の印象が心に残る。ひょっとして歯並びが投票行動の決め手になるのかもしれないと考えさせられた。本題から話がずれた。

    「サザエハウス」(作者:村尾かずこ)。海沿いの一軒の小さな小屋の壁面を膨大な数のサザエの貝殻で覆っている。よく見るとサザエだけでなく、アワビや巻貝の殻もある。また、同じサザエでも貝殻のカタチが違う。殻に突起がくつもあるもの、まったくないもの、それぞれにカタチの個性がある。サザエは一つ一つがその生息地(海底の岩場の形状など)に適応して形づくられた、完成度の高いアートなんだと改めて思えるから不思議だ。靴を脱いでハウスの中に入ると今度はサザエの貝殻の入ったような白色の曲がりくねった世界が広がる。

   入り口にいたシニアの男性ボランティアに、サザエの殻はどこから集めたのかと尋ねた。すると「全部で2万5千個、全部市内からですよ」と少し自慢気に。聞けば、アーチストの村尾氏との地元の人たちの打ち合わせで、今年6月から一般家庭や飲食店に呼びかけて集め始めた。貝殻の貼りつけ作業が7月からスタートし、作品のカタチが徐々に見え始めると、集まる数も増えた。当初から作品づくりを見守ってきたという男性ボランティアは「サザエの中身は食べるもの、殻は捨てるものですよ。その殻が芸術になるなんて思いもしなかった。殻を提供しただけなのに地元は参加した気分になって、(芸術祭で)盛り上がってますよ」とうれしそうに話した。

   「サザエハウス」の外観は全体に白っぽい。カメラを向けていると、赤いスカートの女性が通り過ぎたのでシャッターを押した。赤と白のコントラストが鮮やかに映った。半島の先端、さいはてのアートがまぶしい。

⇒16日(月)午後・金沢の天気   くもり


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