自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆続・広告のメッセージ性

2017年01月07日 | ⇒メディア時評
  「これは、自虐ネタですよ」。大学の先輩教授は3日付の全国紙の広告を見て笑った。『早慶近』の特大文字とマグロの頭の写真が掲載された全面カラー広告。広告主は近畿大学だった。

   この特大文字を読者が普通に読めば、「早稲田、慶応、そして近大」。これまでは「早慶上智」だったが、最近は上智にとって代わって近大が早稲田、慶応と並んだ、と言いたいのだろうと解釈する。文章を読めば、3日が近大の一般入試出願の受付の開始日と書いているので、インパクトを狙った、自虐ネタだと理解できる。

   ウイキペディアによると、自虐ネタ(じぎゃくねた)とは、主にお笑い芸人が、漫才や漫談などの話題として使用する、自分を貶(おとし)めるネタのこと。自虐ネタの元祖はタレントの坂田利夫かもしれない。自ら「アホのサカタ」と歌って、そのキャラをネタに笑いをとる。

   今回の広告では、その自虐ネタを大学の広報目線で使っているということで価値が高いと感じる。文章を読むと、広告で言うべきことは言っている。「“早慶近”はさておき、日本は語呂がよいだけの大学の“くくり”に依存してませんか? こんなもん世界から見たら、通用するわけがない。2017年。そんな大学界の常識、そろそろ見直してもいい頃じゃないですか。」と。その通りだ。日本でしか通用しない大学のランクを表現する“くくり”はグローバルを標榜するこの社会にどのような価値や意味があるというのだろう。そのことをひと言せていただきたいとの意思が十分に伝わってくる。ただし、オチもつけている。「でも、さすがに“早慶近”て、言いだした自分でもアホくさくて、笑てまうわ。」。言葉表現といい、実に関西らしい自虐ネタのオチである。

    そして最後に“早慶近”の意味を披露している。「みなさまに早々に慶びが近づきますように」。この広告の練り方は深い。

⇒7日(土)夜・金沢の天気   はれ   
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