資格雑誌『不動産受験新報』のフレッシュ&リラックス情報

資格・開業情報誌『不動産受験新報』編集スタッフが、編集にまつわるおもしろ話、資格情報、耳より情報をつづっていきます。

広告

※このエリアは、60日間投稿が無い場合に表示されます。記事を投稿すると、表示されなくなります。

不動産受験新報2007年8月号 はじめての民事訴訟法第5回

2007-08-31 09:00:00 | Weblog
住宅新報社・月刊「不動産受験新報」20007年8月号
       (毎月1日発売 定価910円)

はじめての民事訴訟法
第5回
住宅新報社講師 安部一郎

1今回のテーマ
 皆さん,こんにちは。はじめての民事訴訟法の第5回を始めます。
 今回のテーマは「証拠」です。
 民事訴訟の審理は,どのようになされていたか覚えていますか。まずは,当事者に「主張→認否→主張→認否」を繰り返してもらいます。その過程で否認が出たら,その部分を争点として,そのあと証拠調べに移るのでした。
 今回は,その証拠について解説します(実際の細かい手続等は,次回になります。今回は理論部分です)。特に「自白」という部分は本試験でも何度も出題されている頻出論点ですので,しっかりと理解してください。
2なぜ証拠が必要なのか
(1)自由心証主義
 日本の民事訴訟法は,自由心証主義という考えを採用しています。
 自由心証主義とは,裁判所が事実を認定するときには,裁判官の確信に従ってすべきものとする原則のことです(247条)。要は,「その事実があるのか,ないのかは裁判官任せ」ということです。
 これを聞くと,「それは危険じゃないか。法律で決めたほうがいいんじゃないか。たとえば,『証人が3人以上そろったら真実とする』という法律にしたほうがいいのでは?」という疑問を持つと思います。そういう考えのことを法定証拠主義といいます。ですが,この法定証拠主義のほうがかえって危険です。これが許されるのであれば,金で証人を買収する人が出てくるでしょう。
 このように法定証拠主義は,かえって真実から遠ざかってしまうので,近代の訴訟法は事実認定について,裁判官の知見を全面的に信頼して,その自由心証に任せているのです。
〈民訴の基本〉事実の認定
 裁判官の心証で決定する。
(2)証拠の必要性
 ここまでで,ある事実について争いになった場合,その事実があったかなかったかは,最終的には裁判官の心証で決まる,ということが分かりました。
 ただ,これには縛りをかけるべきでしょう。
 たとえば,私が皆さんに対して貸金返還請求訴訟を起こしたとして,皆さんが金銭消費貸借の主要事実のすべてを否認していたとします(金銭消費貸借の主要事実〈返還約束の事実・金銭交付の事実〉が争点となります)。ここで裁判官が私のことを気に入り,「金銭消費貸借の事実はあったんだ」と勝手に認定したら,皆さんは納得できません。また,こんなことがまかり通ったら,世間は「裁判は,裁判官の気分しだいで決まるらしい」という悪評が広まり,誰も民事訴訟制度を信用しなくなります。
 そこで,必要になるのが証拠の制度なのです。証拠調べ手続の後,裁判官が「領収書がある。また,契約に立ち会った人の証言がある。だから,金銭消費貸借はあったんだ」と認定すれば,当事者は納得できるでしょう。また国民の裁判官への不信も起きないでしょう。
 このように,自由心証主義の下,合理的な判断を裁判官にさせるために,そして,裁判制度への国民の信頼を得るために,証拠という制度があるのです。
3なぜ証拠を提出するのか
 ここまでで,争いのある事実は,「証拠」に基づいて,裁判官の自由心証で決めるということが分かりました。
 これを,証拠を提出する当事者側から考えてみましょう。なぜ,証拠を出すのでしょう。裁判官に自分の望む事実認定をしてもらうためですね。裁判官を納得させるために証拠を提出するのです。
 このように裁判官が事実の存在について確信を得た状態を証明といいます。
〈民訴の基本〉証明
裁判官が事実の存在について確信を得た状態
 当事者は,この証明を得るために,証拠を提出する努力をするのです。この行為を挙証・立証といいます。
〈民訴の基本〉立証
裁判官の証明を得るために,当事者が行う活動
4証明の対象
 何か主要事実の1つが争いになったとします。主要事実は証明をすることで,裁判官に認定されるのが原則ですが,例外があります。
 顕著な事実と自白のあった事実というものです。この2つについては,当事者からの立証がなかったとしても,裁判官は,その事実があったと認定することができます。これを細かく見ていきます。
5顕著な事実
 たとえば,「2007年5月6日の曜日」が争いになったとします。このようなものは,わざわざ当事者から立証してもらわなくても裁判官は分かります。たとえ「立証活動はなかったが,2007年5月6日は日曜日である」と裁判官が認定しても当事者も不満を持ちませんし,また国民も納得するでしょう。
 このように事実の真実性が保証されている場合には,わざわざ証拠による証明を不要にするため,民事訴訟法179条は,「顕著な事実は証明を要しない」としています。
 そして,この顕著な事実にも「公知の事実」と「職務上顕著な事実」の2つがあります。
(1)公知の事実
 これは,普通の一般人が疑いをさしはさまない程度に知れ渡っている事実のことです。
 たとえば,歴史上の著名な事件・天災や西暦2007年2月27日の曜日などが挙げられます。これは,わざわざ当事者に証拠を提出してもらわなくても分かるので,証拠による証明を不要にしているのです
(2)職務上顕著な事実
 裁判官が「職務を行うことにより」知った事実のことを,職務上顕著な事実といいます。
 たとえば,①自分でした他の事件の判決,②他の裁判官のした破産手続開始の決定等です。
 ただ,「職務を行うことにより」という部分には意識していてください。たとえば,裁判官が,休日等にたまたま交通事故を見ていたとしても,それは,この職務上顕著な事実にはあたりません。休日の日に知った事実なので「職務を行うことにより」知った事実とはいえないのです。これは,当事者からの立証がなければ事実認定してはいけないのです。
 もし,「交通事故の現場に私はいまして,そのときの信号は赤でした。立証活動はありませんが,信号は赤と認定します」と裁判官が認定しても当事者は納得しないでしょう(時代劇に「遠山の金さん」というものがありますが,あの時代劇のように「証拠はないけど,この桜吹雪が見ている。よって,君は有罪だ」なんてことはできないのです)。
6自白のあった事実 ~裁判上の自白~
 たとえば,貸金返還請求訴訟において借主が「弁済した」と主張したところ,貸主が「弁済は受けている」と主張したような場合を考えてください。
 この場合,弁済については当事者間に争いは起きていません。そのまま事実認定しても当事者間は納得するでしょう。これが裁判上の自白です。このような自白があった事実については,裁判官は立証がなかったしても認定してかまいません。
(1)要件
〈民訴の基本〉自白の要件
①当事者が主張すること
②口頭弁論期日または弁論準備手続期日において主張すること
③相手方の主張と一致する主張をすること
④事実を陳述すること
 何点かポイントを指摘します。
①事実の主張でなければ自白は成立しない
 法律判断について主張が一致しても自白とはなりません。かなり極端な例をいえば,「民法555条の意思の合致,という部分は単なる意思表示の合致だけでは足りず,当事者が書面でそれを確認することまで必要である」とお互いが一致したとしても,裁判官はそれを無視することができます。
 法の適用は裁判官の役目ですので,当事者の自白でそれを曲げることはできません。
②当事者の陳述の前後は問わない
 先の事例でいえば,貸主が先に「弁済を受けている」という主張をした後,借主が「弁済をした」という主張をしたような場合です(貸主はあきらかにミスをしています。口を滑らせて,「弁済を受けた」と言ってしまったのです)。この場合も,当事者の主張が一致していますので,自白が成立してしまいます。このような自白を「先行自白」といいます。
 ちなみに,こういった貸主の主張は,相手が主張する前であれば撤回することは可能です。自白は当事者の主張が一致した場合に成立するので,一致する前に自分の主張を取り下げれば,自白を防ぐことができます(口を滑らせて失敗したとしても,すぐに撤回すれば自白とはならない,ということです)。
(2)裁判上の自白の効果
〈民訴の基本〉自白の効果
①自白事実はそのまま認定される(当事者の自白は裁判官を拘束する)。
②自白した当事者は,その訴訟でこれに反する事実を主張することができなくなる(当事者の自白行為は,当事者をも拘束する)。
 まず,①ですが,自白があると裁判所は,その真実性を確かめる必要がなくなるだけでなく,もし裁判官が自白事実に反する心証を抱いたとしても,その事実を認定できなくなります。
 つまり,自白があれば,そのまま事実認定することになるのです。これが,裁判官を拘束するということです。
 次に,②ですが,もしこれができたら相手方を害します。自白が成立すると相手は「自白が成立しているから証拠による証明活動をしなくてすむ」と安心します。にもかかわらず,それを撤回することができたら,相手方を害することになるでしょう。
 このように趣旨が「相手方の利益保護」にあるのですから,例外はおのずと見えてきます。たとえば,相手方の同意を得たのであれば,自白の撤回は許されます(最判昭34・9・17)。
 また,自白が相手方の詐欺・脅迫等の犯罪行為に基づいて行われた場合も,そのような相手方は保護に値しないので,自白の撤回が可能となります(最判昭33・3・7)。
(3)第一審での自白の効力
 第一審における自白の効力は,上級審にも及びます(298条1項)。たとえば,第一審で「売買契約の事実について自白」していた場合,その訴訟が控訴審になったとしても自白の効力は継続します。控訴審でも「当事者・裁判所の両方を拘束」するのです。
 なぜかといいますと,第一審と控訴審・上告審は連続している(続審制)という制度を民事訴訟法が採用しているからです。第一審の続きが控訴審なので,第一審での自白が控訴審でも続くのです。
7自白のあった事実 ~擬制自白~
 自白には,もう1つあります。それが,この擬制自白というものです。
(1)相手方の主張を争わない場合
 当事者が口頭弁論において,相手方の主張事実を明らかに争わず,弁論の全趣旨に照らしても争っていると認められないときは,自白したものとみなされます(159条1項)。
 たとえば,弁済の事実が原告から主張されたとします。口頭弁論終了後,裁判官が口頭弁論を振り返ってみて「そういえば,弁済については原告が主張したけど,被告は特に何も言ってなかったなぁ」という心証に至ったのです。この場合も,当事者に争いが見られないので,証拠による証明は不要でしょう。そこで,自白をしたと扱うことにしたのです。
(2)欠席による擬制自白
 たとえば,弁済の事実が原告から主張されたのですが,被告が来ていない場合を想像してください。この場合,認否をとったとしても被告は黙っている状態になりますね(出席していない以上,何も言えないはずです)。そのため,まったく認否をしない状態ですので,自白をしたと扱われるわけです(159条3項)。
 この(2)は,すでに第3回(6月号)でお話ししていますので,理解がおぼつかない方は必ず確認してください。
理解度チェック
① 当事者の一方が自己に不利益な事実を主張した場合であっても,相手方がその事実を援用する前であれば,その主張を撤回することができる。
→ ○ 裁判上の自白は,当事者双方の主張が合致して初めて成立します。したがって,まだこの事案では自白が成立していないことになります。そのため,当事者への拘束力が働いていないので,その主張の撤回が可能です。
② 裁判上の自白が成立した事実であっても,証拠による証明が必要となる。
→ × 自白により証明が不要となります。
③ 裁判所は,裁判上の自白が成立した事実についても,証拠調べの結果に基づき,これと異なる事実を認定することができる。
→ × 自白は裁判所も拘束します。裁判所もそれと異なる認定をすることができなくなります。
④ 訴訟が係属する裁判所がした他の事件についての判決の内容は証明の対象となるが,西暦1985年5月1日の曜日は証明の対象とならない。
→ × 前者は職務上顕著な事実,後者は公知の事実にあたるので,共に証明を要しません。
⑤ 弁論準備手続においては,自白が擬制されることはない。
→ × 弁論準備手続においても,相手方の主張した事実を争うことを明らかにしない場合には,自白が擬制されます(170条6項,159条1項)。弁論準備手続には限定的な範囲ではありますが,口頭弁論の規定が準用されるからです。ちなみに,準備的口頭弁論では成立するでしょうか。これは成立します。準備的口頭弁論は,あくまでも口頭弁論の一種だからです。
ジャンル:
ウェブログ
コメント   トラックバック (2)   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 不動産受験新報2007年8月号 ... | トップ | 不動産受験新報2007年8月号 ... »

コメントを投稿


コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。

あわせて読む

2 トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
医学部 受験 (医学部 受験)
医学部 受験 ロゴス
不動産 資格 (資格の人気ランキング)
不動産受験新報2007年8月号 特集3 土地家屋調査士直前対策 択一式 ...住宅新報社・月刊「不動産受験新報」20007年8月号 (毎月1日発売 定価910円) 特集3 土地家屋調査士直前対策 択一式・民法予想問題 住宅新報社講師 阪本健一□ 共有(1)共有と準共有?共有 AとBが...