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不動産受験新報2007年8月号 第4回ネコでも分かる会社法

2007-09-01 09:00:00 | Weblog

住宅新報社・月刊「不動産受験新報」20007年8月号
       (毎月1日発売 定価910円)

第4回
ネコでも分かる会社法 
弁護士 太田雅幸

1 はじめに
 前回(第3回)は,株主総会の権限や決議要件を勉強しました。今回は,株主による議決権の行使方法についてみていくこととしましょう。
2 株主による議決権の行使
吉田(係長) 前回,特別決議の要件をみました。おぼえているかな。
前田 原則として,議決権を行使することができる株主の議決権の総数の過半数株主が出席して,出席した株主の議決権の3分の2以上ですね。
吉田 そうだね。でも,株主が何十万人もいるような大きな会社において,議決権の総数の過半数株主を収容できる会場なんてあるのだろうか。
前田 横浜アリーナとか,西武球場とか……。渡辺美里じゃないんだから,そんなところで開くはずないですよね。
吉田 つまり,株主が会場まで行かなくても議決権を行使することができる仕組みがあるということだね。
 株主が議決権を行使する方法の第一は,株主総会の場所に出向いて投票するというものです。株主総会の招集の決定に関する298条1項が,株主総会の日時および「場所」を定め(1号),これらを招集通知の記載事項とされているのは(299条4項),株主総会をどこで行うかが分からないと,せっかくの議決権を行使できなくなるからです。
前田 株主が実際に会場に出向いて議決権の行使をする以外の方法というのは,どんなものですか。
吉田 ①株主本人が議決権を行使する方法と,②株主が代理人を立てて,その代理人が議決権を行使する方法とに分けることができるんだ。①の株主本人が会場に出向かないで議決権を行使する方法として,書面による議決権の行使と電磁的方法による議決権の行使とがある。次の表をみてもらいたい。
 
 いずれの方法も,株主が実際に株主総会の会場に出向くことなく議決権を行使することができる便利な仕組みだね。
前田 どの会社でも書面投票や電子投票を実施しているのでしょうか。親戚のおじさんがやっている会社は,パソコンもないけど。
吉田 書面投票や電子投票をやるかどうかは,株主総会の招集を決める際に,併せて決めることになっている(298条1項3号・4号)。取締役会設置会社では,取締役会の決議事項になる(298条4号)。ただ,株主の数が1,000人以上である会社については,書面投票をやることが義務づけられている(298条2項)。結局,それだけ大所帯になると,株主総会の会場に収容することができなくなってくるし,議決権を行使したいけれど会場まで行けないという株主の数も多くなってくるであろうから,会場の外から投函することができるようにしろということだね。ただし,株主の数が1,000人以上であっても,いわゆる上場会社が「委任状の勧誘」をする場合には,書面投票をしなくてもよい(298条2項ただし書)。この勧誘というのは,「かくかくしかじか,このように議決権を行使しなさい」と議案ごとに「賛」か「否」に○を付ける欄を設けたうえで,議決権の行使を委任してもらえませんか……と誘いかけることをいうのだけど,実質的には書面投票みたいなものだから,それをやる場合には,書面投票を義務づけませんよということになっている。
~こんな大人数の株主総会もある~
 2006年6月の株主総会の出席株主数ランキングが本年6月12日号の『エコノミスト』に掲載されています。
 輝く第1位はソニーで7,247人,2位がワタミで4,511人となっています。こんな大人数の株主をどこに集めるのだろうと調べてみると,今年のソニーの株主総会は,昨年と同じく,港区高輪の「グランドプリンスホテル新高輪」で開催されるようです。記事をみてみると,1つの会場に収容仕切れないので,いくつもの会場に分散して収容している模様ですね。
前田 次に,②の株主が代理人を立てて,その代理人が議決権を行使する方法について教えてください。
吉田 文字どおり,株主が代理人を立てて,その代理人に会場に行ってもらい,議決権を行使させるというもので,310条1項で,株主に議決権の代理行使の権利を保障している。株主は広い範囲にわたって散在していて,かつ,株主総会の期日は集中するから,株主が総会に出席することが困難な場合がある。そこで,議決権の代理行使を認め,その行使の機会を保障する必要があるからなんだ。
前田 ブラックジャックが株主だとしたら,信頼しているピノコを代理人として会場に行かせるということですね。
吉田 そう。ただ,ブラックジャックがピノコを代理人に選べない場合がある……というよりも,ほとんどの会社では,好き勝手に代理人を選ぶことができないようになっている。というのは,定款に「代理人を立ててもいいけど,株主の中から選んでね」という制限を置く会社がほとんどなんだよね。
前田 でも,310条1項には,「株主は,代理人によって,その議決権を行使することができる。……」と書いてあって,それを制限するような規定はないですよ。
吉田 そう。だから,株主のなかに信頼できる人をみつけられない場合には困ってしまう。そのため,裁判で争われたりもしたのだけれど。判例は,「代理人を株主に限る旨の定款の規定は,株主総会が株主以外の第三者により攪乱されることを防止し,会社の利益を保護する趣旨によるものであって,合理的な理由による相当程度の制限といえるから,会社法に違反しない」という判断をしている。
前田 要は,暴力団みたいな人を代理人に立てて,株主総会に乗り込ませることを防止しようということですか。
吉田 そういうこと。株主総会は,その昔,いわゆる総会屋が跳梁跋扈する場だったが,規制を強化してきたため,ある程度はその暗躍を封じ込めているようではある。その規制の1つが,定款による代理人資格の制限ということだ。代理人を立てて議決権を行使するという場合に,委任状が必要であり,その委任状は包括的なものでなく株主総会ごとに別々の委任状でなければならないと決められている(310条1項後段・2項)。また,会社は,代理人の数を制限することができる(310条5項)。つまり,1人の株主について代理人と称する者がゾロゾロやってきて,一般株主を威圧するようなことがないように人数制限が可能ということで,通常1人に制限している。
前田 書面投票,電子投票にしても,議決権の代理行使にしても,ずいぶんと株主は議決権を行使しやすくしてもらっているんですね。
吉田 いいところに気がついたね。株主総会は,所有と経営が制度上分離されている株式会社において,株主が会社経営に関与できる希少な機会だから,できる限り,参加することができるよう,法が配慮してあげているということだね。
~取締役会との違い~
 取締役会では,書面投票・電子投票も,議決権の代理行使も認められません(少し先で勉強する「取締役会決議の省略」(370条)は,例外です)。これらがすべて認められる株主総会とは大違いです。これは,取締役会は,経営の専門家として会社から委任を受けたスペシャリストたちが鳩首して議論をし,いい結論を導いてもらおうというのが,取締役会制度の趣旨であることからです。会議に出てこないで,郵便で投票するとか,ぼくの代わりにレレレノおじさんを取締役会に送りますというのでは,職務放棄になってしまうから,それは認めないということなのです。
吉田 議決権をどのように投票箱に放り込むかという観点でみてきた。ちなみに,会場での採決の方法ですが,どのようにやると思う?
前田 選挙のときみたいに投票用紙を投票箱に入れるのかなぁ? でも,そんなことやっていたら,投開票に時間がかかりすぎますよね。
吉田 採決は,挙手,起立,投票,どんな方法でも,議決が判定できれば差し支えない。議長の裁量にゆだねられているんだ。賛成の株主に拍手をしてもらうというのでもいい。
前田 ずいぶん,いい加減な感じですね。拍手が多ければ,可決ですか。
吉田 今日,勉強してきたことを思い出してほしいな。前日までの書面投票,電子投票によって行使された議決権の個数もカウントされる。株主総会にやってきた株主の議決権がどう行使されても,前日までの投票結果によって,可決要件を満たしているということがある。その場合には,「賛成の方の拍手を求めます」で足りるということになるね。
前田 そうすると,その場合には株主総会をやっても,形だけということですか。
吉田 いや,株主が議案について質問を出してきたら,それにきちんと答えないと採決に移ることができない……説明責任を果たさせる場という意味合いもあるからね(314条)。しかし,それはまた次回の講義に回すとして,議決権の行使方法の残りをやることにしようか。議決権の行使では「議決権の不統一行使」というものがある。次の会社法条文をみてください。
 
第313条第1項 株主は,その有する議決権を統一しないで行使することができる。
 統一しないで……というのは,100個の議決権を持っている株主が,70議決権は賛成に,30議決権は否決に投ずるというものだね。
前田 何のためですか。70%くらい賛成だけど,少し疑問の部分もある,審議不十分だとか,剰余金の配当が少ないからけしからんというような政治的なメッセージを認めるということなんですかね。
吉田 そういうことじゃないんだ。ヒントは,次の条文に隠されている。
 
第313条第3項 株式会社は,第1項の株主が他人のために株式を有する者でないときは,当該株主が同項の規定によりその有する議決権を統一しないで行使することを拒むことができる。
前田 ルパン3世が,銭形刑事のために株式を有する場合には議決権の不統一行使を認めるが,そうでないときは認めないことができるよ,ということですか。でも,「他人のために株式を有する」ということ自体,分からないです。
吉田 信託という言葉を聞いたことがあるかな。信託というのは,たとえば,銭形刑事が,株式や不動産などの財産を盟友である(?)ルパン3世に移転し,世界中を駆け回る彼に運用してもらい,その運用益を自分やあるいは奥さんに配当してもらうというものだ。警察官も退職後の準備をしないといけないから大変だ。株式を信託した場合は,ルパン3世は銭形刑事という「他人のために株式を有する」ということになる。この場合,所有関係としてはルパン3世(受託者)が所有しているのだけど,そこから派生する議決権は,銭形(委託者)の意向に従って行使することを認めるのが妥当だよね。そこで,このような不統一行使を認めているわけだ。
前田 なるほど……。ある議案に心が揺れるからといって,7割賛成,3割反対みたいな議決権の行使は認めないのですね。
吉田 そう。さっきの条文にあるように,他人のために株式を有するというわけでもない株主が議決権を不統一に行使したいといっても,会社は,これを拒絶することができるということだね。
~新手の総会屋~
 前掲『エコノミスト』によると,面白い,あるいは,身の毛もよだつ新手の総会屋が出現しているそうです。株主総会が散会した後,株主懇親会を開き,株主に簡単な食事をしてもらったり,おみやげを渡したりするようです。新手の総会屋というのは,この懇親会に出る仲良しおばさん株主のこと。徒党を組んで食べ荒らしにやってくるようですね。株主優待券や,株主懇親会は,素人投資家の楽しみの1つですが,総務課にとっては,おばさんパワーには少しブルーでしょうね。
 次回は,株主総会の招集手続について勉強しましょう。

方法の種類 内容
書面による議決権の行使 株主総会の招集通知を送付する封筒に「議決権行使書」が入ってくる。株主総会に出る時間がない株主は,これに議案に対する賛否を書いて,株主総会の前日までに会社に提出するというもの。
電磁的方法による議決権の行使 一言でいうと,ウェブサイトや,電子メール等による投票のこと。上記の議決権行使書面に,ログインIDと,仮パスワードが記載されており,これを使って議案に対する賛否を入力することになる。

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