ペーパードリーム

夢見る頃はとうに過ぎ去り、幸せの記憶だけが掌に残る。
見果てぬ夢を追ってどこまで彷徨えるだろう。

題詠blog2010 投稿歌

2010-06-13 01:36:21 | 題詠2010
題詠blog2010 投稿歌 (2010.02.01~06.10)

001:春
挽きたての春の珈琲ほろ苦くまぶたの裏に滲む空色
002:暇
「暇してます」そんな看板ぶらさげてほおづえついて笑っていたい
003:公園
ツユクサで色水つくりおままごと思ひ出の中淡き公園
004:疑
何事も疑わしきは罰せずと言ふは容易し立春の雪
005:乗
幸せの二乗だなんて嘘ばかり笑わない瞳(め)の奥に映る吾(あ)
006:サイン
まほろばの古寺の柱の裏側に大工のサイン密やかに在る
007:決
決め台詞一度でもいい言ってみて「アイシテイルヨ」のひと言でいい
008:南北
戯作者は鶴屋南北「盟三五大切(かみかけて さんご たいせつ)」殺しも忠義
009:菜
星降る夜(よ)高原野菜は何思ふ澄みし水受け空に伸びする
010:かけら
あちこちに散らばっている思ひ出の欠片(かけら)を集め抱きしめる夜
011:青
春浅く忍び寄る影なすがままピカソの青に立ち尽くすなり
012:穏
穏やかなまなざしでした祖父の書を眺めて思ふ川面の光
013:元気
封をして投函をせり「お元気で」ポストの底に落ちゆく言葉
014:接
さりげなくセーター越しに接してる君の体温に気づいたあの日
015:ガール
いつの世も ア ボーイ ミーツ ア ガール とふ運命の朝扉開かむ
016:館
せせらぎの音静かなる美術館絵描きの人生にそっと寄り添ふ
017:最近
最近の若者はどうとポンペイの遥か昔から大人の小言
018:京
京ことばなれどしゃきしゃき歯切れよく「生まれは千葉どす」とたん熊の女将
019:押
知らぬ間に押されてできた布(きれ)のしわ元の通りに戻らぬと知る
020:まぐれ
校庭にしまい忘れたハードルが所在なさげに立つ夕まぐれ
021:狐
天気雨洗濯物を取り込みつつ狐の祝言思ひて笑ふ
022:カレンダー
形見の絵がカレンダーになり十年余定期便のごと訪ね来たりぬ
023:魂
器にも魂ありぬ春の菜を盛れる白磁が清(すが)しさを増す
024:相撲
初めての相撲観戦は升席で冷酒焼き鳥花見のごとし
025:環
尾根環状線(おねかん)の先に臨むは関東の広き大地よ茜に染まる
026:丸
ルノワールの描く女性は丸々と眩しき肢体さらけだしけり
027:そわそわ
さっきからそわそわ立ったり座ったり噴水上がれど待ち人は来ず
028:陰
陰暦に左右されるは女たる宿命か闇の隅を見つめる
029:利用
君になら利用されてもいいといふひとはなかなか現れぬなり
030:秤
お互ひの気持ちを秤にかけてみて同じにるやふ分銅を足す
031:SF
十代を夢中にさせし「ウルフガイ」SF作家平井和正
032:苦
春の夜苦い薬のやうだった柘榴色したカクテルグラス
033:みかん
窓際の壁へと影を折り曲げて君はみかんの皮を剥きおり
034:孫
島唄は子孫繁栄親孝行我が島万歳めでたや常世
035:金
截金(きりかね)の細工麗し玉虫厨子(たまむしのずし)遥かなる飛鳥の里の
036:正義
正義とふ建前ありて突き進む暴力もあり雪の惨劇
037:奥
引き出しの奥にひっそり眠りいし友の手紙と十五の春と
038:空耳
石笛の奏でる音色に龍神がはもれる夕べ空耳でなし
039:怠
包丁もときに怠ける日もありき茄子のへたすらきれいに切れず
040:レンズ
コンタクトレンズ沈めり湖に魚の玩具になりて 如月
041:鉛
鉛筆をナイフで削れぬ子ども増えキーボード叩くマシンガンのやうに
042:学者
昨今は脳科学者の大セール科学非科学通説踊る
043:剥
生爪を剥がすやうなり密やかな胸の秘密を打ち明けるのは
044:ペット
ペットロスとふ流行り言葉馴染みきて忌休も当然我が家族なれば
045:群
群鷄の眼(まなこ)は我を睨みつつ微動だにせず若冲の軸
046:じゃんけん
いつだって要領のよき姉の勝ちピアノもゲームもじゃんけんすらも
047:蒸
切る和える煮る焼く蒸すと炒めるは調理の基本厨房男子よ
048:来世
骨となる前は来世など考えず獣駆けたり赤き大地を
049:袋
弟がお袋姉貴と友に言ふを聞きて心のくすぐられしよ
050:虹
明け方の虹を魂渡るとふ幼も逝きしかスキップをして
051:番号
君の住む街の郵便番号を七桁書ひて空を眺めり
052:婆
「むかしむかし爺さん婆さんおったとさ」伝承民話は世界共通
053:ぽかん
浮き玉がぽかんぽかんと漂いて凪の浜辺は長閑なりけり
054:戯
戯れ言もときに核心ついておりへらへら笑顔の向こうで君は
055:アメリカ
木枯らしのアメリカ橋を渡る影ふたつ寄り添ふ夕まぐれなり
056:枯
木々が枯れ初期人類は地に降りて歩き出したりラミダス猿人
057:台所
台所で食器を洗う父がおり嫁して二十年生(あ)れし家変わる
058:脳
「犬ノ肉、豚ノ脳ミソモオイシイヨ。」中華街奥、提灯(ランタン)笑ふ。
059:病
病院の窓から眺めし隅田川流れの先にいのち見んとす
060:漫画
恋愛も友情根性勉強も漫画に教はる我らの時代
061:奴
奴だこ高低自在に操れる翁の腕が空を切るなり
062:ネクタイ
自慢気に蝶ネクタイの一年生赤き頬して校門くぐる
063:仏
仏蘭西の空は薄鈍(うすにび)プラタナスの落ち葉映して冬を迎えん
064:ふたご
山の端にふたごのやうな雲がゐてをとうと雲が先に駆け出す
065:骨
命とは何か骨になりし動物の無言の叫び 受け止めし午後
066:雛
丹頂鶴(たんちょう)の雛の頭の褐色はいずれ赤なる兆しを見せん
067:匿名
攻撃は匿名であればさらに増す人間心理は恐ろしくあり
068:怒
阿修羅像怒りのお顔麗しく千年経るもすくと立ちおり
069:島
島影をかすめ飛び立つ白カモメ碧のうねりを掬ひて縫ひて
070:白衣
「元気だね、この調子だよ」にこやかに主治医は白衣翻し去る
071:褪
想ひ出は色褪せてからじんわりと一枚剥がし楽しむがよし
072:コップ
溢れ出すコップの原理さもあらん少年犯罪起こりしときは
073:弁
ひとひらの花弁返して窯に入るる泰山木のやうなる大皿
074:あとがき
あとがきと奥付けをまず読む癖は直らないのか今でも君は
075:微
無糖より微糖コーヒー好めるは優しきひとと瞬間想ふ
076:スーパー
夕暮れを足早に入るスーパーに殿方の影多くなりしも
077:対
明日といふ対岸眺めゆるやかに落ちる夕陽を掌に乗す
078:指紋
幾年もフェルトを蒸して型に入るる帽子職人指紋のあらず
079:第
徳島が第九の里と聞きし夜鳴門の渦にかかる旋律
080:夜
夜は私別人になるたとふれば月の世界で水掘るやうな
081:シェフ
「だいじょうぶ。ひとりでできるもん」と言ふちびっこシェフの母の日のプリン
082:弾
この大地がトランポリンのごと君の脚軽やかに弾む春の日
083:孤独
この山の孤独はどうだ幾年も一人足りとも登頂させず
084:千
殉教せし千々石(ちぢわ)ミゲルの魂が列福式で蘇りたり
085:訛
「龍馬ぜよ」訛おおらか長崎は亀山社中で鉄砲廻す
086:水たまり
あめんぼは行きつ戻りつ水たまりあふるるほどの輪を描きおり
087:麗
「吟醸の淡麗辛口が吾にあふ」切子のグラスそっとささやく
088:マニキュア
日曜の夜はマニキュアの色選び戦闘準備していた昔
089:泡
佳きこの日てのひらいっぱいに泡立てて頬ずりしよう消え去る前に
090:恐怖
海中で出会ふイルカの巨大さに恐怖たちまち畏敬と変はる
091:旅
日常をつつがなく送るそれこそが楽しき旅と気づきし夕べ
092:烈
突如として烈火の如く怒る子をキレやすいなどとひとくくりにする
093:全部
半分より全部がいいとさっちゃんがバナナを一本食べたのはいつ?
094:底
螺鈿敷く文箱の底はひんやりと元禄の夢閉じ込めており
095:黒
幾層も色を重ねて其処にある宇宙の果ても描けぬ黒か
096:交差
君がy吾がxの座標軸交差するのは明日か来世か
097:換
大好きを交換しましょそうしましょ子どもの無邪気はときに恐ろし
098:腕
おんばしら曳いて世代に渡しゆく男の腕の逞しきかな
099:イコール
赤プラス黄色イコール緑なるカラーチャートの四角鮮やか
100:福
口福や眼福などと脳からの出先機関で幸を味はふ

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