ペーパードリーム

夢見る頃はとうに過ぎ去り、幸せの記憶だけが掌に残る。
見果てぬ夢を追ってどこまで彷徨えるだろう。

後味のいい人生

2012-02-18 22:23:44 | 歌を詠む
120215.wed.


     後味で
     勝負!
     仕事も
     恋も
     人生も

今月、横浜水曜歌会での一席は
藍弥生さんのこのお歌。
明朗で簡潔!
即座に◎を入れたのはいうまでもない。
「後味」という表現が気が利いていると思ったのと、
ものごとはなんでも紆余曲折があるが
最後の締めくくりがよければよいよね、と素直に納得。

ただ、ひとりT氏が、
自分が死んだときに「あの人はいい人生だったね」と思われたい、
だから一生懸命生きたいというようなことを
発言されたのが少し引っかかった。
生きているうちに、自分で
自分はいい生き方をした、と思いたいのではないのかしら、と
思ったから。


2月8日に届いた訃報は、I氏の奥様からだった。
1月29日に静かに息を引き取られ、家族葬にされたとのこと。享年73。
彼から年賀状が届かないのは気にしていなかったが
まさかこんなに早く逝かれてしまうなんて・・・。

実はI氏とは一度しかお目にかかっていない。
昨秋10月6日に、歌友H氏の引き合わせで
映画「エンディングノート」を見に行き、
新橋で一緒にお酒をいただいたのだった。
(詳しくはここ「人生の終活」2011.10.06)
http://blog.goo.ne.jp/ezn03027/e/00cc5463b25a14e707ac69222d2f47f5

I氏は前年、胃がんを患って全摘出し、
ようやく少しだがお酒と食事が楽しめるようになった、と
嬉しそうに杯を手にしておられた。
新橋「ゑみ」のママも、I氏には食べやすいように
料理を工夫して出しておられたようだった。
「僕のことは“にこ寅君”と呼んでください」
寅年のI氏は、にこにこと、肩書きのない名詞に鉛筆でそう書いてくれた。

入院先の看護師さんたちに大変お世話になったので
退院後ひとりひとりにお礼状を書いたら嬉しい返事をもらったとか、
在職中はまったく読めなかった本を、古典を、
いま心置きなく読める幸せをかみ締めているとか、
散歩をする時間がとても楽しいとか・・・
大手商社の重役だったと聞いていたが、もっぱら退職後の楽しい話ばかり。
歌会に誘ってみたところ、
「そういう、時間を区切ってすることは、会社時代にさんざんやったから」と
さらりと逃げられたし。(笑)

ただ、何に反応したのだったかは忘れたが、ゑみさんに向かって
「最近、涙もろくていけない」と言って、目頭に指をあてていた瞬間があった。
今思えば、なにか感じることでもあったのだろうか・・・。

後日、ご自分が書かれたエッセイなどを、送ってくださり、
メールでやりとりをしたのが、本当についこの間のようで。
そんな温かで鮮やかな印象を残したまま、
にこ寅さんはもう二度と会えない人になってしまわれた。
今でも、不意に思い出しては涙を流してしまう。
そして私はようやく気がついたのだ。
なんて素敵な後味を残してくれた方だったのだろう、と。

   ところで えみ にてお約束したものを昨日の夕方散歩の折に投函致しました。
   分厚くなり切手代が足りたのかちと不安ですが、無事に届きますように。
      (中略)
   この夏の或る日砂田さんの記事を新聞で見て、
   Hさんにご注進して始まったエンデイングノートの事、
   30年以上になる砂田さん、Hさんとのお付き合いの事、
   今年の入院中に大勢の看護師さんにとっても良くして頂いたこと、
   Hさんとのメール交換   など、
   オムニバスでばらばらですが、ご容赦下さい。
   一人で好き勝手な日常が何よりの にこ寅君 なので
   決められた日に出かけなければならない諸々の会などは、
   申し訳ありませんが、現役中にいやと云うほどやらされまして、
   今は静かな書斎と、木立の中の散歩で充分です。
   亦、気軽にH仙人とご一緒に飲む事なら、歓迎です。

今度はいつ、ゑみにいきましょうか?
・・・なんていう返事を返してしまいそうになるメールが残っていました。
小春日和を思わせるような、穏やかな笑顔が
いまも思い出されます。
今頃は天国で、日向の道を選んでお散歩なんかしていらっしゃるでしょうか。
にこ寅さん、どうぞ安らかに眠ってください。

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エンディングノート
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2 コメント

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出逢い (撫子)
2012-02-21 01:08:10
一期一会という言葉を、しみじみと噛みしめました。
また逢える保証なんて、何処にも誰にもないのですよね。
その瞬間を大事に生きていきたいものです
Unknown (kikkoro)
2012-02-21 11:51:54
撫子さま

本当に。
生きているうちに何度会ったかなんて
関係ないのかもしれませんね。
せっかく“会わせていただいている”んだから
なんでも大切な時間とおもわなくては・・・。
なかなかうまいこといかないですけど・・・。

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