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クラシック喜劇研究家/バディ映画愛好家/ライターの いいをじゅんこのブログ 

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ザ・ロイヤル・テネンバウムズ

2007年03月12日 02時34分31秒 | 世界的笑世界
『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』
(The Royal Tenenbaums ウェス・アンダーソン監督 2001 アメリカ)


豪華キャストにひかれて観に行き、監督のファンになって帰って来た映画。

<あらすじ>
テネンバウム家の3人の子ども(ベン・スティラ-、ルーク・ウィルソン、グウィネス・パルトロウ)は十代にしてそれぞれビジネスマン、テニスプレーヤー、劇作家として成功、天才と呼ばれた。が、成長するにつれ、それぞれの理由でスランプに陥り、過去をひきずって生きている。父親のロイヤル・テネンバウム(ジーン・ハックマン)は元弁護士だが破天荒な生き方がたたって妻エセル(アンジェリカ・ヒューストン)と別居。一家は20年間父親に会っていない。エセルは考古学者となり、会計士のシャーマン(ダニー・グローバー)に求婚される。その事実を知ったロイヤルは、妻の再婚を止めるため家に舞い戻ってくる・・・


テキサス出身の映画人というのは、どうも一風変わったセンスを持ち合わせているようです。

トミー・リー・ジョーンズは名優なのに日本のCMで演歌うたっちゃうし。スティ-ブ・マーチンはテキサスから出てギャグ作家となり、そのまま映画スターになっちゃうし。彼とよく似た道をオーウェン・ウィルソンも歩みつつあるし。ウェス・アンダーソンは変な映画ばっかり作ってるし(笑)。

テキサス映画人考はさておき。

公開当時、そうそうたる顔ぶれのキャスト、特に大好きなグウィネス・パルトロウ目当てで劇場に足を運んだわたくし。やや『アダムス.ファミリー』を思わせるような奇妙なポスター(アンジェリカ・ヒューストンも出てることだし)にも心惹かれましたが、豪華キャストの映画って時に大失敗におわるケースも多いので、実は期待はそれほど高くありませんでした。

でも!
観終わった時にはこの映画にぞっこんフォーリンラブ。周りの人にすすめまくった一本です。

最近、ベン・スティラ-出演作をすこし観ようと思い、DVDで本作を観直してみて、「ああ~やっぱりええなあ~」と思いました。

まずジーン・ハックマンが演じるロイヤル・テネンバウムのキャラクターが良い。人はいいんだけど、いつまでも大人になりきれず、率直すぎるし口が悪いので、家族とうまく折り合いをつけられない。長女のマーゴ(グウィネス・パルトロウの秀逸な演技!)は実は養女なのですが、彼女に対するロイヤルの口癖は、「だってお前は血がつながってないから・・・」。そりゃあ子どももグレるわ(笑)。

ジーン・ハックマンって硬派なおっちゃんというイメージでしたが、本作ではハジケまくってます。かわいいんだ、これが。

妻の再婚を止めたいという気持ちと、さらにホテル暮らしで滞った莫大な宿泊料が払えなくなったせいで、彼は自分が不治の病にかかったと芝居をうって家族の家にもぐりこむ。そして、相棒のインド人執事パゴダ(クマール・パラナ)と共謀して、子供達との冷えきった関係を修復しようとむなしい努力をするロイヤル。

対するテネンバウム家の子どもたちは、すでに三十路にはいってもまだ過去をひきずって生きている。それはかならずしも過去の栄光を、ではなくて、過去の心の痛みを克服できないでいるのです。

長男のチャズ(ベン・スティラ-)は妻を飛行機事故で亡くして以来、いつ危険がおそってくるかわからないという強迫観念にとりつかれている。ふたりの息子と揃いで真っ赤なアディダスのジャージをいつも着、避難訓練に余念がない。

長女(養女)のマーゴは誰にも内緒で12才からタバコを吸い、誰にも内緒でジャマイカで結婚と離婚をし、いつもラコステのワンピースを着て、精神科医の夫(ビル・マーレイ)を性的に裏切りつづけ、無気力に生きている。

次男リッチー(ルーク・ウィルソン)はテニス・チャンピオンだったにもかかわらず、ある試合からまったくプレーができなくなり、そのまま豪華船の船長になって航海に出てしまう。ヒゲにサングラス、ヘアバンドというビヨン・ボルグファッション。

DVDのコメンタリーで監督が解説しているように、3人のファッションが心境をよく表しています。彼らはいまだに70年代から成長できていない。特にマーゴとリッチーは、たがいに愛しあっていながら、姉と弟(血はつながっていないが)という立場上それをうちあけることができず、それがために満たされず、苦悩しつづけている。

また、3人の親友で、テネンバウム家のおむかいに伯母と暮らすイーライ(オーウェン・ウィルソン)は、天才一家のテネンバウム家にあこがれ、天才小説家をきどるけれども才能はまったくない。理想と現実のギャップに悩む彼は、ドラッグに明け暮れる日々。

こんなふうに子どもたち(たとえ三十路でも)がかかえる深い痛みを、映画は軽快にコミカルに、だけど静かに語っていきます。彼らは「天才」で、ロイヤルこそがダメ人間のはずなのに、映画がすすむにつれて、ロイヤルがいちばん幸せな人なんじゃないかしら?と思えてくるのです。もっとも彼も、家族の幸福には恵まれていないけれども。


見事なストーリーテラーであるウェス・アンダーソンは、この映画を一編の小説のような体裁で撮っています。アレック・ボールドウィンによるナレーションと、章立てされた脚本、時々はいるセンスのよいテロップ。

映画が冗長にならないのは、ナレーションの挿入を最小限におさえて、あくまで映像で語っているからでしょう。ワイドスクリーンにすることによってさまざまな小道具やロケーションをひとつの画面にいれこみ、観客ができるだけ多くの情報を読み取れるように工夫した---とは、監督の言。そこには、まぎれもなくウェス・アンダーソン印の映像スタイルが確立されています。

「小説仕立ての映画」の意義が発揮されている場面は、たとえばロイヤルの仮病がばれて家を追い出される場面。

ロイヤル:たしかに全部ホラだったよ。でもこの6日間はオレの人生で最高の6日間だった。
ナレーション:そう言った瞬間に、その言葉が真実だと、ロイヤルは気づいた。


この時のジーン・ハックマンの表情もすばらしいし、それにこんなにうまいナレーションの使い方を、いままで見たことがありません。

小説仕立てにこだわったためか、ラストにむけてのキャラクターの"成長"をやや小さくまとめすぎたきらいはあるかもしれませんが、いいエンディングです。特に、父親をゆるせず衝突ばかりしていた長男チャズとロイヤルとのラストの場面は、思い出しただけで胸が熱くなります。ベン・スティラ-、いいね。

1970年代のポップスも、ゴキゲン。


イギリス映画『赤い靴』とルイ・マル監督『鬼火』の影響を受けて本作を撮った、とウェス・アンダーソンは語っています。若くして名声を得た人の苦悩、父と息子、そして家族---アメリカ的なテーマをヨーロッパ映画のようにエレガントに撮るこの監督。大好きです。

『天才マックスの世界』が観たいよー!!

ちなみに最新作は、ふたたびオーウェン・ウィルソンと共同製作する"The Darjeeling Limited"。3人の兄弟が、死んだ父親の生まれ変わりの虎をさがしてインドを旅する物語、ですって。・・・楽しみ。
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4 コメント

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初めて聞いたタイトル (タイタン)
2007-03-12 17:20:46
全く初耳です。知ってる俳優さんが結構出てるのに全く記憶の片隅にもないって…それは私が映画を知らないからなのでしょうか?

タイトルが覚えにくいって言えばそれまでなんですが、そういうの、最近はかなりありますしね~。

WOWOWで目にしたらチェック出来るように、まずタイトルを頭に入れなくっちゃ!
Unknown (トウシロウ)
2007-03-12 19:11:39
こんばんは。
ファイアーさんも引越しされたんですね。
私も引越ししようかと思っています。
またお邪魔しますね。
TB返しありがとうございます (カツミ8アオイ)
2007-03-20 22:36:11
 テキサス出身者ってそんな方々ばかりなんですか~。なるほどなるほど。
 日本なら何県の出身者にあたるんでしょうかね☆

 ビッグ・ネームが連なりながらも、ウェス・アンダーソン節で、シニカルかつ楽しくまとまっていて、他の作品も見たくなりました。はい。
Unknown (ファイア-)
2007-03-21 22:47:44
タイタンさん>
豪華キャストのわりにミニシアター系の公開でそんなに派手な宣伝はしていなかったと記憶します。
タイタンさん結構こういうのお好きじゃないかなあ~?


トウシロウさん>
来て下さってありがとうございます^^
そうですか、トウシロウさんも引っ越しをお考え中…過去記事を完全移転するのは結構たいへんですので、そのへんも考慮に入れられて検討してみてくださいね。記事更新はこちらの方がやりやすい気がします。


カツミ8アオイさん>
コメントありがとうございます^^
テキサスは日本でいうと・・・わからんですねえ。独立心旺盛なところが大阪とか九州的な感じ?最近個性的なタレントを輩出しているというのでいうと北海道的といえるかも?むずかしいなあ。
ウェス・アンダーソン作品は本作以外は『ライフ・アクアティック』しか観てないんですよね~

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