chanting an air of joyous bliss

普段の生活で見逃しがちな面白いことを書いていく
そんなブログです

生き人形

2009-12-07 21:28:14 | 趣味
ARIAは原作もいいお話が多いですが、私が特にお気に入りのお話が12巻の冒頭に収録されてた『生き人形』です
ARIAファンでも地味な『生き人形』が一番好きな人ってあまりいないと思うのだけど、ちょっとした出来事から灯里の気持が垣間見れるお話が好きなんですよね
そういう意味だと、『春夏秋冬』、『スノーホワイト』、『休日』も割と好みなお話ではあります
そして、『生き人形』は12巻をよくよく読んでみると最終巻の構成上、とっても重要なお話であることに気づきます
『生き人形』はまず、カフェで2組のお人形を側に置くおじいさんを灯里が見かける場面から始まります
おじいさんの側にいる人形はとっても愛らしいのだけど、ちょっとどこか不思議な感じがする
灯里はその不思議な感じがする人形が気になって仕方がないのですが、ある日、ついにおじいさんとお話する機会が訪れます
おじいさんがいうには2組の人形をみて違和感を覚える灯里の気持の持ちようは当然のことと話します
普通、人形は人間のどんな気持にも合わせられるように無表情に作られている
だけど、おじいさんが側に置く人形は違う
黒い服を着た女の子は常に憂いを帯びていて、白い服を着た女の子は常に喜びに満ちている
永遠に続く悲しみや永遠に続く幸福というのは人間の世界ではとても歪なこと。
それなのに、私たち人間は終わることのない幸せに憧れを抱いたり、終わることのない悲しみに不安を恐れ、自分たちを模した人形に歪な気持を強いている。
これは実にとっても身勝手なこと、とおじいさんは語ります
灯里はおじいさんの話を聴いて、『心の奥底で眠り続けた箱がふいに「ぱかり」と開いたような そんな感じがしました』、と感じるようになります
「心の奥底で眠り続けた箱」とは何か、そしてその箱が「ぱかり」と開くとはどういうことか、これらが12巻のテーゼとして提示されるお話なんですよね、『生き人形』って
そして、『生き人形』が提示したテーゼに沿って12巻の残りのお話は進んでいきます。
『薔薇の名前』でみせた藍華の著しい心境の変化も、『3人娘』で描かれた自分の取り巻く世界が劇的に変わって気持が追いつかないアリスの寂しさも、ラスト手前で見せたアリシアの涙も、そして、ラストで幻影を振り切って前に進んでいく灯里の姿も・・・
アリシアが『すべては私のわがまま』と自分の気持を吐露する場面、あれって実は『生き人形』のおじいさんが話してくれた『人間って実に身勝手なものです』がベースになっているんですよね・・・・・

ARIAは作者である天野さんの、
「何気ない日常から素敵な漫画を作る」
という感性がとっても魅力的な作品であったのだけど、アニメ化したあたりから少しづつ構成力も備わってきたように見えました
それは、アニメの監督である佐藤順一さんの影響が大きいと思うのですが、12巻は天野さんがもともと持っていた感性と著しく進歩した構成力が結実した巻なのではないでしょうか?
おそらく、この後、ARIAの12巻はずっと読み続けると思いますが、飽きることは絶対にないだろうと思います
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