※ あらすじ・・・・ではあります。
人様の文章を読ませていただくと、「あーそのシーンあった、あった!」や
「えー、見逃してるわー」ばかりです。
そんな忘却にんげんが書くものです・・・・・・・。(一切自慢になりません。)
『マクベス』 7/21 14:00
第三幕 第一場 ≪フォレス、宮殿≫
(2F中央)
バンクォー「ついに手に入れたな、国王、コーダー、グラームズ、予言したすべてを。そしてそのためにだいぶ手を汚したのではないか。~」
(1F奥の扉、青い緞帳。スネアのリズム。
正装したマクベス(赤い上着、白いボトムス、黒いロングブーツ)、マクベス夫人(真紅のドレス)が登場)
(口々に祝いを述べる貴族たち)
マクベス『今夜の主賓はここにおられたか。』
夫人「よかったわ、この方を抜きにしては~なにもかもだいなしになるところですもの。」
マクベス『今夜は正式の酒宴をもよおすのだ、ぜひご出席ねがいたい。』
バンクォー「陛下にはふさわしからぬおことば、ご命令になってしかるべきです、~」
(ひざまずきじっと地面を見つめたまま、顔を上げない。)
マクベス『~いつも有益な正論を吐いてくれるからな。ま、明日にしよう。(笑いながら)~
酒宴には必ず出てくれよ。』
バンクォー「もちろんです、陛下。」
マクベス『(ご機嫌に)報告によれば血なまぐさい残忍な二人の兄弟は、~
だが、それも明日にしよう、~今夜また会おう。フリーアンスもごいっしょか?』
バンクォー「はい、陛下。ではいそぎますゆえこれで。」
マクベス『~ご無事でな。~私も一人でいたい。ひとまず別れよう(一同退場)~
例のものたちは待たせてあるか?』
レノックス「はい、陛下、城門の外に控えております。」
マクベス『連れてこい。』
(上手側階段に歩み寄り、壁を思いっきり蹴り上げて八つ当たり、むちゃくちゃ怒ってますね・・・)
マクベス『こうしているだけではなんもならぬ、~バンクォーへのおれの不安も根が深い。もって生まれた気高い気品は不安の念を呼ばずにはおかぬ。~あの男をおいてほかにはいない、おれの不安をかき立てるものは。~おれの永遠の魂を人間の敵悪魔に売りわたしたのも、彼らを王に、バンクオーの子孫を王にするためだったのか!そうはいかぬぞ、~』
(レノックス、暗殺者を二人(魔物の次男と弟(骨くわえてる)を連れて1F下手出入り口からくる。
1F上手出入り口にはロスが盗み聞きをしている。)
(マクベス、暗殺者を説得する。声高に、演技力たっぷりと。)
暗殺者(魔物)「ご命令は、陛下、必ずなしとげてみせます。」
マクベス『~バンクォー、おまえの魂もおさらばだ、今夜道を捜すしかないぞ、天国に行きたいならばな。』
第三幕 第二場 ≪前場に同じ≫
(夫人と召使(魔物)、2Fから現れる)
夫人『陛下にお暇ならちょっとお話ししたいと伝えておくれ。~望みはとげてもなんの意味もないわ、心に不安の棘があれば。殺されるもののほうがまだしも気楽だわ、殺して手に入れた喜びに疑惑があれば。』
(マクベス、下手側階段にひとりうずくまる。)
夫人「~すんだことはすんだことです。」
マクベス『~おれたちが安らかな心を得るために安らかな眠りへと送りこんでやった死人とともにいるほうがまだましだ、~いまはもう剣も、毒も、内憂も、外患も、なに一つとして彼にふれることはできぬ』
夫人「なにをおっしゃるのです、あなた。~もうそのようなお考えはお捨てになって。」
マクベス『ああ、おれの心はサソリでいっぱいだ、おまえ。バンクォーもフリーアンスも生きているのだ。』
(体は向き合っているのに視線は合わさない。会話もかみ合わない。苦し気なマクベス。)
夫人「彼らにしても借りもののいのち、いずれは自然に返します。」(必死で明るくふるまう。)
マクベス『そこに望みがある、彼らも不死身ではない。よし、元気を出そう~必ず起こるだろう、恐るべき重大事が。』
夫人「なにごとです、重大事とは?」
マクベス『かわいいおまえは知らぬままでいるがいい、(夫人にキス)あとでほめてもらおう。
さあ、瞼を閉じあわせる夜よ、早くきてあわれみ深い昼の目を包んでくれ。おまえの血なまぐさい見えぬ手で、おれを蒼ざめさせるあいつのいのちの証文を、ずたずたに引き裂き無効にしてくれ。~さあ、奥へ行こう。』(手をつなぎ奥へ向かう)
第三幕 第三場 ≪城に通じる林の道≫
(先ほどの二人の暗殺者⦅魔物⦆にもう一人の暗殺者⦅ロス、黒いトレンチコート⦆が合流する)
(バンクォーとフリーアンスが現れ、暗殺者が襲い掛かる⦅ロスは陰に隠れる⦆)
バンクォー「ええい、卑怯な!逃げろ、フリーアンス!(暗殺者と戦う)
(フリーアンスも剣を抜き戦おうとするものの、足が震えて動けない)
バンクォー「逃げるんだ、~」
(フリーアンスをかばおうとし、背後からの暗殺者に刺される。1F中央の奈落に落ちる。)
(暗殺者が奈落に向かい剣をさし続ける、飛び上がった右腕を中に蹴り戻す。)
暗殺者(ロス)「とにかく引きあげよう、やったことだけは報告しなければな。」
第三幕 第四場 ≪宮殿の広間≫
(1F中央に机、テーブルクロスの上に食器を並べる魔物。)
マクベス『席順はおわかりだな?~』(夫婦の仲がよさげ)
(横長の机、奥に貴族たち、手前側の二席左が夫人右がマクベス)
(下手側に暗殺者が現れる、マクベス向かい暗殺の報告を聞く)
マクベス『~バンクォーは大丈夫だな?~さがってよい。明日また話しあうことにしよう』
(皆のいる前で堂々と叱る)
夫人「あなた、お客様のおもてなしはどうなさったのです?~」
(その様子を見て貴族たちは大笑い)
(1F奥からバンクォーの亡霊が登場、白い正装、マクベスの席に座る
バンクォーの話題が出るたびにアクションをおこす)
マクベス『席がないようだな。~だれだ、こんなことをしたのは?』
夫人「おすわりください、こういうことがときどきあるのです。~」
(マクベス下手側階段にへたり込む)
マクベス『ああ、大胆不敵な男だ、~』
(夫人2F階段に上り、母が子にするようにマクベスを叱る)
夫人「~男なら恥をお知りなさい!」
マクベス『たしかにあいつを見たのだ。』(”なのだ”の連続攻撃がまるで駄々っ子・・・)
(バンクォーの亡霊、机の下に入る)
夫人「あなた、お客様があなたのおいでをお待ちですよ」
マクベス『(気をとりなおして)忘れていた。~さあ、ご一同に乾杯だ。~バンクォーにはきてもらいたかった。』
(机の下からバンクォー登場、ババーン)
マクベス『失せろ!姿を見せるな!~』
(机の上のものを投げつけ、テーブルクロスを引っ張り、飛び散る皿やグラス。)
マクベス『~よし、行ってしまったな。これでまたおれは男だ。さあ、席にもどってくれ。』
夫人「あなたがすっかりとり乱されたので、楽しい集いもだいなしですよ。」
(夫人、スカートを両手できつく握りしめる。わなわなと震えながら。)
夫人「(精いっぱいの笑顔をふりしぼって)今夜はこのままお引きとりを。~おやすみなさい、皆様。」
マクベス『あれは血を呼んでいるのだ、血が血を呼ぶのだ。~何時ごろだろう?』
夫人「夜と朝が自分の時間だと争うころでしょう。」
(かみ合わない会話。魔物たちが片づけをしている。)
マクベス『~明日、それも朝早く、例のものどものところに行こう。~よくよ思いわずらうのは男の恥だ。』
夫人「あなたに必要なのは、いのちをよみがえらせる眠りです。」
マクベス『そうだ、眠るとしよう。おれのあやしい妄想は入門者の恐怖心、~おれもまだ悪事にかけては小僧にすぎぬ』
(座っている夫人の膝にもたれかかる。その後、ひとり出ていくマクベス)
(机の上に座る夫人。嗚咽をもらし続ける。机ごと奥へ運ぶ魔物たち)
第三幕 第六場 ≪フォレス、宮殿≫
(1Fにいる貴族たち。ロス、レノックス、アンガス。マルカムやドナルベーンの行方、マクダフの動向について話し合う)
第四幕 第一場 ≪森、中央に煮えたぎる大釜≫
(紫と緑の怪しい照明。エレキチェロの激しい音色が響く。1F中央には大鍋が置かれている。横の棚には不思議な実験セット(フラスコや謎の液体)のようなものが並ぶ。)
(魔物の登場、謎の液体を調合している。その液体を飲ませ・・・たりしたっけ?この記憶何?)
(マクベス登場)
マクベス『頼む、~おまえたちのもつ予言の魔力によって答えてくれ。』
魔物「わしらの口から聞きたいかい、ご主人がたから?」
マクベス『呼び出してくれ、そいつらに会おう。』
(雷鳴、⦅サスペンダーシンバルを切ったもの⦆第一の幻影、西洋甲冑を着たダンカンが鍋から現れる)
幻影1「マクベス!~気をつけるのはマクダフだ。~」
(雷鳴、第二の幻影、へその緒のついた血まみれの赤ん坊、口が動く)
幻影2「マクベス!~女が生んだものなどにマクベスを倒す力はない。」
(雷鳴、第三の幻影、王冠をかぶり、一本の木を手にした子ども)
幻影3「~マクベスはけっして滅びはせぬ、かのバーナムの森の樹がダンシネーンの丘に立つ彼に向ってくるまでは。」
マクベス『(ハッと笑いながら)、そんなことは断じてありえぬ。~バンクォーの子孫がこの王国の支配者になるのか?』
魔物「もうこれ以上は聞かぬがいいよ。~、見せておやりよ彼の目に、彼の心は悲しむよ、さあ、出ておいでよ影のように、そして消えなよ影のように。」
(1F奥から八人の王の幻影。黒いロングコートにフードをかぶって顔は見えない。その上に王冠をかぶる。)
(マクベスの周りを回り、スリラーのような集団ダンス、腕をよく使いながら踊る。)
(馬跳びの土台のようになって、一列に並び、その上を両腕を魔物に抱えられたマクベスが通っていく。)
マクベス『~時のやつ、おれの恐ろしいたくらみを出しぬいたな、~よし、もうこれからは、心が生み出すものは、生まれ落ちると同時に手にも生み出させてやるぞ。~マクダフの城に不意打ちをかけ、~この行為は必ずやるぞ、この決意の熱がさめぬうちに。幻のことはもう忘れた―』(おかしくなってしまった・・・・)
第四幕 第二場 ≪ファイフ、マクダフの城≫
(身重なマクダフ夫人、傍らには乳母車、マクダフの息子もいる)
(ロスとの会話、主人の不在を怒りをあらわにしている。)
(ロスが立ち去り、アンガスが登場、逃げるように伝える。)
(暗殺者(魔物)とロスの登場。マクダフの息子を刺し、ロスは赤ん坊を壁にたたきつける。
夫人は逃げ出すが、出口の奥で悲鳴が上がる。)
第四幕 第三場 ≪イングランド≫
(2Fにマルカム、白いふわふわのシャツ、花柄の浮かれたボトムス、耳には花を挿す、手には枝)
(必死に説得するマクダフ、軽く受け流すマルカム。が、マクダフの誠意に応え、イングランド軍による援軍を伝える。)
(ロスの登場、マクダフに妻子の不幸を伝える。)
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『すべての季節のシェイクスピア』松岡和子著 より抜粋。
マクベスと一心同体でなければ何者でもなくなる、とここまで考えてはっと或ることに思い至った。それは、シェイクスピアの全作品三十七本に登場する主役級のすべての登場人物―男女を問わない―の中で、名前がないのはマクベス夫人だけだということだ。彼女には名前が与えられていない。あくまでもマクベス夫人であって、夫の名を取ってしまえばまさに何者でもなくなる。それがマクベス夫人の悲劇である。
マクベスは〈運命〉によって身に合わない服を着せられてしまった男である。それが彼の悲劇である。~王から与えたれた栄誉が借り着なら、その王を殺して得た王位は盗んだ服ということになる。身に合わないという実感は、借り着の比ではあるまい。その呪われた服を、彼は着続けなけねばならない。それがマクベスの悲劇だ。
〇マクベスの悲劇、夫人の悲劇・・・「男と女」対なるものと、相反するもの。
この本では、国内外様々な舞台をご覧になった作者さんが、「マクベス」の舞台での相違点を書いています。そちらもとても面白いです。この方の文章好きだなあ~。まるちゃんの舞台もご覧になったのかしら?
『蜘蛛巣城』について。
予習の為に観た黒澤監督の映画です。少しだけ相違点を書こうかと思います。
(わかりにくくなるので、役名は戯曲と統一しますね。)
舞台は戦国時代の日本。戦場からの帰還中に蜘蛛巣森で一人の老婆から予言を与えられる。マクベスは夫人に出来事を語るが、「予言があったことをバンクォーからダンカン王に話されでもしたら、ない野心を探られ、身の破滅になる。その前に王を殺そう。」と唆される。王をあやめ、閉じられた城門を王の棺とともに進むことを夫人から進言され、無事に入城する。子どものいない夫婦は、親友のバンクォーから養子を貰う約束をしたが、夫人は拒否する。そして夫人の妊娠が発覚し、邪魔になったバンクォーをもなきものにする。・・・・
アマゾンのレビューを見ていたら、この作品に対して有名なシェイクスピア俳優のローレンス・オリビエが、「夫人の妊娠」という設定が素晴らしいと絶賛したそうです。(他にも4ヶ所)確かにそれぞれが、物語をわかりやすく、魅力的にしている重要な要素につながっていました。(ちなみに夫人の名前は「浅茅(あさじ)=竹の短いカヤのこと。文学作品では荒涼とした風景の時に使う言葉」だそうです。)とても賢い夫人でした。他にも面白い映画で、森が動くシーンなどはCGのない時代によくあれだけ大掛かりなことをしたなあと、迫力満点でした。
ということは、それ以前の舞台などでは「夫人の妊娠」という設定はなかったということですよね。今回第五幕では、夫人が夢遊病で出歩くときに、スカートに染みがありました。最初は妊娠?そして・・・、かとも思ったのですが、(ちなみに「蜘蛛巣城」では流れたことがおかしくなるきっかけとなってしまいます。)あれだけ仲の良かったマクベス夫妻。もし子どもを妊娠していれば、真っ先に報告したはずではないかなあと思っていました。(そしてそうであれば、変わってしまうこともなかったのではないか?「子は鎹」を生きがいにしそうな優しい夫婦だから。)ですので、月のものの匂いから、手にこびりついた匂いを思い出し、夢遊病状態になってしまったのかなあと。夫人はマクベスのいないシーンでは常々弱気な発言をしていました。それでも、マクベスがいるときには気丈に振る舞い、盛り立てようとしていた。ただ、酒宴のシーンで、両手でドレスを握りしめ、小刻みに震える夫人を見て、愛する夫が変わっていく姿をまざまざと見せつけられ、自分の心ももたなかったのかなと思いました。そこがおかしくなるきっかけではないかと。私もこのシーンを見ていて、ハンカチを強く握りしめていました。滑稽なのとやるせなさとで・・・・
鈴木さんのTwitterによりますと、
「もちろん見て下さった方がどう受け取られても構わないのですが・・・流産か生理か、とにかく子供の不在を感じてもらいたいという意図でした。また、お客様に血の匂いを実感として思い出して頂きたかった。当然ながら、それにきづかない心の乱れも。」とありました。
演出の裏話って面白いですよね。正解かどうかは自分で決めればいいことですが、近い考えだとやはりちょっと嬉しい。染みに自分自身で気づかないし、気づいても手助けをしてあげる存在が、周りにいない孤立状態だったのかな~と思っていました。(舞台ではレノックスが侍女役でしたし。)
あと、第一幕第七場にて夫人が「私は赤ん坊を育てたことがあります、自分の乳房を吸う赤ん坊がどんなにかわいいか知っています。~」はやはり、出産経験がある人の言葉だとは思うのですよね。もしマクベス夫婦の間の子どもであったとすれば、「私たちのかわいい子どもが~」とでもいいそうですから、夫妻の間の子どもではなさそうですけれど。そこで言われた「脳味噌をたたき出して~」という言葉。それをその後、ロスがマクダフの子どもに対して行う。この戯曲のテーマでもある、発せられた言葉が、予言となり、後々に実現されてしまうということ。言葉の恐ろしさがよくあらわされていた部分だとは思いました。(そしてえぐい。)夫人はきっと言葉にするだけでも精いっぱいだった。ただそれを実行してしまうロスという人間の残虐さが、「黒胆汁質」なのだろうと思いました。さいてー・・・・か・・・・。
続く・・・