【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

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「愛の勝利を ムッソリーニを愛した女」

2011-06-04 | ★橋63系統(小滝橋車庫前~新橋駅)

いやあ、これには、うなった。
ムッソリーニを愛した女性の壮絶な半生を描くマルコ・ベロッキオ監督のメロドラマ。
耽美派ベルナルド・ベルトリッチが鳴かず飛ばずになってしまったいま、イタリア特有のシャープな艶めかしさを感じさせる映画なんてもう過去のものだと思っていたら、こんなところから現れた。
マルコ・ベロッキオって、イタリア映画界ではすでに巨匠でしょ。名前は知っていたけど、いままで一本も観たことなかった。恥ずかしくて、穴があったら入りたいわ。
それにしても、この圧倒的な映像の力はどうよ。主演女優、ジョヴァンナ・メッゾジョルノのギリシャ彫刻の女神のごとき顔立ち、路上を逃げ惑う群衆たちのあとから現れるときの堂々たる足取り、雪降る鉄格子から撒かれる紙片。これはもう、マルコ・ベロッキオ版「暗殺の森」だ。
時代の熱狂を根こそぎもぎとるように、画面にたびたび現れる熱にうかれたような文字列の異様さ。
ファシズムの嵐を、リアリズムではなく、火傷するほどのメロドラマで描き切ろうとするたくらみ。
時代を描くとはこういうことなのよね。乱暴にいえば、吹っ切れているか、吹っ切れていないか。
そう、この映画、乱暴過ぎるほど吹っ切れているんだけど、その底には確固たる技が横たわっている。
光の差し具合の絶妙さひとつとっても、陶然とする。
愛し合ったはずのムッソリー二が、彼女に愛想をつかしてからは、ニュースフィルムの中にしか出てこないっていうのも確信犯のやり口。
しかも、本物のムッソリーニの姿。
いま見ると明らかにうさんくさい人物なんだけど、あの頃は誰もが熱にうなされてしまった。
彼女はその彼の幻影をいつまでも、いつまでも追う。
・・・なんていうと、やっぱりメロドラマなんだけど、この物語を通じて浮かび上がってくるのは、そういう時代のはらんだ“熱狂”そのものというところが凄い。
彼女の息子はムッソリーニの演説を真似た揚句、精神を病んでしまう。時代の暗喩にもなって、その迫力がまた圧倒的。
こういう映画を観てしまうと、同じような闘争の時代を描いた「マイ・バック・ページ」がどうして物足りなかったのかよくわかる。
開巻直後、ムッソリー二がたった五分で見せてしまう欺瞞とカリスマ性。それに比べると松山ケンイチのハッタリもやっぱり弱々しいわね。
モデルになった人物の格が違うんだから当たり前と思うかもしれないけど、映画としての強度の問題なんだ。
ジョヴァンナ・メッゾジョルノも悲惨な最後を迎えるのに、妻夫木聡のように決して涙を流したりしない。
マイ・バック・ページ」の山下監督は、「時代を描いたんじゃなくて、人を描いたんだ」って言うかもしれないけど、人は時代とは切り離せないからね。
この二本、観比べてみるのも面白いかもしれないわね。
熱にうなされた時代の映画つながりだな。




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