【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「永遠の僕たち」

2011-12-29 | ★橋63系統(小滝橋車庫前~新橋駅)


他人の葬式に潜り込む少年なんて、「ハロルドとモード」だな。
あの映画で待っていたのは、八十歳近いおばあさんだけど、こちらは十代の少女。
葬式で知り合った若い恋人たちの物語。
何気なく振り向いたときの、ミア・ワシコウスカのなんとも言えずチャーミングで瑞々しい表情。
あれだけでもう、この映画は勝ちだな。いちばん輝いていたころのミア・ファローを思い出させるような短髪。
少年だって負けていないわよ。奇才デニス・ホッパーの息子とは思えないほど育ちが良さそうなヘンリー・ホッパー。彼の醸し出す気品と清潔感。
でも血は争えない。ちょっとしたところに父親譲りの感じが出ている。
それがまた、彼を引き立てる。
つまり、ピュアなボーイ・ミーツ・ガールの物語なんだけど、そこに幽霊になった特攻隊員の加瀬亮がからんでくる。
からんでくるといっても、物語をかき回す役ではなく、いつもの彼らしく静かにたたずんでいる印象。二人の水先案内人といったところね。
けれど、この三人には死の影がまとわりついている。
ミア・ワシコウスカはガンで余命三カ月。ヘンリー・ホッパーは両親が死んで自分にも臨死体験の過去がある。
加瀬亮は恋人を残し、敵に突っ込んで死んでいる。
あざとい設定ではあるけれど、そんなあざとさを一切感じさせない素直な映画に仕上がっている。
心洗われるっていうけど、この三人の透明感のある立ち居振る舞いを眺めているだけで、なにか気持ちが清々しくなる。
「グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち」「エレファント」のガス・バン・サント監督。いつもながら声を張り上げない、彼らしい映画づくり。
好感が持てるな。
生きる、死ぬっていうことに戸惑う若者たちの姿はいつの時代も変わらない、永遠のものだからね。
永遠の僕たち・・・。うまい邦題をつけたものだ。
私たちもえいえん?
いえいえん。




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