【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「グッド・バッド・ウィアード」:亀戸駅通りバス停付近の会話

2009-09-02 | ★亀29系統(なぎさニュータウン~亀戸駅)

ドン・キホーテって、ごちゃごちゃといろんな物が置いてあって、満州の闇市みたいなところだよな。
満州の闇市?
ああ。韓国映画「グッド・バッド・ウィアード」に出てくるような雑然とした闇市。
いくらなんでも、あそこまで無秩序じゃないでしょう。
でも、いちど、ドン・キホーテを舞台にしたアクション映画が観てみたいな。狭い通路を逃げる男たち。山積みにされた商品をかきわけて追う男たち。安売りの値札は飛び散り、カートはぶっ壊れ、足元では小物が床をどこまでも転がる。客も店員も入り乱れての大攻防戦!
「グッド・バッド・ウィアード」の影響受け過ぎじゃない?
「グッド・バッド・ウィアード」は、もっとスケールが大きい。なんといっても広大な大陸の話だ。
1930年代の満州を舞台にした大活劇。隅から隅までウェスタンを意識した韓国版西部劇になっている。
韓国製西部劇なんていうと、奇をてらっただけのちゃちな映画なんじゃないの、って思うかもしれないけど、これがどうして堂々とした大作だった。
堂々としているかどうかはともかく、地平線まで何もない広大な平原とか、魑魅魍魎が跋扈しそうな闇市とか、たしかに西部劇の道具立てはばっちりそろっていた。
その中で、悪党たちが秘密の地図を奪い合い、地図に書かれた宝の山をめざす。
戦争直前の満州だから、韓国人もいれば、中国人も、日本人も、ロシア人もいる。まさに西部劇でいうフロンティアと同じゴッタ煮状態。どんな荒唐無稽な話もまかり通る。うまいところに目をつけたわよね。
とにかく、開巻直後の列車強盗からしてスピーディーきわまるアクションの連続で、血沸き、肉躍るとはこのことだ。
だだっ広い大地を白煙を吐いて疾走する列車。金品を狙うコソ泥、馬で襲う蛮族、屋根に乗る賞金稼ぎ。
西部劇のお約束がぜんぶ詰まってる。
あなたの言う、ドン・キホーテのような闇市での壮烈なアクションがあったりして、最後は、人馬入り乱れての追撃戦へとなだれこむ。
宝の地図を持ったコソ泥を、蛮族が追い、ギャングのボスが追い、賞金稼ぎが追い、日本軍までが追いかける。
風になびく馬のたてがみ。舞い上がる砂塵。いななく声。撃たれて倒れる音。
その全貌をあるときは至近距離から、あるときは空の上から、変幻自在にカメラが追う。
イモトアヤコが走っても24時間じゃ走り切らないような、壮大な平原で延々と続く追跡劇は理屈抜きに気持ちがいい。
まさしく、映画。まさしく、モーション・ピクチャー。いやあ、こういう映画こそ大画面で観るに限るな。
その風景に負けじと、ソン・ガンホ、イ・ビョンホン、チョン・ウソンといった、韓国を代表するトップ男優たちが、うさんくさい連中を嬉々として演じている。
ひらりと馬にまたがるわ、器用にライフルを振り回すわ、風にコートをたなびかせるわ、これ以上内ない目力で見得を切るわ。やりたい放題。
そのぶん、登場人物の心情とか、人間関係の機微とかは、まったくないんだけどね。
そんな細かいことを考える暇があったら、アクションを楽しめっていう男気がうれしいじゃないか。かっこいいとは、こういうことさ。
でも、最後の三すくみの対決は、もうちょっとすっきりと勝ち負けが決まってもよかったと思うんだけど。
そんなちっちゃいことは気にしないの。
そもそも、あれだけの銃弾の中で主人公たちには一発も当たらないって、おかしくない?
だから、そんなちっちゃいことは気にしない、ワカチコ、ワカチコ。
地図を見なくてもみんな宝の山の近くまで来れちゃうのもヘンよね。あの地図はいったい何だったのって思っちゃう。
だから、小さなことは気にしない。ワカチコ、ワカチコ。
あなた、興奮しすぎて、理性に欠けてない?
それでいいんだ。きっと、監督のキム・ジウンは、西部劇を観過ぎて偉大な妄想に陥った男なんだから。
それって、騎士道物語を読み過ぎて偉大な妄想に陥った男みたいね。
何ていう名前の男だ?
ドン・キホーテ。
うわっ、偉大。




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6 コメント

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こんにちは! (kira)
2009-09-05 11:38:50
ここでイモトアヤコが出てくるとは思いませんでした(爆)

ソン・ガンホが一直線に、わき目も振らず日本軍の車両を目指すところからして
??でした~。
幾ら特等でも
頭カラッポにできなかったです~、最後まで(笑)
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■kiraさんへ (ジョー)
2009-09-06 10:38:48
いつも頭の中がカラッポなので
そういう人間には結構楽しめました。
いいかげんさもここまできたら
楽しむしかないです。
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こんにちは! (AnneMarie)
2009-09-07 12:17:08
長かったわぁ~~。

>最後の三すくみの対決は、もうちょっとすっきりと勝ち負けが決まってもよかったと思うんだけど。

私も同じこと感じました。
途中居眠りしちゃったんでエラソーなこ言えないんですが、もうちょっとわかりやすくお願いします、って言いたくなりました。

あんなに打たれてもなかなか逝かないなんて。。。
そこだってもうちょっと短くできたと思うんだけどな。
長かった(また言っちゃった)。
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■AnneMarieさんへ (ジョー)
2009-09-07 22:31:20
たしかにこれでもか、これでもか、っていう感じで、最後なんていつ終わるんだよ、と思ってしまいますよね。
でも、そのしつこさが韓国映画の身上なのかもしれないと思ったりもします。
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Unknown (Ageha)
2009-09-13 14:53:57
あくまでも固定観念というか偏見なんですけど
韓国映画ってバッドエンドが多くって
やたら人が死んで・・・。

でも、これだけたくさんドンパチで死んでても
なんていうか
大人の鬼ごっこみたいだったというか
なんと言うか・・・(笑)

カッコイイのは二人だったんですが
ソンガンホがおいしいとこ全部
もってっちゃった感があり
あのひとがいないと成り立たない作品でした。
役柄そのままに一人勝ち?(!)
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■Agehaさんへ (ジョー)
2009-09-15 19:40:53
死人のひとりひとりに感情移入してたら
きりがないですよね。
ここはひとつ、日本の時代劇で人がバッサバッサ切られるのと同じ感覚だと
割り切って楽しみましょう。
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