【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「モンゴル」:上野広小路バス停付近の会話

2008-04-05 | ★都02系統(大塚駅~錦糸町駅)

広小路っていうわりに狭くない、このへんって?
そうか?
モンゴルの大平原とかと比べると狭い、狭い。
って、比べるものが悪いんじゃないの?
そうかしら。でも、悪くなかったわよ、映画の「モンゴル」は。
ゲッ。意外な感想。まだテムジンって名乗っていた若き日のチンギス・ハーンの物語なんだけど、血で血を洗う抗争がこれでもかと続く大味な歴史劇なんで、お前の趣味には合わないんじゃないかと思ってた。
たしかに、コマ落とし風に血しぶきが飛び散る戦闘場面は、「プライベート・ライアン」ばりの映像スタイルで少々うんざりしたけど、観終わった後の印象としては、「トゥヤーの結婚」に通じるところがある、興味深いモンゴル映画だったわ。
いや、これはまた、ますます意外なことを言う。「トゥヤーの結婚」は現代の内モンゴルに暮らす一人の女性の物語で、かたや、「モンゴル」は世界の英雄チンギス・ハーンの物語だぜ。
チンギス・ハーンの物語として観ると、浅野忠信がモンゴル語で好演しているとはいえ、通りいっぺんの話にしか見えないけど、彼の妻ボルテの物語として観ると「トゥヤーの結婚」の主人公との共通点が見えて、結構興味深いって言ってるのよ。
共通点なんてあったか。
だって、十歳にして九歳のテムジン、後のチンギス・ハーンに「私を妻に選びなさい」って言うし、人質にとられると見張りを殺しちゃうし、テムジンが幽閉されるとはるばる助けに行っちゃうし、他の男との間にできた子に平気で「テムジンがお父さんよ」って言っちゃうし、これだけのたくましさはモンゴルのような広大な大地に根を張って生きている女性じゃないとなかなか出てこないわよ。
まあ、そういう意味では「トゥヤーの結婚」のパワフルな主人公と同じような資質を持っているって言えるのかもしれないな。
虫も殺さないような素朴な顔はしてるけど、度胸が座っていて、浅野忠信のテムジンなんて、完全に尻にひかれてるご主人って風情よね。
いや、それは言い過ぎだろう。ちゃんと妻を救うために八面六臂の活躍をする場面もあるし、なにしろ、後のチンギス・ハーンだぜ。世界の覇者だぜ。
世間的にどんなに偉かろうと、女にとっちゃあ、ただの男に過ぎないの。
あちゃあ、お前にかかると、世界の浅野も俺たちと変わらない、ひよわな男に見えてくるなあ。いっそ、お前もモンゴルに住むか。
あ、それ、いいかも。浅野さんにモンゴル語を習えるなら。
ありえねー。
でも、正確に言うと、「トゥヤーの結婚」は中国人が監督した映画、「モンゴル」はロシア人が監督した映画なのよね。
ああ、そろそろ、本当のモンゴル人が撮った映画も観てみたいな。
ほんとに広い広小路が見たいようにね。
あ、まだこだわってる?


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