【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「9<ナイン>~9番目の奇妙な人形~」:塩浜二丁目バス停付近の会話

2010-05-08 | ★業10系統(新橋~業平橋)

ずいぶん長い坂の歩道橋だな。疲れそう。
でも、これなら、階段がないから小さな人形も楽々上っていけるかもしれないわね。
小さな人形?何のことだ?
シェーン・アッカー監督の「9<ナイン>~9番目の奇妙な人形~」に出てきた麻布の人形のことよ。
麻布?そんな高級住宅地に人形がいたのか。
あのねえ、麻布は、“アザブ”じゃなくて“アサヌノ”。
ああ、アサヌノ、ね。
あのぬくもりのある素朴な質感。目のつけどころがいいわね。
その麻布のおなかにはジッパーがついてて、目は双眼鏡みたいにキョロキョロして、ちょっと神経質そうなキャラクター。ティム・バートンが気に入ったっていうのもわかるような気がするな。
ダークな雰囲気も醸し出しているしね。
映画は、ある日、麻布の人形が目覚めたら、あたり一面廃墟になっていたという物語。
マシンとの戦いに人類が破れたあとの荒涼とした世界が広がる。
ターミネーターみたいな設定だ。
自分たちが創造したマシンに敗れた人類は、マシンに“心”を入れなかったことを反省して、最後に残された麻布の人形に“心”を吹き込む。
・・・なんて聞くと、どんなファンタジー・ワールドが広がるのかと期待しちゃうけど、物語は廃墟の中でのマシンとの戦いに終始する。
そうねえ。ティム・バートンのような想像力の飛躍はなかったわね。
人形の造型とか、彼が活躍する廃墟の町の姿とか、敵になるマシンの色彩やら形状とか、ひとつひとつに手が込んでいて、独特の世界観に浸れることは事実なんだけど、惜しいかな、物語にいまひとつ新味がない。
人形の目の演技とか、お茶目で好きなんだけどねえ。
たしかにチャームポイントのひとつではあった。目は口ほどにものを言う、っていうけど、それを逆手にとって、目がなかったり、目がボタンになったりしているティム・バートン系ダーク・アニメが流行りの中で、この映画の登場人物には、どでかい目がついている。
二つの目で世界をしっかり見据えているっていうことよね。
そこがまた愛嬌で、このキャラクター・グッズ、ほしい!っていう人が出てきてもおかしくない出来上がりだ。
ディズニーのダッフィーに勝るとも劣らない出来。
それは誉め過ぎだろう。
はい、口が滑りました。でも、それぞれ特徴の違う人形が9体いるからね。
まるで、サイボーグ009。
相変わらず、例えが昭和だわねえ。
悪いか。石ノ森章太郎じゃなくて、石森章太郎のころのマンガだぞ。
とにかく、あの人形さえゲットできれば映画は観なくてもいいくらいチャーミング。
それも誉め過ぎだろう。
あら、誉めてるつもりじゃないんだけど。
たしかに映画自体は誉められていないな。
もともとは11分の短編だったものを長編に作り直したらしいからね。
長けりゃいいってもんじゃないってことだ、映画も歩道橋も。






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ふたりが乗ったのは、都バス<業10系統>
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