【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「中国の植物学者の娘たち」:東雲橋交差点付近の会話

2007-12-29 | ★東16系統(東京駅~ビッグサイト)

ジャスコっていやあ、イオングループだな。
じゃあ、澄んだ空気が流れているのかしら。
どうして?
だって、マイナスイオンでしょ。
おもしろい連想するね、お前。
マイナスイオンがみなぎっている「中国の植物学者の娘たち」みたいな映画を観たからかな。
まあ、中国の孤島の植物園を舞台にした映画だからな。空気にはマイナスイオンが満ちているかもな。
孤島の植物園っていう舞台設定だけで何か起きそうなのに、そこに住む女性と実習でやってきた女性の間に愛が芽生えるなんて、ドキドキする設定よね。
たゆたうような映像の美しさは、まるで夢の中のできごとのようだった、って言いたいんだろ、お前は。
そう、そう。二人の女性の禁じられた恋が、美しい光景の中で繰り広げられるんだから、切なさもいっそうよね。切り立った山々の風景とか、水辺の結婚式の光景とか、エキゾチックそのもの。
でも、こういう設定であれば、もし「魚と寝る女」とか「」とかで独特の世界観を築いている韓国のキム・ギドクあたりが撮っていたら、もっと息詰まるような映画に仕上がっていたんじゃないのか。
ああ、また、名監督と比べてしまうという、あなたの悪い癖が出た。どうして、そういう雲の上の存在とばかり比較したがるのかなあ。
でも、こういう魅惑的な設定だったら、もっともっと密度の濃い映像になりそうなのに、どこかしら行くところまで行き着いていない歯がゆさが残るんだよなあ。
こんなに美しい映像以上に何が必要だっていうの?
なんか、女性同士の愛が崇高なことのように描かれているけど、彼女たちに振り回される男たちにとっちゃ、いい迷惑だぜ。
あら、どこが迷惑なのよ。
二人の愛を隠すために、偽装結婚する相手の男。彼女たちの秘密を知って激怒する様をまるで悪者みたいに描写しているけど、彼の立場に立てば、青天の霹靂だぜ。女性たちの父親だって、二人の関係を知れば心が乱れて当然なのに、あんな目に遭って、ひどすぎやしないか。しかも、その後の二人の描写は、まるで愛に殉じた悲劇のヒロイン気取りだ。
だって、悲劇のヒロインなんじゃないの?
そのあたり、ちょっと古臭い感じがして、キム・ギドクならもっと違う展開になっていたんじゃないかと思ったりしたんだ。
もっとひねりが必要だってこと?あなたは、ひねくれた映画を見すぎているのよ。もうちょっと素直に映画を楽しんだらどうなの?
なんかな。「シルク」が外国人の頭の中だけにある日本を描いたように、これも外国人の頭の中だけにある中国を描いたような人工的な感じがちょっとするんだよな。
だから、考えすぎだって。それこそマイナスイオンでも吸って頭の中をクリアにしたら。
でも、ジャスコにマイナスイオンがあるかどうかは疑問だぜ。
じゃあ、イトーヨーカ堂なら?
うーん、おもしろい連想するね、お前。


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ふたりが乗ったのは、都バス<東16系統>
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