【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「アメリカン・ギャングスター」:豊洲二丁目バス停付近の会話

2007-12-19 | ★東16系統(東京駅~ビッグサイト)

ららぽーと豊洲にもスターバックスが入っているのね。何飲みたい?
アメリカン。
どうして?
よく言うだろ、アメリカン・ギャングスターバックスって。
言わない。
「アメリカン・ギャングスター」は来年の一月公開だから言わないだけで、公開されれば、みんなが言うようになるぞ。
ならない。
つれないねえ。そうは言うけど、公開より一足先に観た「アメリカン・ギャングスター」は、深煎りコーヒーのように味わいのある映画だったぞ。
だったら、エスプレッソでしょ。アメリカンじゃないじゃない。
うーん。だったら、正統派のアメリカ映画の香りがした、って言うのはどうだ?
デンゼル・ワシントンが麻薬シンジケートのボス、彼を追う捜査官がラッセル・クロウという組み合わせのギャング映画なんだから、正統派の味わいにはなるわよね。
しかも、監督が「ブラック・ホークダウン」のリドリー・スコットだ。観ていてつまらないわけがない。
「ブラック・ホークダウン」ていうより、「エイリアン」とか「グラディエーター」のリドリー・スコットって言うべきでしょ。
まあ、代表作といえばそうなるんだろうけど、ソマリアでのアメリカ軍の敗戦を描いた「ブラック・ホークダウン」のあの戦場の混乱、最前線で戦っている人間には全体の状況がまったく見えないという恐怖感は、いまだに記憶に残る。もっと評価されていい映画だと思うぜ。
でも、あの映画では戦いの相手の黒人が、まったく人間的に描かれてない。同じ血が流れる人間なんだという意識が欠けてるんじゃないの?
好きでもないのにソマリアに派遣されたアメリカ兵からすれば、そう見えるんだよ。
黒人は自分たちと同じ人間じゃないってこと?
こんどの「アメリカン・ギャングスター」の中にもあるじゃないか、「暗黒街の人間は、黒人が暗黒街でのしあがるのがいちばん許せない」みたいなセリフが。
表社会だけでなく、裏社会にまで差別があるってことね。
映画の世界だって、いつもヒーローを演じるデンゼル・ワシントンが悪者を演じるなんて、珍しいと思うかもしれないが、つい30年前は、逆に黒人がヒーローを演じるなんて考えられなかったんだから。
そういう時代の話だしね。
悪に手を染めているのに家族は大切にするゴッドファーザーみたいなデンゼル・ワシントン、離婚調停中で必ずしも品行方正でない捜査官ラッセル・クロウ。それぞれにソツなく演技をしているんだけど、追う側と追われる側が交わることがない。二人は平行線をたどったままデンゼル・ワシントンが捕まって終わるのかと思ったら・・・。
ああいう形で一対一の対決場面が出てくるとは思わなかったわ。最後に二人の演技が火花を散らす。
ちょっとデンゼル・ワシントンがいい子になっちゃった、という印象もあるけど、まあ、実話だからな。
え、そうなの?
どこまで事実に即しているかは別にして、国をまきこんだ大事件だったらしいぞ。
ワイロ、ワイロで軍も警察も全部染まっているってことね。
おおげさに言えば、上から下までアメリカ中がな。
それで、「アメリカン・ギャングスター」なんて大仰なタイトルになっているのね。
俺は、アメリカン・ギャングスターバックスにしてほしかったけどな。
わかった、わかった。で、結局何飲むの?
だから、アメリカンて言ってるだろ。
そんなメニュー、スターバックスにはないわよ。
うそ!
そういうときは、カフェ・アメリカーノください、って言うの。
じゃあ、俺たちが観たのは「ギャングスター・アメリカーノ」だ。


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ふたりが乗ったのは、都バス<東16系統>
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