【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「みえない雲」:新浜川橋バス停付近の会話

2007-01-04 | ★品93系統(大井競馬場前~目黒駅)

なに、このガウディのできそこないみたいな施設は?
よくわからん。地下道かとも思ったが、ドアも閉じられてるし。
核シェルターかしら。
日本でこんな公道に核シェルターなんてあるか?
そりゃそうね。「みえない雲」のような核をテーマにした映画さえ日本にはないんだもんね。
「みえない雲」は、原子力発電所の事故で一般の市民が放射能の恐怖にさらされるというドイツの映画なんだが、日本にだって原子力発電所はいっぱいあるのにどうしてこういう発想の映画ができないのか、不思議だな。
広島、長崎を描いた映画はたくさんあるんだけど、いま現在の日本が核の恐怖にさらされているっていう映画はないのよね。
北朝鮮が核を持ったっていうのに、いまひとつ核の危険性が語られないのは、どうしてなんだろうな。
みんな、のんきなのよ。万一原発で事故があったら、あなた、どうする?
どうするって言われたってなあ。
でしょ。「みえない雲」は偉い政治家とか科学者とか全然出て来なくて、ごく一般の市民がいきなり放射能の恐怖にさらされて右往左往する姿をドラマの中心に添えているから、他人事じゃなく、怖いのよね。
駅に群集が集まるシーンなんか、パニック映画も真っ青のリアリティで、すさまじかったけど、ほんとに原発事故が起きたらきっとあんなふうになるんだろうな。
ああいうシーンていままでもパニック映画にたくさん出てきたけど、フィクションとは思えない恐怖を感じたのはどうしてかしらね。
全体が絵空事じゃなくて、本気で核の恐怖を訴えようとしているからじゃないか。
あの白血病に犯されていくシーンもたとえば日本の「世界の中心で愛を叫ぶ」よりずっと胸に迫るわよね。
この映画と比較すると「世界の中心で愛を叫ぶ」の白血病がいかにドラマを盛り上げるためだけのお膳立てに過ぎなかったか、よくわかるよな。
「世界の中心で愛を叫ぶ」は泣け、泣け、と強制されているような映画だけど、もっと悲惨な「みえない雲」が涙ではなく明るいラストシーンにしているのも見識があって好感が持てたわ。
でもきっと、日本では評判にならないうちに消えていくんだろうな、こういう映画は。
そして核の恐怖も忘れられ、対処の仕方を考える人もなく、日本は滅んでいくのかしら。
うーん。万一原発で事故があったら、ほんと、どうする?
映画の中ではドイツの役人は「地下室に入れ」って叫んでたけど。
日本じゃ個人の家に地下室なんてないぜ。
やっぱり、このわけのわからないガウディもどきの施設にでも入るしかないかしらね。
正月から、絶望的だな。


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ふたりが乗ったのは、都バス<品93系統>
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