たびにでるたび

***旅に出るたび
***胸につもる何かを
***ほんの少し、眠る前に

ビルエヴァンスとキースジャレット

2007-12-23 02:09:47 | Weblog
ビルのピアノは、
あたかも「わたし」と「あなた」の間に
そんな風に手のひらと手のひらをぴたりと緊密に触れあって
限りなく薄いガラスの壁があるかのような
ふたりの間にある2枚の皮膚の感覚で、温度で、ふたりが別々の人間であると知る
それは心地よい緊密さのある
そんな感じのするピアノだ

キースのピアノは、
思いきり手を伸ばして
握手のつもりが抱き合うか殴り合うか
体や心の境目なんかをまるで無視して
それでいてはにかみながら
気づくといきなり「あなた」は「わたし」の中にいて
どちらもきれいにすっかりぐちゃぐちゃに溶けて混ざり合って
その色で、元のふたつの色を知るような
そんな風なピアノだと思う


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距離感

2007-12-13 03:15:18 | Weblog
あなたが私の‘職場’のようなところに来てくれて
寝不足の疲れた顔で
がんばって私のために来てくれたのだけど
なんとも居心地わるそうに
帰っていくのを見送るときに
わざわざ来てくれた彼に何かしなくちゃいけない気がして
そっと肩を抱いた


その2日後
私がきみの‘職場’のようなところに遊びに行き
きみの‘仕事’を見た
あまり見ちゃいけないような
すこし照れくさいような
でもいとおしく
その手に頬に
髪に
肩に
唇に
触れたくて
たまらなくなった

駅まで送るよ と
きみは私の手をとって
私たちは真剣に‘仕事’の話をしながら大きな歩道橋を渡って
駅でさよならする前に 思わずそっとキスをした

結局
近くに
手に触れる距離に
あるものだから愛するのか
遠ければ忘れてしまうのか

あの頃
離れている恋人同士なんて信じない 
と言って私と別れた あの頃の恋人のその言葉を
信じられなかった私は
そこにまた戻ってきただけなのだろうか



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一緒にいよう

2007-12-08 21:56:35 | Weblog
少し遅れてきみの誕生日をお祝いした

じゃれあって
笑いあって
話をして
一緒にいると
もっとずっと一緒にいたくなって
もっと早く知り合っていたかったな と口にすると
知らす知らず涙があふれて
止まらなくなった


一緒にいたい
一緒にいたいよ
一緒にいようよ


頭の中に聞こえた気がした声は
きみの本物の声で
見上げると きみは
何度も同じ言葉を繰り返した




その一言で
たった一言で、
なにかが 動いた



揺れ とか
迷い ではなくて
音をたてて なにかが動いた



怖い、と思った


遠心力でふりおとされされそうな
何も見えなくなりそうな
そんな夜


  

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合鍵

2007-12-04 17:13:11 | Weblog
合鍵、持ってていいよ

ほんの少しためらうような口調に、真意をはかりかねて

うん?

と曖昧な返事をすると

きみは、目を合わせずに
棚からとった鍵を
そっと手渡してくれた

いいの?
わけもわからず尋ねる私に、
持っててよ、嫌じゃなかったら
と きみはさりげなく視線をそらしたままだ

嬉しい。
すごく嬉しい。
本当にいいの?
思わず勝手に言葉がこぼれる


きみがようやく 私の顔を見る
よかった、って
すごくほっとしたように言うんだ
よかった、こういうの好きじゃないかなって心配だった


合鍵を
私に
預けてくれたんだ、
そう思うと何か突然に体がフワリと軽くなった気がした。
本当なら、
胸が躍るような、とか
心が暖かくなる、とか
そんな表現をするのが正しい状況なのかもしれないのに
体が、力が少し抜けて、軽くなったのだ。

恋人同士みたいだね

そう言いそうになってやめた。
だけど、嬉しかったんだ

きみはきっとまだたくさん
私に言えないことがあるんだね
そうさせているのは私だし
私たちの状況なのだと思うと
何も言えなくなって 
ただ抱き合うしかない
私もきっとすこし
きみに言えないことが あるんだね
 




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ひとりの時間

2007-12-02 04:15:45 | Weblog
あなたからメールが来ると
きちんと返事をする義務感のようなものに心が少し圧迫される

きみからメールが来ると
どんなおもしろいことを返信しようかと考えるだけで気分がよくなる

ひとりで起きている夜更け
突然ぱちん と弾けるように涙が出て
仕事や日常の
やらなければならないことの
忙しさに首をしめられるような気持ちに気づく

うちで暮らそう
少しゆっくり休みなよ
そう言ってくれたあなたを思い出して

そう言えることの
いろいろな意味を思う

きみに会うのは
やがて会えなくなる日が来ることを
確かにその日が目の前に来ることを
知っているためなんだろうか
ただ会いたいという気持ちを
疑うほうが良いのだとしたら
それはそのためなんだろうか

誰にも会わない時間に
誰かのことを考えるのは
自分のことを考えないようにするためなんだろうか



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