たびにでるたび

***旅に出るたび
***胸につもる何かを
***ほんの少し、眠る前に

ここにいること

2007-04-28 06:36:03 | Weblog


ふりだした雨に ぬれたこの街は
砂埃だらけの なつかしいにおい
ひとりきり あの日 しのびこんだときから
ずっとまいごのまま おわりのない迷路

ここがどこなのかさえも
わからないだけど
ここにいたいよ

なにも言わないで なんて
言わないで だって
ここにいたいよ


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横顔

2007-04-21 07:01:31 | Weblog
電車で
ドアに近い吊り革にぶらさがって 窓のそとをながめていた
おりるまでほんの数駅
はんぱな午後の時間なので 混んではいない

いつからそこにいたのだろう
立ち姿
顎のライン
髪型
書類を持つ手のかんじ

違うよ 
あのひと のはずがない
どうしてここに そんなはずは
だけど いないと 言い切れる理由もない 
あのひとが

息ができない
立っていられない 目眩が
体中の血の温度がさがって
頭だけがあつくなる

違うよ
あのひと のはずがない
だけどどうして ここにいるの
そんなはずない 本当に?
手を伸ばせば届くところに
声の届くところに
あのひとが

落ち着け
違うところを探すんだ
あのひとじゃない 違うよ 

だってあのひとはここにいない

足下に目を落とす
 濃紺のスーツの
 スラックスの裾が折られて
 全身を見ると 
 あぁ、あのひとのほうが背が高い

本当に?

ななめからの横顔の輪郭
その唇を動かしたら
あのひとの声がするのじゃないか?
あのひとの声が名前を呼ぶのじゃないか?
こちらを振り向いてはにかんだように頬笑むのじゃないか?


ゆれて 体がかしいで
あわてて吊り革をにぎり直す
自分の指と手のひらの感触が
はじめてふれるもののような鮮烈な違和感
暑くもないのに背中のほうを
ひやりとした汗がながれていく

あのひとのほうが背が高い
けれど 
あのひとだったらいいのに

同じ駅で降りた。
わかっているのに
顔を覗きこまずにはいられなかった


そうしてなにごともなかったように
階段をのぼる。
あのひとのいないこの街の
生ぬるい風のながれる混雑した階段を。



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その手にふれたい。

2007-04-10 04:34:26 | Weblog
ほんのささいなつまずきで
あなたが恋しくなってしまうのは
きっと甘えがすぎるってことなんだ
 
あなたがいれば 
あれもこれも全部
うまくいくんじゃないか
あなたがいないから
あれもこれも全部
うまくいかないんじゃないか

そんな風に
あなたに甘えている
あのころと同じように


その手にふれたいだけなのだ。






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夢からさめる夢

2007-04-08 04:36:45 | Weblog
眠りからさめて
夢うつつで電話に出る。

その声に はっとする
言葉なのだろうか
意味だけが音をたてて
流れ込んでくる
ちゃんと返事を出来たのかすらさだかでない
世界で一番愛しい声が
名前を呼ぶ 小さく
声が 遠ざかってゆく
それを止めることは出来ない
声だけが耳に残る

そこで目がさめた。
着信の記録はない。
でも声が聴こえたのだ 確かに。
夢からさめる夢を 
ときどき見る。

 



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手紙を書く

2007-04-01 07:41:47 | Weblog
出すつもりはなかった。
友人に宛てた手紙を書き終えて
あまった便箋にらくがきでもしようと
なぜか架空の手紙を書き始めた。
あのひとへ。
なぜこんなにも遠ざかって
どこにいるかすら知らず
だれといて なにをしているかもわからず
それなのに なお
大きくこころを占める
あのひとへ
サンタクロースに宛てた手紙のように
それよりもっと ただのいたずら書きだ
それなのに あのひとの名前を
ペンが紙にうつすだけで 指先がふるえて
文字がしっかりと書けない
仕舞う場所のない思いが こぼれる
住む町の名は知らない 知っているのは最寄りの駅だけ
それすら 最近のことではない
地区名だけで届くはずはない
もし万が一届いたとして
引っ越しているかもしれない
姓だって 住所だって 変わる
ひとだって 変わる
変わらないものなどなにもないと知って
なお あのひとへ手紙を書く
風船につけた種を空へ放つような
瓶につめた地図を海へ流すような
あてのない手紙を書く
宛て先不明で戻ること すらない
きっとどこへもつかない 手紙を書く
まだすこし寒い 明け方に

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