「当歳馬の頬に腫瘤ができて、
最初切開したら”膿”が出て、しばらくするとまた腫れてきて、今度は穿刺したら”漿液”が抜けて、凹んだがまた腫れてきた。」
とのことで、来院した。
超音波で観ると、内腔があり、内部はわずかにエコージェニックな微細な粒状物を含んだ液で満たされていた。
押しても口からも何もでない。凹まない。
つまりどことも連絡していない。
唾液腺やその導管によるものかと考えていたのだが、この状態だと丸ごと摘出するしかないし、丸ごと摘出して良いだろう、と判断した。
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手術台で横臥にし、吸入麻酔で維持してもらう。
ちょうど麻酔の研修にほかのNOSAIから獣医さんが3名来ている。
腫脹部を曲切開し、腫瘤を破らないように周りの組織をはがしていく。
頬の静脈叢は一部切らざるを得なかったが、結紮止血した。
破らないで摘出できた。
それは吸入麻酔をかけて、無影灯の下で落ち着いて手術できるからだ。
静脈麻酔で、暗いところで、急いで手術していたらこうはいかない。
何か分泌する組織が閉じ込められているのだろう。
最初はアテローム(粥腫)だったのかもしれない。
病理組織検査に出す。
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これが脳の中にあったらもっともっと難しいし危ないだろうな。
脳外科医マーシュの告白 | |
栗木 さつき | |
NHK出版 |
多くの患者さんが、脳腫瘍に苦しみ、脳外科手術に救いを求め、ときには完治し、ときには命を落とし、ときには小康を得るが再発する。
マーシュ先生はロボットのように手術を重ねるのではなく、患者さんのことを考え苦悩しながら脳外科医としてのキャリアを積んで来たようだ。
「つらい仕事だよ、脳外科医は。ならないほうがいい」
レジストラー(専門医研修生)に言った言葉は本気だったのかどうか・・・・・
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日が短くなった。
日暮れ前に散歩したり遊べる季節はもう終わりだな。
「脳の病気」と診断されると負のインパクト大だそうです。ほとんどの人がそう言います。脳外科医たちはもすこし違う気持ちというか思考が最初に来るように思います。まったく同じヒトはいないだろうからわからないことですけど。
hig先生も「この人はやめといたほうがいいナ」って思うことあるのでしょか?愚問ですね。
オラ君はこんぐらい暗くても見えるのですよね。「ヒトってのはなんて残念な生き物なんだ」って思ってるかも?もうすぐお彼岸ですね。
ほとんどの人が脳の重要性ともろさを知っているからでしょうか。
マーシュ先生の本を読み終えて、脳はけっしてuntachableではないけれど、悪性や転移性の腫瘍が脳にできたらほとんど外科手術の対象にはならない、あるいは今まではならなかった、ということがわかりました。
この病気はやめておいたほうがイイナ、もありますし、この”ヒト”は、というのもあります。リスクがない手術はないし、リスクがある診療をするには信頼してもらっていること、まかせてもらえることが大切です。