EQペディア/エラリイ・クイーン事典

エラリイ・クイーンの作品(長編・短編)に登場する人物その他の項目を検索する目的で作られたブログです。

ダブル・ダブル

2007年06月20日 | 長編ミステリ

ダブル・ダブル/DOUBLE,DOUBLE (1950)

☆事件

エラリイ・クイーンの許へ匿名の手紙が届いた。中には最近のライツヴィルのゴシップを知らせる新聞の切り抜きが数枚入っていた----“町の隠者”の病死、“大富豪”の自殺、そして“町の乞食”の失踪。この三つの事件の共通点は?
この手紙の主は、不敵にもクイーンに挑戦状を叩きつけたかのようであった。
と、そこへ“町の乞食”の娘で森の妖精のごとき少女リーマが彼の事務所へ事件の依頼に訪れ、クイーンは懐かしの土地へ赴く----彼を待ち受けたように古い童謡に憑かれて犯行を重ねる殺人鬼に、さすがのクイーンもなす術がなかった!(ハヤカワ文庫カバー紹介文より)


☆登場人物リスト

セバスチャン・ドッド博士・・・開業医、“町の聖者”
ケネス・ウィンシップ博士・・・ドッド博士の共同経営者
ハリイ・トイフェル・・・庭師、“町の哲人”
ニコール・ジャガード・・・“町の泥棒”
トム・アンダースン・・・“町の乞食”または“町の呑んだくれ”
リーマ・アンダースン・・・トムの娘
オティス・ホルダーフィールド・・・弁護士
デイヴィッド・ワルドー・・・双生児の仕立屋
ジョナサン・ワルドー・・・双生児の仕立屋
マルヴィナ・プレンティス・・・レコード新聞の女社長
フランシス・オバノン・・・プレンティスの相談役
デイキン・・・ライツヴィル警察署長
ジープ・ジョーキング…警官
チャランスキイ・・・検事
エラリイ・クイーン…探偵作家


☆コメント

『ダブル・ダブル』はひとことで言ってしまえば牧歌的な作品ですね。それはひとえに“森の妖精”リーマ・アンダースンの魅力からくるものでしょう。“町の呑んだくれ”とも“町の乞食”とも呼ばれたトム・アンダースンの秘蔵子だったリーマは、W・H・ハドスンの『緑の館』のヒロイン、リーマのイメージとダブル・ダブル。
もうひとつこの作品の特徴は、「童謡殺人」がモチーフとなっているところ。「童謡殺人」をモチーフにした作品は数多くありますが、なんといってもクイーン自身の作品『靴に棲む老婆』と微妙なところでダブル・ダブル。狂気と不条理の裏に理性的な犯人のしたたかな計算があるところなど、よく似ています。犯人が狂気の域に達しているヴァン・ダインの『僧正殺人事件』と比べてみると、クイーンの二つの作品のほうが互いに似ていることがよくわかると思います。

『ダブル・ダブル』は探偵と犯人の勝負を外から見物している分には面白いが、謎解きの興味は希薄な作品といえるでしょう。重要な手がかりが明らかにされる時期が遅すぎるにもかかわらず、これまでクイーンを読んできた読者には早いうちに犯人がわかってしまうのではないでしょうか。それでも楽しく読めるのはリーマの魅力や、物語の口当たりの良さによるところが大きいと思われます。クリスティーが得意とする童謡殺人の分野を扱っていたり、ロマネスクな雰囲気を前面に出したりしているものの、やはりクリスティーとは違うクイーンらしさが全編に満ち溢れています。
(yosshy)

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