エピローグ

終楽日に向かう日々を、新鮮な感動と限りない憧憬をもって綴る
四季それぞれの徒然の記。

杣の径

2016年10月18日 | ポエム
杣の径を歩くと云うのは、楽しい。
杣径は、不思議な径である。
まるで異次元へ通じる径、であるかのように錯覚してしまう。

「杣道」とは、杣人が使った細くて険しい道の事だ。
杣人とは、マタギ或いは山人、そして山での仕事を生業とする人の事。
獣道とは似て非なるものである。



この杣の径を歩きながら、ぼくは今年の夏の光と訣別した。
そんな気分でもあった。

夏の光から、杣道は秋へと移ろう。
移ろいは優しいのである。







「団栗の転び弾ける杣の径」







杣の径を歩んで倦み疲れたら、このベンチで一休みし給え。
きっと優しく抱き竦めてくれる。

この杣という言葉、秋から冬へと美しい響きとなって人の耳元に囁きかけてくる。
その秋の声を聴くのが大好きである。



杣道が発する訳でもなかろうに・・・。
だがしかし、確かに声がする。



あるいは、地中深く穿孔する蝉の幼虫の悲鳴か。
あるいはまた、螻蛄の鳴声か。

否、ぼくの囁きにも似た悲鳴なのかもしれない。
杣の径で、何か声を聴いたら・・・。
野人の囁く悲鳴だと、そう思ってくれないだろうか。



傷ついた心に、山が振動する。
マグマが、ゆっくりと盛り上がってくるかもしれない・・・。

因みにであるけれど・・・。
いまはこの径、トレイル・ランのルートとして活用されている。
山野を駆け抜ける、スポーツである。
それだけに素朴な径のオマージュは、減殺されてしまっている。
けれど、杣の径の面影は確かである。


      荒 野人


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