エピローグ

終楽日に向かう日々を、新鮮な感動と限りない憧憬をもって綴る
四季それぞれの徒然の記。

密やかに咲くべし曼珠沙華

2016年09月20日 | ポエム
密やかに咲くべし、曼珠沙華。
そもそも彼岸花は、密やかに咲いて頂きたい。
墓域であるとか、精々畦道を彩る程度にあってほしい。

彼岸の花なのだから。



我が家の近辺の曼珠沙華は、植え込みの中からこっそりと顔を出すのが常である。
その、こっそりが良いのだ。

巾着田では曼珠沙華が売りの観光地となっているから、それで良い。
同じ埼玉の権現堂の曼珠沙華も、人集めの為の植栽であるから良い。

しかし、自然の曼珠沙華は密やかに限るのである。
人は、曼珠沙華に亡き人の思いを託す。
だから、彼岸花なのだ。







「躙り口まずは灯りの曼珠沙華」







密やかに、人知れず咲き朽ちていく。そんな生き様こそが麗しいではないか。





愛の妙薬・人知れぬ涙 ルチアーノ・パヴァロッテイ






このアリアは、ぼくが声楽を習い初めの頃に口ずさんだ。
ぼくはテノールではないけれど、好きであった。
もう一曲は、シモン・ボッカネグラのアリア「哀れなる父の胸は」が好きだった。

このアリアもまた、ぼくの声域では無かった。
バスのアリアである。



ぼくは、曼珠沙華に母を重ねつつ鑑賞する。
豊かだった母の愛情は、病を得てから徐々に薄れゆくのだった。
だがしかし、母から生まれたこの命は何物にも得難い。



母の分身でもある。
母の愛情が薄れてゆくのは、より深く母の内部に沈殿していったのかもしれない。



その証左に、ぼくは母の死をまだ受け止められない。
男は、最後まで母親コンプレックスを抱いて彼岸にゆくのかも知れない。
それでも良い。



     荒 野人
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