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【近ごろ都に流行るもの】母性への共感 ゆるぎない絆と生命力(産経新聞)

2010-02-20 06:47:10 | 日記
 子供への虐待事件が相次ぐ社会への、危機感の反動なのだろうか? 素朴な母子愛を表現した作品が共感を集めている。

                   ◇

 モノクロームの光と影に浮かびあがる裸のお母さんと赤ちゃんの姿は、究極の相思相愛だ。たくましい生命力と母子の絆(きずな)が圧倒的な存在感で迫る。高橋コレクション日比谷(東京都千代田区)で開かれている「至上ノ愛像」展(一般300円、4月4日まで)。アラーキーこと荒木経惟さんが撮影した母子ヌード写真が評判だ。

 「子供を産んだお母さんの誇らしさと、赤ちゃんの安心した表情がいい。子にとって母親は絶対の存在。特に男にとっては初めての異性でもあり愛情の原点。自分の母のことを思いだした」とは、見入っていた男性会社員(56)。

 「20日間で900人近く来場されています、40代以上の男性が圧倒的に多い」とスタッフの市川千鶴さん。「『これ以上ない幸せな顔だね』などと感想を告げて帰られる方が何人もいて、写真を前に涙を流す方など、熱い反応が目立ちます」と反響に驚いている。

 現代美術コレクターとして知られる精神科医・高橋龍太郎氏の所蔵品を展示するギャラリー。今回は荒木さんの写真20点と、「スフィンクス」シリーズで知られる舟越桂さんの彫刻2点を展示するコラボ展だ。

 母子の写真は特別展示。熊本市現代美術館の個展で地元の母子を一般公募で撮影したもの。荒木さんは「裸になった母と息子を見てこれが頂点だって確信した。母子像は幸せの、芸術の頂点」と話す。さらに、「舟越さんの神聖な彫刻と一緒ならアタシも照れずにコレを出したい。あからさまな幸福、家族がよりそう大切さ、母性の尊さを見せたいって思った。個人主義の時代だけど、人は一人じゃ幸せになれないんだから」。

 荒木さんは前立腺がんをわずらい、昨年末に生前遺作を発表したばかりだが、「輪廻(りんね)つうんじゃないけど、死からまた新しい生が始まる予感がある。母子像は復活の象徴だからね」。原始的な命のパワーを吹き込まれる展覧会だ。

                   ◇

 厚生労働省によると、昨年度の児童虐待相談対応件数は4万2664件と過去最高を記録。虐待者の6割以上が実母である。

 「親子の愛がゆるぎないものではなくなっている。現実の危機感の反映として、母性愛に満ちた作品にひかれたり、癒されたりする側面は大いにある」と指摘するのは、家族問題に詳しいジャーナリスト・石川結貴さん。

 「モンスターマザー」「暴走育児」などの著書で、崩壊する母親をルポルタージュしてきた石川さんは昨秋、短編小説集「母と子の絆」(洋泉社)を出版した。過激なルポとは対照的に、地味ながら親子の情愛に満ちた物語。いちずに母を慕う子、子のためにけなげに頑張る母を描いている。2人の男児を育てあげ、専業主婦から転身した石川さんは、「メソメソしたりもするけど、いざというときは踏ん張る。素朴でどこにでもいる母を書きたかった」という。

 ネット書店アマゾンの顧客レビューでは平均5つ星の高評価。石川さんのもとには過去に取材した母親から「読んで生まれ変わりたくなった」と、涙の改心宣言電話もあったそうだ。

 「今の母親は、他人の目や自分自身への自己愛に翻弄(ほんろう)されている。子は授かり物、そう思うだけで、子育てはシンプルでやさしくなるのに」と石川さん。

 母性は本能。その姿にひかれるのも生き物としての自然の本能なのだろう。社会が複雑化し母性がゆらぐ時代だからこそ、ゆるぎない母子愛の表出が力強くまぶしく見える。(重松明子)

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