平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

花燃ゆ 第14回「さらば青春」~ここはどういう場所なんですか? 人殺しの算段をする場所ですか?

2015年04月06日 | 大河ドラマ・時代劇
「事をなす時が来たということじゃ」
「討つべきは老中・間部詮勝」
 過激に走り、塾生たちを扇動する松陰(伊勢谷友介)。

 これに対して父・百合之助(長塚京三)は松陰を殴って、
「わしを殺してから行け。許す事はできん。寅次郎、父を殺せ!」

 兄・梅太郎(原田泰造)は、
「お前がおらんくなってくれたらと、そのようなことを兄に思わせるな!」

 文(井上真央)は、
「ここはどういう場所なんですか? 人殺しの算段をする場所ですか? 松下村塾は大事な学舎じゃないんですか?」

 小田村伊之助(大沢たかお)は、
「自分の言葉やおこないが弟子たちにどのような結果を及ぼすか分からん者は人の師たりえん」

 吉田稔麿(瀬戸康史)は、
「先生のやり方で世の中は変えられません。僕は先生の大義のために死ねません。先生の大義は大き過ぎます」

 それぞれの立場で松陰を諫める主人公たち。

 この中で、興味深いのが吉田稔麿だ。
 もともと稔麿は「江戸の人々の生活を見たい」と言って江戸に行った人物。
 稔麿の心の基盤にあるのは<理念>や<主義主張>ではなく、<生活>なのだ。
 だから「先生の大義は大き過ぎます」。

 一方、稔麿はこんなことも伊之助に言っていた。
 血判状を渡した時のことだ。
「松陰先生が言うことなら従います。松陰先生を裏切れません」
 これは完全な思考停止ですね。
 オウム真理教信者が「尊師の言うことなら従います」と言ってサリンを撒いたのと同じ。
 洗脳と言ってもいいかもしれない。
 自分で考えることをやめて、カリスマや指導者に行動を委ねることは、いかに怖ろしいことか。
 こんな稔麿に伊之助は問いかける。
「お前が尽くしているのは国ではなく、寅次郎ではないのか?」
 この問いかけに加えて、母の言葉(「藩の仕事をしている息子を誇りに思っている」)がさらに稔麿を揺さぶる。
 揺さぶられて自分のしようとしていることが正しいのか、と疑念を抱く稔麿。

 そうなんですよね。
 世の中の言説すべては思い込み。
 何が正しいかなんて誰にもわからないし、盲信は禁物。
 ちょっと待てよ、と足を止めて考えて見る方がいい。

 松陰たちが暗殺の謀議をしている時に、文が夜食の握り飯を持っているのも象徴的だ。
 <暗殺>と<握り飯>
 暗殺は死ぬこと、握り飯は生きること。
 暗殺は非日常、握り飯は日常。
 このあまりにも違い過ぎるふたつが松陰と文のギャップを表している。

 父・百合之助が、「寅次郎に楠木正成や赤穂浪士の話をして、命をかけて忠義を尽くせ、と教えたのはわしなんだよな」と考えるシーンも深い。
 おそらく百合之助は、松陰の過激主義を薄々感じ、その根っこがこんな所にあることを認識していたのだろう。
 まあ、松陰は平穏な時代に生まれていたら、きっと優秀な家臣になっていたんでしょうね。

 最後はこの松陰の言葉。
「死など怖れとっては事をなせません」
 以前も書きましたが、自分の命を軽んじる者は他人の命も軽んじるんですよね。
 命を捨てて、ということほど胡散臭く、愚かなことはない。
 小野為八(星田英利)が「地雷火があります」というのもね……。
 武器を持っていれば使いたくなるのが人の心情。

 今回は『安政の大獄』が描かれましたが、大きな力で押さえつければ、大きな力で反発してくるのが歴史の法則。
 今回も井伊直弼が力で押さえつけたから松陰たちも過激に反発した。
 だから現在の「イスラム国」なんかもどうなんだろう?
 仮に力で屈服させても、恨みが増幅し、さらに大きな反発が起きるだけだと思うんだけど……。

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2 コメント

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偶像破壊 (TEPO)
2015-04-06 12:11:57
吉田松陰がテロリストだったという事実は小島毅さんならずとも多少なりと歴史を知る人には周知のことですが、圧倒的大多数の人たち-確信犯的右派を除いて-は明治以後の「祭り上げ」が作り上げた松陰「先生」は「偉人」だというイメージを「何となく」受け入れている、というのが実情だろうと思います。
官邸や会長の思惑とは正反対に、今回は「テロリスト」松陰の正体がそうした大多数の人々の目にも露わになり、「偶像破壊」の効果がありました。
NHKの制作陣はいい仕事をしていると思います。

>「ここはどういう場所なんですか? 人殺しの算段をする場所ですか?」

文の「女性の視点」を「テロリストの視点」と全面的に対立させるという図式もまったくぶれていません。
今回は松陰からの「偉そうな」論点はぐらかしの余地もありませんでした。

>興味深いのが吉田稔麿だ。

おっしゃる通り、今回の実質的主人公は稔麿だったと思います。
江戸の実情についての知見、「小役人」としての実務(物事の通し方)についての知識、病気の母をはじめとする家族を養わなければならない現実。
こうしたところに基礎を置く自分自身の思考が「カリスマ的指導者への心酔」と「仲間への同調圧力」によって抑圧されていました。
そのような稔麿の心が「松陰」という偶像から解放されマインドコントロールから覚醒してゆくプロセスが丁寧に描かれていたと思います。
文が家族に松陰たちのテロ計画について告げたのも、覚醒した稔麿の心に触れたことが決定的でした。

また今回は久し振りに伊之助が良かったと思います。

>「お前が尽くしているのは国ではなく、寅次郎ではないのか?」

この指摘は稔麿が自分を取り戻す重要な契機。
自ら松下村塾廃止と松陰の野山獄再投獄を進言したのも、精一杯の友情にもとづく現実的な処置だったと思います。
松陰神社 (コウジ)
2015-04-07 08:14:48
TEPOさん

いつもありがとうございます。

>明治以後の「祭り上げ」

そうなんですよね。
吉田松陰は<松陰神社>という形で、神様になっているんですよね。
すべては明治の指導者が長州閥だったから。
まさに「勝てば官軍」ですよね。
ちなみに西郷隆盛は明治の世をつくった功臣でありながら、西南の役で明治政府に歯向かったため、<靖国神社>に祀られていない。
神様になるならないが、いかに政治的なものであるかがわかりますよね。

>松陰からの「偉そうな」論点はぐらかしの余地もありませんでした。

確かに今回、松陰からの反論はありませんでしたね。
明確な反論は「今は学問をしている時ではない」くらいでした。
人の必死な叫びで、論理が簡単に崩れてしまう良い例ですよね。

>「仲間への同調圧力」

ありがとうございます。
この視点を忘れていました。
「これは違うんじゃないかな~」と思っていながら、空気や仲間の目を気にして自分を捨ててしまう同調圧力。
稔麿の決断は立派ですよね。

それに日常に根ざした生活を送っていると、人は理想主義やイデオロギーで行動しないんですよね。
安倍首相は「積極的平和主義」「世界で輝く日本を取り戻す」とスローガンを掲げていますが、どうなんでしょうね。
小沢一郎さんの「国民の生活が第一」、管直人元首相の「最小不幸社会」というスローガンも悪くない気がします。

伊之助が野山獄に入れたのは、おっしゃるとおり松陰が外に出て過激な行動に走らないようにするためですよね。
これは<刑>というよりは、むしろ<友情>に近い。

伊之助は穏健派でブレーキの役割。
歴史はアクセルとブレーキで進行していくと思いますが、ブレーキがなくなってしまったのが太平洋戦争の時代。
また悪口になってしまいますが、安倍首相はマスコミの介入するなど、どうもブレーキを無くそうとしているように思えるんですよね。

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