平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

天地人 第11回「御館の乱」

2009年03月16日 | 大河ドラマ・時代劇
★リーダーの条件
 「私は所詮北条の子」「信じていた景勝に裏切られた」
 心が頑なになってしまった景虎(玉山鉄二)。
 華姫(相武紗季)の想いも通じない。
 仙桃院(高島礼子)は「心の氷を溶かそう」とするが……。

 人間こうなってしまうとつらいですね。
 他人を受け入れずひとりであがき谷底へ転がり落ちていく。
 本来信ずべき華姫を信じずに遠山を信じてしまう。
 景虎役の玉山鉄二さんは何かのインタビューで「景虎は自負心が強く純粋すぎた」と評していましたが、「信じた者に裏切られるのはもう沢山」というせりふは彼の銃粋さを現していますね。
 自分が強く美しいから他人もそうだと思ってしまう。
 他人は弱く、ある意味いい加減だということがわからない。
 物事は行き違いや偶然で進行していくことがわからない。

 一方、景勝(北村一輝)。
 自分の弱さを知っている人間。
 だから迷っている。
 「このいくさ、まことに義があるのか?わしが身を退けばこのいくさ終わらすことが出来るのではないか」と迷っている。
 景勝は景虎とは対照的なやわらかい心の持ち主ですよね。
 これでいいのか?自分は間違っていないのかと常に自問している。

 景勝と景虎、どちらがリーダーとしてふさわしいかは議論の分かれる所ですが、景虎の場合は独善に陥りやすい。
 ひとつ自分の決定が間違うと破滅していく。
 一方、景勝の様な人間には自分にアドバイスをくれる有能な他者が必要。
 景勝の場合は兼続(妻夫木聡)。
 今回も「義はあるのか?」という問いに答えたのは兼続だった。

 このリーダー論は昔からありますよね。
 「項羽と劉邦」
 独善的な項羽とまわりの意見を聞いた劉邦。
 最後に勝利したのは劉邦でしたが。

★鬼となる
 今回は2回この言葉が出て来ました。
 兼続と信長(吉川晃司)。
 信長は何と「鬼になること」を怖れていて初音(長澤まさみ)に諭されていた。
 これもリーダー論になりますが、時代を切り開いて何かを成し遂げるには「鬼となる」必要があるんですね。
 他人に恨まれようと自分を貫いていく。
 そう言えば「篤姫」でも大久保さんは鬼になって倒幕を行い明治の体制を作りましたね。
 これが他人や既存勢力を尊重する人間だと大きなことは成し遂げられない。平和な時代なら有能な人材ですが。
 しかし鬼になるというのはエネルギーのいること。
 他人の恨みも買うし汚いことにも手を染めなければならないから精神も消耗する。
 信長が「謙信に止めて欲しかった」と言ったのもそんな理由からかもしれません。

★言葉の弱さ
 <義>でひとつだった上杉家が跡目争いで分断。
 これは言葉というものがいかに弱いかという実例ですね。
 本来なら<義>という理想のもとひとつになるべきなのにそうならない。
 信長は「義は戯れ言」と今回も言いましたが、まさにその通りになった。
 言葉とか理想というものは弱いもの。いずれは変節していく。
 力や実利を信じたリアリスト信長の勝利と言った所でしょうか?

★雨
 今回は雨がうまく使われましたね。
 火縄銃を構える景虎軍。突然降り出す雨。
 ここで景虎は「自分に天の利がない」ことを覚るべきだった。
 あるいは覚っていたのでしょうがやけくそで反対のことをしてしまった。
 仙桃院の雨のとらえ方も面白かった。
 「お館さまが泣いている」
 人によって物事のとらえ方が違うんですね。

 その他、映像的には「毘」と「龍」の旗があがった所はカッコ良かった。
 我こそは謙信の正統であるという象徴。
 それに対する景虎のリアクションもいい。
 それにしても旗があがるとなぜ高揚するのでしょうか?
 われわれのDNAに刷り込まれているんですかね?

※追記
 前回の兼続の行動の理由。
 景勝を跡継ぎにするために「泥を被った」ということらしい。
 しかし知将としてはまだ成長が必要な様。
 結局、後処理が出来ず上杉を分断するいくさにしてしまったのだから。
 本丸を取って事をうまく収めてこそ知将。
 そういう<したたかさ>を兼続は今後持つのだろうか?



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2 コメント

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真の主役はお船? (TEPO)
2009-03-16 12:11:24
「(妙椿尼)-仙桃院-お船-兼続」という秘密を共有する絆があるので、お船と兼続とは目下「同志」となり、「恋愛パート」的にはいい雰囲気でした。
「義の知将」としての主役像を空中分解させかねない(既にしている?)ような「謙信遺言偽証説」などという危険な設定を敢えてとったのは、もしかしてこのためだったのでしょうか。
ただ、善良だが影の薄い信綱殿も、さすがに二人の間にある自分の与り知らぬ絆に気付き、複雑な表情でした。

>しかし知将としてはまだ成長が必要な様。

まさに仰るとおりです。ことによると、兼続はお船と結ばれてから俄然「知将」としての本領を発揮し出す(つまり本当の知将はお船)のかもしれません。「おんな太閤記」「利家とまつ」「功名が辻」の路線。
考えてみれば、子役時代からお船は与六よりはるかに主役らしい雰囲気がありました。絵に描いたようなお転婆ぶりは於一(篤姫)を彷彿させますし、侍女かよとの関係も菊本を想起させます。
夫婦の物語 (コウジ)
2009-03-17 11:35:43
TEPOさん

いつもありがとうございます。
なるほどそういう仕掛けですか。
この作品は景勝と兼続の主従ものかと思っておりましたが、お船との夫婦物語でもあったわけですね。
やはり夫婦の話を入れないと視聴率がとれないからでしょうか?
またこの作品、女性陣が強く男性陣がヘタレという批判が多いようですが、これも現代の時代の反映でしょうか?
恋愛パート、今後どの様に展開していくか楽しみですね。

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