平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

パンズ・ラビリンス 空想世界の救い

2009年12月27日 | 洋画
 ファンタジー作品の主人公たちは、つらく息苦しい現実を捨てて空想の別世界にいく。
 「ナルニア国物語」の主人公たちは戦争という暗い陰の下、疎開している。両親とも離ればなれ。
 「ハリー・ポッター」のハリーはおばさんの家で居心地が悪い。
 そんなつらい現実を捨てて、彼らは別世界に行くのだ。

 この作品「パンズ・ラビリンス」の主人公オフェリアも同じ。
 母が再婚して出会った新しい父親は反政府ゲリラと戦っていて、虫けらのように人を殺す冷酷な人間。
 その父親が求めているのは母親のお腹にいる赤ん坊で、オフェリアのことは全然愛していない。
 こんな現実の中でオフェリアは、自分が地底の魔法の国の王女であることを知らされる。
 現実に居場所がない彼女は魔法の王国に行くことを求める。
 唯一の味方であり、彼女を愛してくれる存在であった母親がお産で死んでしまってからは、より強く王国を求めるようになる。
 
 この物語は、オフェリアが地底の魔法の国に行くまでを描いていく。
 その過程でクリアしなければならない三つの試練があるのだが、興味深いのはそのラストだ。
 三つ目の試練は、母親の命と引き替えに産まれた弟を連れてくること。
 オフェリアは弟を魔法の国の入口まで連れてくることに成功するが、父親が追ってきて、オフェリアを銃で殺してしまう。
 死んでいくオフェリア。
 オフェリアは三つ目の試練の裏に隠されたある理由により、魔法の王国に行くことが出来てハッピーエンドになるのだが、ここで見ている我々は考えてしまう。
 <もしかしたら魔法の国というのはオフェリアが自分で創り出した空想の世界ではないか>と。
 つまり
 つらい現実から救われるためにオフェリアは空想で魔法の王国を創り出した。
 また彼女が戦った三つの試練も彼女が現実を忘れるために創り出した物語だった。

 この作品のラストをハッピーエンドにしたい方にはつらい見方かもしれないが、少し俯瞰して見ると、オフェリアは<父親に銃で撃たれて死んだだけ>という気もしてくる。
 オフェリアは魔法の王国に行った夢を見ながら死んでいった……という感じも否めない。

 ファンタジー作品において、現実と空想世界の対立は重要なテーマである。
 この作品は<人間はつらい現実から逃れるために空想世界を求める>というテーマを真正面から見据えている。
 スペイン映画ということで大きな話題にはならなかったようだが、この作品は名作。
 ファンタジーに興味のある方は必見の映画です。



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