平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

八重の桜 第14回「新しい日々へ」~世間並みなんぞならなくて結構。あなたはあなたであればよい!

2013年04月08日 | 大河ドラマ・時代劇
 尚之助(長谷川博己)は八重(綾瀬はるか)に叫ぶ。
「こんなつまらぬ事で一時でも鉄砲を手放すとはどういう了見です!?」
「私は鉄砲を撃つ女子をめとった。世間並みの奥方などはじめから望んでいない!」
「世間並みなんぞならなくて結構。あなたはあなたであればよい! 私の妻は他の誰でもない鉄砲の名人、八重さんだ」

 尚之助は八重に、世間並みであること=古い秩序に縛られることを望んでいないんですね。
 オンリーワンの八重であってほしいと思っている。
 これは当時としては、かなり新しい夫婦像。
 この夫婦像は、後半の蝦夷に旅立つ秋月悌次郎(北村有起哉)が八重たちに語った言葉に繋がる。
「新しい力は、ふたりのように古い秩序に縛られぬ者の中から生まれるとわしは信ずる」
 うまい構成ですね。
 前半の八重たち夫婦の描写が、こうして秋月の言葉で回収されている。
 そして世の中を作っていくのは、こうした古い秩序に縛られない新しい力なんですね。

 物語の構造で見ていくと、この作品には次のような対立がある。
 会津VS薩摩
 表面上は、幕府VS長州の図式で描かれているこの作品。
 だが背後にあるのは、会津と薩摩の静かな対立。
 すなわち、徳川という古い秩序にこだわる会津と、徳川中心ではない共和制で日本の舵取りをしていこうとする薩摩。
 あるいは、故郷の月を見ることを楽しみにしている会津と、岩倉具視(小堺一機)などと接触し暗躍している薩摩。
 薩摩は共和制を目指しているが、最終的には新しい政権で自分たちが中心になることを目指しているのであろう。
 この点、のどかに月を眺めて故郷を懐かしんでいる会津とは対照的だ。
 そして、これが後の明暗を分ける。
 覚馬(西島秀俊)も秋月も、佐久間象山や勝麟太郎に触れてそれなりに開明的であったが、置かれていた地位の問題もあり、西郷吉之助(吉川晃司)のように政治的には動けなかった。
 これが覚馬と秋月の限界であった。
 松平春嶽(村上弘明)が語った〈接ぎ木〉もどこか象徴的ですね。
 時代は古い木ではなく、〈接ぎ木〉となる存在を求めている。

 ディティールでは、故郷を思い、月を眺めている神保内蔵助(津嘉山正種)、修理(斎藤工)親子を気遣って、覚馬が手元の灯りを吹き消すシーンが良かった。
 覚馬は灯りがあっては月がよく見えないと考えたんでしょうね。
 さりげないが、実に行き届いた描写。
 気遣いが出来る覚馬の人柄も伝わってくる。
 こういう細かい描写が作品にリアリティを与えていくんでしょうね。


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6 コメント

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とっつぁまと神保家の人々 (TEPO)
2013-04-08 20:35:21
今回私には権八とっつぁまと神保家の人々が印象的でした。

まずは、浪人身分であることを揶揄されそうになった尚之助を庇って、権八が親戚連中を「飲み比べ」に誘い出したこと。
この義父の心遣いに対して、自分は酒に弱いくせに「御加勢つかまつる」と「飲み比べ」に参加した尚之助もよかったと思います。

次に、八重に対して「妻らしくしろ」と権八が注文をつける場面。
これはコメディタッチで佐久の言うとおり完全に「余計なお世話」だったのですが

>「世間並みなんぞならなくて結構。あなたはあなたであればよい! 私の妻は他の誰でもない鉄砲の名人、八重さんだ」

という尚之助の名台詞が出たのは、この「お節介」あればこそのことでした。
結婚生活の先輩で、八重が「模範」を求めようとした神保雪の口から出た「夫婦げんかをしてみたかった」「叱られてみたかった」という意外な言葉が八重に実現し、また、結果として尚之助が「夫として堂々と妻に指図する」という権八自身の希望も実現したわけでした。

他方、京都パートはだんだん辛くなってきました。

>故郷を思い、月を眺めている神保内蔵助、修理親子を気遣って、覚馬が手元の灯りを吹き消すシーンが良かった。

たしかに覚馬の気配りも良かったのですが、神保家の人々がしきりにクローズアップされているのが気になったので公式HP「登場人物」を見て納得しました。
これはいわゆる「フラグ」ですね。
会津での上述雪さんのエピソードもまた「フラグ」です。
神保家の人々の運命を知った上で改めてこれらの場面を見ると、涙を誘うものがあります。

私には今の「歴史ドキュメンタリー」タッチの淡々とした描写くらいが丁度よいように感じます。
ことによると、これは視聴者が「見るのが辛く」ならないための配慮なのではないか、とも考えられます。
さりげなく (コウジ)
2013-04-09 07:25:01
TEPOさん

いつもありがとうございます。
とっつぁまの飲み比べの心遣い、気がつきませんでした。
この作品はさりげない描写に気持ちを表現していることが多いですよね。

夫婦ゲンカについても。
確かにあのやりとりで、八重と尚之助は初めての夫婦ゲンカをしたわけですよね。
それでお互いの考えていることがわかったし、夫婦としての距離が縮まった。
TEPOさん、ご指摘のとおり、神保雪のせりふもその前フリになっているわけで、作劇として実に心憎い。

神保家の人々の運命がどうなっていくのか楽しみになって来ました。
Unknown (高木一優)
2013-04-09 11:19:06
今回は会津藩内での対立も見え隠れしてますね
あくまで幕府の意向に従おうとする容保
国許での西郷頼母たちの窮状、てして蝦夷へ向かう秋月が吐露した「頭のやわらかい国」という言葉に込められた批判
会津内での不協和音が現れてくるのでしょう
次回はいよいよ薩長同盟ですね
一枚岩 (コウジ)
2013-04-09 20:23:14
高木一優さん

いつもありがとうございます。
確かに容保の方針に違和感を感じている家臣たちの描写がありましたね。
こんなに苦労しているのに誰にも理解されない理不尽な扱いしか受けないのなら、京都守護職を辞めるべきだという意見。
ただ私見ですが、会津はこうした意見の対立はあっても最終的には一枚岩であってほしいですね。
決して分裂などしてほしくない。
今後どう描かれるか楽しみです。
おひさしぶりです。 (ロギー)
2013-04-10 20:13:23
ありのままの八重を受け入れる尚之助は凄いですね。
今でこそ当たり前ですが、当時ではありえないでしょうね。
しかし、それをやった尚之助の内に秘めた想いは本当に凄いと思います。

しかし、この八重夫婦や会津の平和を容保はぶっ壊すんですよね。
正直言って、私はこの話で松平容保はマジで嫌いです。
綾野剛氏は嫌いじゃないですがね。
藩を近代化する重要性に気づいてるのに意味もない掟に縛られ領民に無理を強いらせる。
秋月のような優秀な人材を左遷したり、覚馬を遊ばせるはっきりいって駄目でしょう。
あの後白河が名君に見えます(あの人は、何だかんだ言っても摂関家や平家や源氏相手に承久の乱まで朝廷の力をある程度温存出来たんですから、たいしたものです)
私が言えるのは為政者ってのは結果を出して家臣と領民の保護が出来れば後は何をやってもいいんですよ。
それがしない容保は藩主失格です。
ちっと過激でしたね。

でも、私の考えってのは当時では非常に異端なんでしょうね。
歴史の評価 (コウジ)
2013-04-11 08:15:27
ロギーさん

おひさしぶりです。
コメントありがとうございます。

史実や歴史上の人物の評価は、個人の立場、価値観に拠って違ってくるんでしょうね。
ロギーさんのような容保評価、後白河法皇評価もあるし、そうでない評価もある。
だから歴史は面白いですし、我々は歴史学者ではないので、そこらへんは自由に楽しんで、自分なりに学べばいいんですよね。

ぼくも容保はもう少し現実を見極めて、臨機応変に対応すべきだったと思います。
ひとつの信念に殉じることは、それはそれで崇高で立派なことなのですが、それで悲劇が訪れるというのはどうも承伏しがたい。
白か黒でなく、灰色でうまく立ちまわって、下の者を出来る限り悲劇に巻き込まないのが政治家だと思いますし。

もっともロギーさんも書いていらっしゃるとおり、こうした見方はその後の会津の歴史を知っているわれわれだから言えることで、当時の容保が予見することは難しかったのかもしれませんね。

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