乱愚雑記帳

わが鼓動とともに

機械都市に生きる

2017年07月15日 | 日記・エッセイ・コラム

  都市は欲望の磁場を核としたブラックホールのようである。都市はまた統合と解体、日常から非日常へを反復する快楽空間に彩られている。水平から垂直に膨張を遂げるメタボリックな東京は空中都市と地下都市をめざし限りなく変貌し、衛星カメラで見る東京は人間生息の凄まじい密度を感じる。生命誕生から連綿と繋がる遺伝子を内包するこの身体も宇宙空間からは地球という球体としか見えない。この微小の生命体は自意識と言葉と自滅的兵器を有し、規律的日常と逸脱した殺戮の恐怖を繰り返す極めて分裂した観念に押し潰された生命体のようである。この身体たちは自然と対峙しながら、神を崇めつつ科学文明を獲得する。象徴記号と儀式化された多様な交換行為と過剰なる自我の狂気は極めて身勝手な合理主義に裏付けられた資本主義帝国が誕生させ、大量殺戮兵器としての軍事産業が始動する。領土争奪を意図する民族主義を旗印に狂気の銃弾が炸裂する。近代戦争へ駆り立てられた兵士たちの屍が遠く地平線まで連なる。幾度かの殺戮と果てに構築された二十世紀資本主義時代の扉が開く。繰り返される破壊と創造の谷間で欲望の巨大都市が構築された。ニューヨークのエンパンア・ステートビルは二十世紀の記念碑としてマンハッタンにそびえ建つ。驚異的科学技術の進化から多種多様な機械群が誕生し、膨大な資本蓄積は大量生産、大量消費を拡大し、政治経済の中央支配は都市圏への急激な人口増加と自然破壊を経て電子機械都市文明を構築していく。フォン・ノイマンのプログラム内蔵型コンピュータの発明と核開発は人類史上未曾有の悲劇と利便性の文明の二項対立を生む。戦争は人類の血を吸いながら大量殺戮を正当化し、皮肉にも科学文明の進化を際立てる。資本主義の波動は社会主義を巻き込みながら膨張し世界の歴史的地域文化、各民族が内包する伝統文化を衰退させ「幸福幻想」に触発され均一的文化に変換される。カフカは身体を均質化する管理社会を予兆し、チャップリンの映画「モダン・タイムス」のオートマチックな機械時代の到来をアイロニーとコミックで描いた未来社会は新たなる監視社会として具現化された。ベンサムが考案した全展望監視システム「パノプティコン」は電子化され、身体のコード化と監視は身体内部へ侵蝕してゆく。宇宙からは軍事衛星が地上を顕微鏡のように監視し、世界に張り巡らされた電子情報網は時間と空間概念を変える。仮想空間で人類の欲望と電子マネーが飛び交い、身体は機械のように分節され機械のように接合されるのだ。二十世紀初頭、未来派のマリネティが機械を賛美し夢想した都市とは?詩人、萩原朔太郎が愛した憂いある安らぎの都市は既にない。現代の物質主義、フェティシズムの氾濫と分裂症。希薄な存在の揺らぎのなかで危うい人類の時間は自己喪失の座標を漂う。欲望機械都市はすべてを呑み込みながら光り輝く。新たな都市の闇が身体を包み込む。巨大都市はガラスの塔に覆われ光と闇が織りなす巧妙な均衡を失いつつある。欲望が重層する時空を快楽的臭気と轟音を残しフェラーリが都市を疾走する。機械が時空を切り裂く。過剰な欲望の生きものは無限と有限、意識と無意識、内部と外部という概念に翻弄され、欲望機械都市で機械を享受し従属されながら存在の不安に怯えている。本能を隠蔽する知的生物は快楽の保護色に身を染めながら壊れた機械のように機械空間に身体を横たえる。既に時代遅れのコンピュータから漏れてくる冷却ファンの音を気にしながら使い古された言葉を電子回路に入力し、アンドロイドのように溜め息をつくのだ。言葉は見えない存在を、言語ゲーム化した自己言及を反復させながら救いの言葉を追い求める。母体である地球を蝕む人類。愛という言葉がエゴイスティックな自己快楽の地平におぼろげに浮遊している。人は次々に算定される概念に呪縛、拘束されながらコンピュータが新たな神々の物語を語り始める。電子回路で構築されたエデンの園に禁断の実が妖しく光り輝く。欲望機械都市はキメラ的異性物として肥大し、人々は仮想と現実を行き交う。壊れた本能の生きものは高層ビルで気圧の変動に恍惚を感じながら垂直に上昇し、機械と同質化していく快楽空間で人は分裂を加速するのだ。ガラスの塔に反射する太陽の光が私の眼球をナイフのように突き刺してくる。言説から言説へ言語ゲームに終章はない。パラドックスに満ちた資本主義。巨大コンピュータが支配する新たなテクノクラートや大企業による大衆への欲望装置は植物栽培のようにコントロールされ、麦のように刈り取られる。主体なき身体が外界へ向け牙を向け無差別殺人をもって終結する電子産業時代の日常の狂気。都市はテロリズムと不条理な死に満ちあふれた戦闘状態にある。外界への虚無的視線、無差別殺人は個人的精神の欠陥はもとより殺人衝動を生み出す社会システムの機能不全でもある。ショー・ウィンドーの気怠いマネキンたち、横たえることを拒絶した分割された安らぎなき公園のベンチ。都市整備は汚い物を排除しながらフラットな快適性へ変換を遂げる。都市の景観から温もりあるマチエールが喪失していくのを感じる。何処もかしこもツルンと滑るような都市空間で精霊の神たちは何処へ旅立ったのであろうか。今宵もまた欲望機械都市で夢の続きを見る。漆黒の宇宙に青く輝く星の上で人類の時間を生きる。三十八億年も連なる遺伝子を内包する身体は電子機械に囲まれ、膨大な情報の安楽椅子に腰掛けながら世界を傍観し快楽を享受している。二十世紀初頭、ダダイズムのトリスタン・ツアラが「誰もが機械から逃れることはできない。機械だけが人を宿命から逃れさせてくれるのだ」と述べたのを思い起こす。若き日に読んだSF小説レイ・ブラッドベリの徹底した国家検閲管理社会を描いた「華氏451度」や、ロバート・シルヴァーバーグが描いたアンドロイドを労働力とする独裁体制のもとで遺伝子記号を教典とする「ガラスの塔」は現実味を増す。この著しく進化を遂げた脳細胞は機械を愛し、機械の前では限りなくマゾヒスティックになる生き物であり、自ら機械を生み機械に従属される機械でもあるのだ。反復する死の概念と自己存在の不安を閉じ込めようと半ば絶望と知的快感のなかで言語空間に意識をゆだね主体の再構成を試みては絶望する。人は限りなく語らずにはいられない生命体として自意識の算定を限りなく繰り返し、宇宙という無限システムに漂っている。ONOFFに過剰反応する身体。見えない視線にさらされながら欲望機械都市を彷徨う。閉ざされた鉄とガラスの狭間で満たされぬエロス。狂乱と陶酔のディオニソス的祝祭都市は欲望のマネーゲームの果てに世界の金融市場が大きく揺れ動き金融工学の破綻の影が世界を覆う。北京では膨大なドルや元紙幣が前世紀的軍事パレードに変換された。繰り返される地域紛争とジェノサイド(集団殺戮)そしてテロリズム。人類はまだこの程度の知的レベルなのであろうか。人類はいまだ戦闘状態にある。来るべき世界の光と影が巨大なガラス壁に反射している。都市は人類進化の逸脱した欲望空間であり文明の象徴記号でもある。都市はすべての古代都市が滅びたように崩壊への宿命を内包しているのではないだろうか。すべては人間の果てしない欲望と抑制不可能な自然の力に依存されている。

O.Coleman"Lonely woman" 都市に共鳴する人間の叫びを!   

C.Mingus"Pithecanthropus " ピテカントロプスの叫びを!

Heavy hand and Heavy foot. Movement Housing in a Megalopolis.

Photograph by HIRAO ENDO

ジャンル:
ウェブログ
コメント   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« あゝこの世界で | トップ | 光の凶器・壊れた地球 »
最近の画像もっと見る

コメントを投稿


コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。

あわせて読む

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL