学校教育における「居場所」論再考⑦ ~高等学校の中途退学・不登校生徒の現状~

2017-02-11 11:52:31 | 日記
第1章 高等学校の中途退学・不登校生徒の現状

※第1章の文章を整理するための資料については、この文章が10年ほど前に書き上げた論稿であるため、古いデータを採用しています。しかし、かつての学校状況を捉えていくために必要なデータであったこと、そのデータを通して何がわかるかを整理することなどが目的であったため、その当時の状況を考察するには必要な資料でした。あらかじめその点をご理解いただいたうえで、お読みいただければ幸いに存じます。

第1節 全国高等学校中途退学率・不登校生徒率

 文部科学省は「平成16年度生徒指導上の諸問題の現状について(概要)」の中で、公・私立高等学校における中途退学者数は合計77897人(前年度81,799人)で、年度当初の在籍数に占める割合は2.1%、中退者数を公・私立別にみると、公立では53,261人(中退率2%)、私立は246,36人(中退率2.3%)、という調査結果を出した。中退理由は①「学校生活・学業不適応」が38.4%、②「進路変更」が34.3%、③「学業不振」が6.5%、の順である。①は「もともと高校生活に熱意がない」、②は「就職を希望」「別の高校への入学を希望」の割合が高かった。中退率を学年別でみると、第1学年の中退率の3.5%が最も高く、第2学年(2%)、第3学年(0.6%)、と続き、第1学年の占める割合が52.3%であった。
 国・公・私立高等学校における不登校生徒数は67,500人で、在籍者に占める割合は1.82%、国立で31人、公立で49860人、私立で17,609人である。不登校生徒のうち中途退学に至った者は24,725人、原級留置となった者は7,551人である。不登校生徒のうち、中学校時に長期欠席の経験があると高等学校で把握している者は142,45人で、不登校生徒数全体に占める割合は21.1%である。不登校となった直接のきっかけは①「学校生活に起因」と「本人の問題に起因」、が約40%を占め、残りは「家庭生活に起因」となる。不登校状態が継続している理由は①「無気力」が最も多く、②「不安などの情緒的混乱」、「複合」の順。

※ここで注意しなければいけないことは、あくまで「高等学校で把握している」という部分である。「把握」していない数を換算すれば率は上昇するということである。したがって、調査と実態との齟齬があると推測できるだろう。
 次節では、ここ10年ほど前(現在では20年ほど前)の東京都教育委員会・東京都教育庁の「中途退学者の調査」のデータをもとに、東京都立高校・東京都私立高校の中途退学率の結果を整理し概観していく中で、中途退学率の推移とその変化を整理する。

第2節 都立高校(全日制・定時制)の中途退学率

 東京都教育委員会は「平成12年度都立高等学校中途退学者等の調査結果」の中で、都立高校の中途退学者数などの状況を以下のように取りまとめた(全日制高校207校、定時制高校101校の生徒計約15万5000名を対象)。全日制課程における1年間の退学者数は4,384名。全生徒数に占める割合は3.1%。前年度比146名の減少。
 学年別の退学率は1学年が最も多い(5.7%)。学年があがるごとに減少傾向。学科別退学者数は普通科2,406名、専門学科1,968名、総合学科10名。前年度より普通科は0.1減少、総合学科が0.2%増加。
 一方、定時制課程の退学者数は2,319名。前年度比62名増加。退学率は17.2%と全日制を上回った。学年別の退学率は1学年が全日制と同様に多い(34.8%)。
 退学理由は、全日制では①進路変更(38.7%)、②学校生活・学業不適応(36.4%)、③学業不振(14.3%)。定時制では①学校生活・学業不適応、②進路変更、③家庭の事情、の順。
 中途退学後の進路状況は全日制・定時制ともに「就職等」が最も多かった。また、「他校への再入学」「受験準備」(学業分野での再トライアル組)は全日制22.8%、定時制13.0%。
 
第3節 私立高校の中途退学率

 東京都教育庁の「平成10年度全日制都立高校中途退学者等の調査」によると、退学率は3.6%(普通科と専門学科)、1校あたり平均退学者数は25.1名となり、私学は都立の約2分の1になったことがわかった。私立高校を選択した理由は、①学習指導の充実・生活指導がきちんとしている、②進学実績、などが挙げられている。私立高校の退学理由は①学校生活・学業不適応(1,498名)、②進路変更(1,254名)、③家庭の事情(337名)と続き、不況による私学における生徒の家庭経済の悪化をうかがわせた。過去5年の推移でみると、2002年度にはっきりと中退率が減少。普通科は2%、専門学科は5%、定時制は16パーセントまで低下。

 東京都教育庁は、2002年度に急速に改善する兆しがみえた理由を以下に整理している。
①学校の特色化。多様化をめざす一連の都立高校改革の効果があらわれはじめた。
②都立高校に対するプレッシャーの要素。
 中退率の改善により積極的に寄与した要因は「学校・学業不適応」「病気・けが・死亡」「経済的理由」で占有率が上昇、「進路変更」の占有率が4割以上減少。東京都教育庁によれば、「進路変更」とは「在籍する高校以外の進路を積極的に希望し、退学した者」である。「在籍する高校以外の進路」とは、「専修学校や通信制高校のサポート校」、「就職」である。「専修学校や通信制のサポート校」が減少した理由を都は「あくまで推測の域を出ない」と前置きをしたうえで以下のように分析している。
①「授業料の安い都立高校」を退学してまで積極的に別の進路にしたいという気持ちが急速になえたのではないか。
②長引く景気低迷が都立高校の中退率を引き下げた。
③しかし、不登校関連は景気低迷等の経済的理由に連動していない。

 ここ10年ほど前(現在は20年ほど前)のデータを概観してきたが、東京都庁の調査分析では中途退学者率の「急速の改善」の理由として「多様化をめざす一連の都立高校改革の効果」をあげている。しかし、この分析には半ば当たっていて、半ばカラクリがあるのではないかとも思う。そのカラクリとは、改革による学校システムが学年制から単位制に変更され、単位を取得しなくても原級留置が逃れられるシステムになったということ、そのことによって在籍自体が延命できたという事情もあるのかもしれない。つまり、システム変更による延命された生徒数の実態は以上のデータからは捉えにくい。したがって、次に必要なことは、改革された高校の個別実態を概観していくことである。次章ではその点について考察する。

続く

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