Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

藤岡幸夫/東京シティ・フィル

2017年07月23日 | 音楽
 藤岡幸夫が客演指揮する東京シティ・フィルへ。わたしの友人は同じ時間に上岡敏之/新日本フィルへ行き、また別の会場ではヤクブ・フルシャ/都響もある。1時間遅れで川崎ではジョナサン・ノット/東響があるという盛況ぶり。

 藤岡幸夫/東京シティ・フィルの1曲目は、ヘンリー・パーセルの「シャコンヌ」。ベンジャミン・ブリテンが弦楽合奏用に編曲したもの。古風な美しい曲だ。原曲は4台のヴィオールのための曲(プログラム・ノートより)。ブリテンがどんな機会に編曲したのか、オールドバラ音楽祭で演奏するためだったのか‥と思いながら聴いた。

 2曲目はショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1番。ヴァイオリン独奏は木嶋真優。木嶋真優はこの曲を弾いて2016年第1回上海アイザック・スターン国際ヴァイオリン・コンクールで優勝したとのこと。

 緩―急―緩―急の4楽章からなるその第1楽章が始まると、木嶋真優のじっくりと落着いた存在感のある演奏に惹きこまれた。第2楽章はもう少し凄味があってもよいような気がしたが、第3楽章でまたじっくりと音楽の内実を見つめるような演奏になり、後半の長大なカデンツァには息を飲んだ。第4楽章では第2楽章の不満を吹き飛ばすようなスリリングな演奏が展開した。

 木嶋真優は2012年にケルン音楽大学を首席で卒業し、2015年には同大学院を「満場一致の首席で卒業」した。清楚な感じのする好感度の高い人。今後本格的な演奏家に育ってほしいと思う。

 3曲目はエルガーの交響曲第1番。久しぶりに聴いたせいか、第1楽章では細部にいろいろなエピソードが出てくることが、思いがけない発見だった。ちょうど山道を歩いていて、お花畑に出会うような感じだった。

 久しぶりに聴いたせいか、と書いてしまったが、それよりも、藤岡幸夫がこの曲を熟知し、東京シティ・フィルとニュアンス豊かな演奏を展開したことの方が大事だった。それは第2楽章以下も続き、確信に満ちた名演となった。

 わたしはとくに第3楽章アダージョの最後の部分に溜息が出る想いがした。終わるようで終わらない、まるで終わるのを惜しむような、エルガー特有の終わり方。イギリスの田園に一人たたずみ、遠くの山並みに日が沈むのを最後まで見ているような音楽。ヴァイオリン協奏曲の第2楽章などもそうだが、エルガーにしか書けない音楽だ。演奏も緊張感が途切れなかった。
(2017.7.22.東京オペラシティ)

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