Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ブラビンズ/都響

2017年05月17日 | 音楽
 マーティン・ブラビンズが都響を振ったBプロ定期。じつに興味をそそるプログラムが組まれた。

 1曲目はジョージ・バターワース(1885‐1916)の「青柳の堤」。演奏時間6分(プログラムの表記による)の小品だ。演奏が始まると、目の前にイギリスの美しい田園風景が広がるような気がした。弦の音にはふくらみがあり、またオーボエとフルートのソロには情感がこもっていた。

 2曲目はマイケル・ティペット(1905‐98)の「ピアノ協奏曲」。ピアノ独奏はスティーヴン・オズボーン。3楽章からなる堂々たるピアノ協奏曲だ。ピアノが高音を駆け巡り、チェレスタが加わるオーケストラも高音の比重が高い。リズムが精妙に書かれている。全3楽章を通じて飽きることがない。

 第1楽章の最後はピアノのカデンツァになるが、ピアノの裏にチェレスタが入ることが面白い。同属楽器のチェレスタがピアノを補完し、立体的な音響を作る。独奏楽器以外の楽器が参加するカデンツァというと、さしあたりベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲のシュニトケ版カデンツァを思い出すが、他にどんな例があっただろう。

 第1楽章では変拍子が続き、また第3楽章ではシンコペーションが満載だが、そういう面白さを満喫できる演奏だった。オーケストラにはさらにリズムの切れ味をよくする余地があったかもしれないが、それは(オーケストラには負担の大きい当日のプログラムにかんがみ)いうべきではないと自制する。

 本作は1955年の作品だが、ティペットというと、第二次世界大戦中に書かれたオラトリオ「われらの時代の子」を思い出す。あの作品を初めて聴いたときには衝撃が走った。一方、本作はいかにも戦後を感じさせる明るさがあった。

 3曲目はレイフ・ヴォーン・ウィリアムズ(1872‐1958)の「ロンドン交響曲」(交響曲第2番)の1920年版。これは名演だった。指揮者とオーケストラとがお互いの能力を信頼し、曲への共感をともにして、心を一つにした演奏を展開した。オーケストラには粗さも硬さもなく、よく練られたアンサンブルで、濃やかな陰影を湛えていた。

 ブラビンズはいつの間にか、白いあごひげを蓄え、お腹に貫禄がついて、巨匠風の風貌になっていた。イングリッシュ・ナショナル・オペラ(ENO)の音楽監督を務めている自信から来るのかもしれない。演奏もその風貌にふさわしかった。
(2017.5.16.東京オペラシティ)
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