Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ボッティチェリ展

2016年02月11日 | 美術
 最近は毎年のようにボッティチェリを見る機会があるようだ。なんと贅沢なことかと思う。今ひらかれているボッティチェリ展は、日伊国交樹立150周年記念と銘打たれているだけあって、一段と力の入った内容だ。

 たとえば「ラーマ家の東方三博士の礼拝」(フィレンツェ、ウフィツィ美術館)。ボッティチェリが自身を描きこんだことで知られる作品。その実物を見ると、なんて華やぎのある作品だろうと思った。その華やぎはどこから来るのだろうと、じっと眺めた。

 聖母子を頂点とするピラミッド型の構図だが、色の使い方が、ピラミッドの3点を赤と青の組み合わせで押さえ、上から斜め下に降りる2辺の線上に黒を配し、底辺は重しのようにオレンジ色で支えている。画面全体のこのようなシンメトリックな配色が、その華やぎを醸し出しているのではないだろうかと思った。

 本展でもっとも惹かれた作品は「聖母子(書物の聖母)」(ミラノ、ポルディ・ペッツォーリ美術館)だ。聖母が幼子イエスを抱えて時祷書を読んでいる。イエスは聖母を見上げている。聖母はほとんど目を閉じて、メランコリーに沈んでいる。金箔とラビスラズリ(青)が美しい作品だ。

 どんな画家でも、気合の入った作品と、あまり気が乗っていない作品とがあるが、本作はボッティチェリの中でも、とくに気合が入っていると感じられた。快い緊張感が漂う。時祷書を置くクッションの房まで克明に描かれている。どんなディテールも動かすことができない完璧な作品だ。

 わたしはボッティチェリの肖像画も好きなのだが、本展にも何点か来ている。女性では「美しきシモネッタの肖像」(丸紅株式会社、日本にある唯一のボッティチェリ作品)の‘理想的な美’もよいが、今回はもっと地味な「女性の肖像(美しきシモネッタ)」(フィレンツェ、パラティーナ美術館)に惹かれた。ボッティチェリにしては珍しく茶褐色のモノトーンの作品。モデルの女性の落ち着いた内面性が感じられる。

 こんな調子で書いていったら切りがないので、このへんで止めるが、気に入った作品は他にもあったことを書き添えておきたい。

 本展の特徴は、ボッティチェリを中心として、ボッティチェリの師匠であったフィリッポ・リッピと、その子供でボッティチェリに師事したフィリッピーノ・リッピを前後に置いて、一つの流れを生んだことだ。興味深い構成だと思う。
(2016.2.10.東京都美術館)

上記の各作品の画像(本展のHP)

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