Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

フェドセーエフ/N響

2015年11月24日 | 音楽
 フェドセーエフが振ったN響のCプロ。先月開かれたショパン・コンクールの優勝者チョ・ソンジンが出演するとあってか、チケットは完売だった。

 チョ・ソンジンは1994年生まれの韓国人。N響とはすでに2度共演しているそうだが、わたしは初めて。曲目はショパン・コンクールで弾いたピアノ協奏曲第1番。もうすっかり完成の域に達した演奏だ。 すっかり‘でき上がった’演奏。まるでCDを聴いているみたいだ。乗り心地のいい高級乗用車に乗っているような、あるいは座り心地のいいソファーに座っているような、そんな感覚で聴いていられる。

 当年とって21歳のこのピアニストが、今後どうやって人生を過ごすのか、いや、どういう演奏家としての軌跡をたどるのかと、そんなことを考えてしまった。

 アンコールに「英雄ポロネーズ」が演奏された。オーケストラが沈黙する中、ピアノ1台でこの巨大なホールを満たさなければならないという気負いが感じられて、じつのところ、この演奏の方が興味深かった。

 わたしは、演奏前は、フェドセーエフがリスク要因だと思っていた。というのは、4月のN響への客演ではテンポが異常に遅かったからだ。今回のプロフィールで当時は大病を患った後だったことを知ったが、ともかく普通の状態ではなかった。今回はどうかと心配していたのだが、体調はよさそうだった。テンポも普通だった。

 でも、ソリストがいるコンチェルトと、プログラム後半のオーケストラ曲とでは条件が異なるので、予断は許されないと思ったが、幸いにも好調さが持続した。

 曲目は、グラズノフのバレエ音楽「四季」から「秋」、ハチャトゥリヤンのバレエ組曲「ガイーヌ」からの抜粋(4曲)そしてチャイコフスキーの祝典序曲「1812年」。ロシア音楽のポピュラー・コンサートのような趣向だ。最近はこういうコンサートを聴く機会がなかったので、どの曲も楽しんだ。

 「ガイーヌ」の中の「レズギンカ舞曲」は、小太鼓がリムショット(小太鼓の金属製の縁をバチで叩く奏法)を盛んに繰り出していた。また「1812年」では大砲の代わりの大太鼓が、文字通り大砲を撃つように轟いた。

 プログラム・ノートを読んで知ったのだが、「ガイーヌ」の中の「剣の舞」はクルド人の出陣の踊りだそうだ。今もなお苦難の渦中にいるクルド人だが、そのクルド人がこのバレエに出てくるとは知らなかった。
(2015.11.21.NHKホール)

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