縁側でちょっと一杯

縁側でのんびりとくつろぐ贅沢な時間。
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経済、環境、旅、グルメ、そして芸術。

函館・青森のご当地グルメ(後編)

2017-01-02 19:22:25 | もう一度行きたい
 なんか風情ないな~。
 正直、これが北海道新幹線で青函トンネルを渡った僕の印象である。

 もっとも比較の対象は、ウン十年前、年末に上野発の夜行列車で青函連絡船に乗り帰省した学生時代の思い出であるが。
 ~ 寝台車に乗るお金がなく椅子席に座り、隙間風の入る窓から雪の降る外をぼんやり眺める。周りには、出稼ぎ帰りだろうか、ワンカップのお酒を片手にスルメをかじり、酒盛りをするおじさん達。東北訛りがどこか懐かしく心地よい。 ~
 う~ん、いいね、昭和だね、演歌だね、そう『津軽海峡冬景色』の世界だ。

 これに対し北海道新幹線は快適そのもの。かつての「八甲田」や「十和田」といった急行列車と違い、隙間風は入らないし、座席も倒せる(当たり前か・・・)。おまけにヘッドレストや電源コンセントまである。要は新幹線の新しい車両なのである。
 函館から青森までわずか1時間強。トンネルなので外の景色を楽しむことはできない。中国語は聞こえたが、東北訛りを聞くことはできなかった。それに真新しくきれいな車両はワンカップの雰囲気ではなかった。便利になったものの、少し寂しい気がした。

 実は、同じような印象を、楽しみにしていた“青森生姜味噌おでん”でも感じた。

 “青森生姜味噌おでん”は、凍てつく寒さの中、青函連絡船を待つ人の体を少しでも温めてあげたいと思った屋台のおかみさんが、おでんの味噌だれに生姜のすりおろしを入れたのが始まりだそうだ。それが青森市一帯に広まり、今では“生姜味噌おでん”は青森市の立派な観光資源の一つにまでなっている。
 が、どうだろう。お店で食べると、確かに生姜の味はするが、それ以外は普通のおでんである。“たれ”にこだわるよりは“だし”にこだわってくれた方がいい気がしないでもない。やはり“青森生姜味噌おでん”は、寒風吹きすさむ中、屋台で「んだ、生姜さぁ入ってから、あったまるだべ~」(注:方言は僕の想像)とか言われながら食べるからこそ美味しいのではないだろうか。おかみさんのやさしさで身も心も温まるのではないだろうか。

 暖房のきいたお店の中で食べた“青森生姜味噌おでん”は、ただの生姜味のおでんだった。食事の印象は、何を食べたかだけでなく、誰と一緒か、暑さ・寒さや天気、お店の雰囲気等々、食べた時の状況・シチュエーションにも大きく影響される。実際、あのとき朝早く青森駅に着いた僕は、連絡船に乗る前に冷えた体を温めたい、何か熱いものを食べたいと思った。あたりを見渡すと、6時過ぎだったので立ち食いそば屋しか開いていない。しかし、そこで食べたそばで、ただのかけそばだったと思うが、冷えた体が生き返ったことを覚えている。
 それがそばでなく、生姜味噌おでんなら良かった。それこそ“人生最高のおでん”になったかもしれない。青函連絡船なき今、かなわぬ夢である。
コメント
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