
温泉大国ニッポン。
古くからの湯治場もまだまだ各地に多く残る。新しくオサレな今時サービスを提供してくれる温泉宿に目移りしてしまう現代だが、まだ昭和風情を色濃く残す湯治場も、一時の賑わいは無いが当時の味わいを静かに楽しめる所もある。そんな湯治場を訪ねるのが好きだったりもする。
酸ケ湯や玉川温泉などの有名どころはそれなりにいいのだが、いつでも人が多いのが難点である。
今年の正月に訪れた台温泉みたいな、過去に賑わったが、今は静かに営業中的な湯治場が青森にもたくさんあるみたい。そんな中で、黒石温泉郷という東京人にはまるで馴染みのない土地をいつからか気になり行ってみたいと思うようになってきた。雨降りでテン泊も諦めた今日がチャンスだ!
結構な雨足の箒場を後にして、霧の中の八甲田山周遊ルートを半時計回りに走りロープウエイ駅まで来た。いつもは2〜3m位の積雪があるのですごく新鮮な景色。こんなに広いんだぁ、だ。
いつもお世話になるロッヂなども雪ではなくて木々の中に佇む様子はこれまた新鮮。
R394で城ヶ倉大橋を渡り、ただただ山を下る。下りきったR102の交差点周辺に黒石温泉郷がある。黒石市の奥座敷の浅瀬石川沿いに長寿温泉、温湯温泉、落合温泉、板留温泉と小さな温泉地が連なる。更に山奥にランプの宿で有名な青荷温泉があるが私の旅の主旨とは関係ないので行くつもりは全くない。
その中でも素泊まりの湯治宿が並ぶのが温湯温泉で、独特な雰囲気らしい。
国道から温泉街に入る所には、早速昭和風情な歓迎アーチで迎えてくれる。
すると共同浴場を囲むように古くさい宿舎が立ち並び、まさに湯治場色な雰囲気である。だが、どこに泊ればいいのか悩む。
温泉場に一軒の商店があり、そこで聞いてみる。
「このあたりの宿でお勧めってありますか?安いのでいいんですが」と聞いてみる
う〜ん…と首を傾げたが
「目の前のそこ、そこはここらで一番古いですよ。奥に母屋がありますからそこで聞いてみてください」
愛想はないがしっかりと教えてくれた。
「ありがとうございます。あとで買い物にきます」
そこは「温泉客舎 後藤」という。 “宿”ではなく“客舎”なのだ。そこんとこがまたいい。

目の前の歴史的建造物のお宿にそお〜っと入り通り抜ける。そして中庭の奥にこれまた歴史的建造物の母屋がある

重厚な造りで目新しいものは無いくらいにすべてに歴史がありそうなものばかり。
奥で事務仕事?をしていた女将さんに声をかける。
泊りたい事を告げると、即OK。 なんとも順風満帆で決まった。なんだか重厚で歴史がありそうな立派な建物だし、それなりの価格?かと恐れていた宿代は2500円だけ。 Pan-kunと顔を見合わせ喜んだ 「うわっ、やっすい」
お盆は過ぎたがまだ夏休み真っ最中、私らだけの貸切みたいだ。
女将さんはすぐに布団を敷いてくれて、部屋の準備を整えてくれた。ちなみに築年数を聞いてみた。
なんと100年を超えているそうだ

これまた重みのある分厚い布団、寝心地が良さそうだ。でも……
タオルケットの色が夫婦色、ブルーとピンク。何だかなぁ
荷物を解き、濡れものを誰もいない事をいい事に、一面に干す。
部屋の仕切りは襖、土間との仕切りは障子のみ。音のプライバシーはないが、幸い誰もいない。土間から直接客間、そして目の前に温泉。若者には向かない雰囲気は抜群だ。 冷蔵庫やテレビはあるので何も困らない。地デジって所だけ現代風。
何となく建物内を拝見してみる
湯治場にはつきものの炊事場。

一応ステンレスの流しもあるが、基本的にはこの大きな硯(すずり)のような石の流し。上に溜めた水をすくって使うんだろう。つかって見たいが残念な事に先ほどラーメンを食べちまった。

金属製のサッシや、贅沢な電化製品なんかありません。水洗便所?なにそれ?? とにかく昔のままです。
全体の照明は落とし、便所などは裸電球で、芳香剤に頼らない昭和の香り、雰囲気作りがとても上手い宿。
作りたくても作ることの出来ない遺産がここにある
先ほどの商店に酒とツマミを買いに行き、お礼を言う。
そして温泉に浸かりに行く。

温湯温泉の共同浴場「鶴の湯」
この共同浴場を囲むように湯治宿が数軒建ち並ぶのがここの特徴で、その湯治宿に基本的に内風呂がない。どこもこの共同浴場に入りに来るのルール。この後藤客舎からは、玄関ドアを開けて、共同浴場のドアまでの距離がたったの15歩〜20歩 傘なんて要らない距離。
入る毎に200円かかるシステムは湯治としてどうかと思うが、そこはローカルルール、そんなのがあってもいい。10年前に建て替えられた目新しいバリアフリーな共同浴場の昔を知りたかった。さぞかしこの温泉街情緒に合う、寂れ具合だったのだろう。
200円という安さでか、地元の人で賑わってる。まるで外国に来たかの様な津軽弁が行き交うお風呂に入る。
アツイ!
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熱いので長持ちしない。体の表面アッチッチで汗は後からついて来る外部先行形温泉で、善し悪しがあまりわからんかった……正直。
“温湯”ってくらいだから、ぬるめの湯にのんびり浸かれるのかと思っていた。まぁ、そんなのはイメージが先行しただけで、共同浴場なんてのはどこも熱いのがお約束だわな。

胴にアイヌ模様、ダルマ絵や津軽藩の家紋である牡丹の花が描かれるのが特徴である「温湯こけし」発祥の地であり、夜になるとたくさんのこけし提灯が灯る。
雨に反射してなんとも幻想的な競演。カランコロンと客舎備え付けの下駄の音を響かせながら部屋へと戻る。

ビールを飲みながらダラダラ、雨足は一向に衰えない。
明治〜大正時代に築かれた温泉客舎の静かな夜は更けてゆく
いつかは時間を持て余す様な湯治をしてみたい…
本日の走行距離 80km odo37956 青森市〜黒石市
飲食代 3000円
温泉代 200円
宿泊費 2500円 温湯温泉「後藤温泉客舎」
計 5700円
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勝手な願いだが、こういう所はなくならないでほしいね。