はしご湯別館

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山でクマに襲われる方法

2017年05月17日 | 【山】本
「え?」と思われる記事タイトルですが、これは今年の5月1日に出版されたばかりの、クマ研究家米田一彦氏の著書「熊が人を襲うとき」の一文です。
 
 「本書のタイトルを『山でクマに襲われる方法』としたいくらいで、ほとんどは襲われるべくして襲われていた。」(米田一彦,2017,p.2)

と米田氏は著書の中で書かれています。



米田氏は秋田県庁生活環境部自然保護課に勤務の後、退職後は各県の委託、環境省のもとでツキノワグマの調査を行ってきた、知る人ぞ知る日本でもトップクラスの場数を踏んだ、野生ツキノワグマ研究における実践派のプロ中のプロですね。

その米田氏が出されたこの新刊は、過去の膨大なツキノワグマによる事故をクマの生態や習性を織り交ぜて検証したもので、山に入るという事、熊と接する可能性のあるグレーゾーンへ足を踏み入れるという事、それは、もはや自身の身は自身で守るしかない領域である、という事をあらためて思い知らされるものでした。

クマに関する事故といえば、昨年の鹿角市の件が記憶に新しいですが、個人的には2013年5月の会津美里町の件が衝撃的でした。あれは、ツキノワグマが遺体を抱え込む習性の二次被害の顕著たるものじゃないですか。被害に遭われた方の恐怖たるや、想像を絶するものがあったと思います。「え?クマに襲われたら逃げればいいんじゃないの?」などと決して安易に言えない、クマの執拗な習性についても本書には記されています。

おそらく一般のハイカーの間では「子連れの母熊が危険」「犬を連れて行くと安全」「ラジオや鈴をつけていれば安全」と、信じられているフシがありますが、決してそうではないという事例も書かれています。というのもクマの行動は「子」の月齢によって変わってくるし(子が小さいほど危険というワケではなく、むしろその逆)、犬連れやラジオに関しては逆に被害が大きくなってしまう例もあるようです。ん?クマ鈴つけてるから大丈夫?市販のクマ鈴にも効果のある音、ない音があるようです。テント場でのあの用具もクマを引き付けてしまう。

・・・・と、ここまでが、これまでにもよくある「クマに出会わないための対策」についてですが、この本の興味深い点は、襲われたその先について、時にサバイバルな生還を、時にぞっとするような事例を、かくも冷静に淡々と積み上げている事でしょう。




人は(私も含め)ツキノワグマに関してあまりに無知過ぎます。人の無知はクマにとっての不幸です。楽しい山歩きをウリにした本や雑誌もいいですが、山を歩けば出会うかもしれない隣人(クマ)について、もう少し知ってみてもいいんじゃないでしょうか。不幸にもクマに襲われた1993例から「熊が人を襲う時」を知る事は、決して無駄ではないと思います。


書籍の最後にツキノワグマによる人身事故防止の箇条が記されているのですが、ラスト一文は、クマに遭遇して無事に戻れた際になすべき事が記されています。


それは、



 「家に帰って、クマとの遭遇を反省する。」(米田一彦,2017,p.220)



でした。


出典:米田一彦(2017)『熊が人を襲うとき』つり人社.

 
▼昨年、飯豊で遭遇したクマ。昨年はこの他に、皇海山への林道でもクマに遭遇しました。