「エシュラ王、私を信頼して総参謀に任命して下さった
寛容の心に感謝しております」
貴族たちはざわめいた。
ジャスティンが、ここまで謙虚な言葉を口にするとは
誰一人、予想していなかったのだ。
「私は、他国の政治についてあれこれ言うことは
好きではありません。国によって人も文化も違い、
政治が異なってくるのは当たり前だからです」
ユーリは一息ついて、続けた。
「ですが、隣国のアスールでは、多くの国民が飢えて
おります。明日の食事どころか、今日のパンにさえ
困っている国民が数十万人もおります。
なのに、かの国は無謀にもわがヴェルテに戦争を仕掛け
飢えた人の数を更に増やしております。
私は、本来この世に絶対の正義も悪もいないと思っております。
ですが、アスールの現在ははっきり悪だと思います。
数十万人の国民が飢えている一方で、貴族たちは
贅沢な食べ物を食べ、贅沢を極めている。
これほどの不条理は、悪だと思います。
幸いにして、わがヴェルテの民は、飢えることもなく
搾取されることもなく、幸せに暮らしております。
それはわが代々の王と、偉大なるエシュラ王の寛大な
御心により、穏やかな政治が行われているからです。
私は王の治世と、この国が大好きです。
これからもずっとこの時代が続くことを望みます」
エシュラ王を始め、貴族たちはうなだれた。
ジャスティンの言葉を裏返せば、国民を虐げるような
政治を行う為政者に対する、強烈な批判が隠されているのだ。
そしてもしエシュラ王がそのような苛酷な政治を行うようなら、
強烈なしっぺ返しを行うような、そういう雰囲気があった。
「次のアスールの侵攻は、今より更に強烈になりましょう。
その時こそ油断せず守って守って、できれば反攻できるよう
今から確実に準備を進めて行きましょう。
私がいなくても仕事をきちんと積み上げ、成果を出せるよう、
各自が一生懸命考えて行って下さい。
私からは、以上です」
エシュラ王の瞳に、涙が浮かんだ。
メシウ総将軍や、メリル将軍、ユーリの瞳にも涙が浮かんだ。
ジャスティンの言葉は単なる感傷ではなく、仕事にどう取り組むべきか
どう向き合うべきかを教えてくれるものだった。
エシュラ王は、頬を伝う涙をぬぐいもせず、無理やり笑顔を作った。
「皆の者、この戦は終わりではないらしい」
貴族たちも、無理やり笑顔を作った。
「今日はゆっくり寝て、明日からまた仕事を始めよう。
幸いなことに、次の目標はジャスティンが決めてくれた。全く・・・」
「人使いの荒い女だ」
その言葉を聞いて、貴族たちはどっと笑った。
それはからかいの言葉ではなく、彼女に対する最大の賛辞だと
ユーリは思った。
仕事を地道に行って、着実に成果を上げることこそジャスティンの
最大の美点なのだ。
ヴェルテの空はどこまでも青く、平和な雲が所々に浮かんでいるだけだった。
(完)
寛容の心に感謝しております」
貴族たちはざわめいた。
ジャスティンが、ここまで謙虚な言葉を口にするとは
誰一人、予想していなかったのだ。
「私は、他国の政治についてあれこれ言うことは
好きではありません。国によって人も文化も違い、
政治が異なってくるのは当たり前だからです」
ユーリは一息ついて、続けた。
「ですが、隣国のアスールでは、多くの国民が飢えて
おります。明日の食事どころか、今日のパンにさえ
困っている国民が数十万人もおります。
なのに、かの国は無謀にもわがヴェルテに戦争を仕掛け
飢えた人の数を更に増やしております。
私は、本来この世に絶対の正義も悪もいないと思っております。
ですが、アスールの現在ははっきり悪だと思います。
数十万人の国民が飢えている一方で、貴族たちは
贅沢な食べ物を食べ、贅沢を極めている。
これほどの不条理は、悪だと思います。
幸いにして、わがヴェルテの民は、飢えることもなく
搾取されることもなく、幸せに暮らしております。
それはわが代々の王と、偉大なるエシュラ王の寛大な
御心により、穏やかな政治が行われているからです。
私は王の治世と、この国が大好きです。
これからもずっとこの時代が続くことを望みます」
エシュラ王を始め、貴族たちはうなだれた。
ジャスティンの言葉を裏返せば、国民を虐げるような
政治を行う為政者に対する、強烈な批判が隠されているのだ。
そしてもしエシュラ王がそのような苛酷な政治を行うようなら、
強烈なしっぺ返しを行うような、そういう雰囲気があった。
「次のアスールの侵攻は、今より更に強烈になりましょう。
その時こそ油断せず守って守って、できれば反攻できるよう
今から確実に準備を進めて行きましょう。
私がいなくても仕事をきちんと積み上げ、成果を出せるよう、
各自が一生懸命考えて行って下さい。
私からは、以上です」
エシュラ王の瞳に、涙が浮かんだ。
メシウ総将軍や、メリル将軍、ユーリの瞳にも涙が浮かんだ。
ジャスティンの言葉は単なる感傷ではなく、仕事にどう取り組むべきか
どう向き合うべきかを教えてくれるものだった。
エシュラ王は、頬を伝う涙をぬぐいもせず、無理やり笑顔を作った。
「皆の者、この戦は終わりではないらしい」
貴族たちも、無理やり笑顔を作った。
「今日はゆっくり寝て、明日からまた仕事を始めよう。
幸いなことに、次の目標はジャスティンが決めてくれた。全く・・・」
「人使いの荒い女だ」
その言葉を聞いて、貴族たちはどっと笑った。
それはからかいの言葉ではなく、彼女に対する最大の賛辞だと
ユーリは思った。
仕事を地道に行って、着実に成果を上げることこそジャスティンの
最大の美点なのだ。
ヴェルテの空はどこまでも青く、平和な雲が所々に浮かんでいるだけだった。
(完)
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