ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

善き人

2011-12-25 19:26:08 | や行

元旦公開という、とってもエライ映画。
そして質も内容も、
元旦にふさわしいと思います。

「善き人」71点★★★☆


1930年代、ドイツ。

ヒトラーの台頭とともに
ナチ色が強まっているものの、
まだ人々にさほど危機感のなかった時代。

大学教授のハルダー(ヴィゴ・モーテンセン)は
マジメな“よき家庭人”で、

親友のユダヤ人精神分析医とともに
「ヒトラーなんておかしな人間の影響力は、そう長くは続かない」
と言っていた。

が、ハルダーが書いた“ある”小説が
ヒトラーの目にとまり、
彼はナチ党に入党せざるを得なくなる。

そしてハルダーは自分でも思っていなかった
運命へと導かれてゆき――?!


「サラの鍵」もそうですが
これもナチス題材だから、と回避するのは
あまりにもったいない映画です。

悲惨な描写も、銃声もなし。
でも同時に
胸のすくような勧善懲悪も、ヒーローも、善行もなし。


これは
ごく“普通の人”にとって
「あのとき、なにが“善き行い”だったのか」
「どうすればよかったのか」を
見る人に問いかけるような作品なんです。


「善き人のためのソナタ」に、近い感触もありますね。


主人公はよき夫であり、父である「正しき人物」で
もちろんヒトラーに賛同なんかしてない。

ただ「普通のいい人」なんで
いろんな煩悩もあるわけですね。

それに
「まさかこんなことにまでなるとは思わなかった」という
先の読み間違いも加わり、

自分の意にはそぐわないまま
結果的に悲劇に荷担してしまう。


そんな彼を見るうちに

あの悲惨な歴史に荷担したのは
想像を絶するような「悪い人」ではなく、

あらかた人間の8割を占めるだろう
「普通の、いい人たち」なのだ、ということが身に染みてきます。

それはもしかして、
あなたでもあるんじゃないんですか、と。

ヴィゴ・モーテンセンの
サラサラ金髪にメガネの教授コスプレを堪能しつつ
そんな含みを感じとりました。


来週発売の週刊朝日(1/6-13合併号)で
東京女子大学の芝健介教授にお話を伺ったのですが

主人公のハルダーは
実在の人物がモデルで、

しかも彼の書いた“ある小説”が
あのホロコーストの悲劇における
そもそもの始まりになっているんですって。

かなりびっくり!
そして・・・・・・深い!

映画に興味のあるかたは
ぜひご一読を☆

★1/1から有楽町スバル座で公開。ほか全国順次公開。

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