ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

タレンタイム ~優しい歌

2017-03-21 23:57:14 | た行

ヤスミン・アフマド監督、
イメージフォーラムで特集上映中!(3/24まで)


「タレンタイム ~優しい歌」74点★★★★


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マレーシアの高校で開催される
音楽コンクール「タレンタイム」。

コンクールに出るため
選ばれた生徒たちが連日、練習にやってくる。

ピアノの得意な女学生ムル―(パメラ・チョン)は
送り迎えを担当することになった
少年マヘシュ(マヘシュ・ジュガル・キショール)と恋に落ちる。

だが、インド系でヒンドゥー教のマヘシュの母は
イスラム教徒であるムル―との交際に反対する。

いっぽう
マレー系でギターのうまいハフィズ(モハマド・シャフィー・ナスウィプ)に
中華系で二胡の名手カーホウ(ハワード・ホン・カーホウ)は
ライバル心を抱き――。


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2009年に51歳で亡くなった
マレーシアのヤスミン・アフマド監督の遺作。


ヤスミン作品を見たのはこれが初めてだったのですが
とても素晴らしかった。


でもね、まず映画文法やテンポが
フツーじゃないんですよ。
いきなり病院のシーンになったり、ある家族の謎の踊りになったり。

とにかくつなぎが唐突(笑)。
で、最初はかなり戸惑ったんですが

でも、
それぞれが、登場人物たちの背景であることが徐々に明かされ
それぞれが、きちんと収束していく様子に「うまーい」と思いました。


青春群像としてのみずみずしさがあるし
それにね、とにかく優しいんです。
風景も空気も、まなざしも。


マレーシアという多民族国家ゆえ、
登場人物たちはマレー系、インド系、中国系と多彩で
交わされる言葉も、宗教もそれぞれに違う。

さらに、そこに耳の聞こえない少年も登場する。


すべての後ろに
異文化、異宗教、異民族の複雑さがあり、
それゆえの誤解や衝突、
ディスコミニケーションが内包されているんです。

そんななかで、クライマックスの「タレンタイム」を迎え、
それらを超えてゆく音楽の力が見えたとき、揺さぶられましたねえ。
特に、あの、ステージは泣けた!

異なるもの同士をつなぐのは理屈じゃなく、
心や体が素直に反応する、こんな「受容」や「寛容」に他ならないんだ!
静かに、感じいりました。


6作品を遺して、脳出血で突然亡くなってしまった
ヤスミン・アフマド監督ですが
いま、再評価がすごく高まっていて、各地で特集上映も開催されています。


ヤスミン監督と、なんと日本で映画を撮る予定だった
監督・女優の杉野希妃さんにも
『AERA』でインタビューさせていただき、ヤスミンワールドの魅力をたっぷり伺いました。
(来週、掲載予定です~)

折しも3/24(金)まで
シアター・イメージフォーラムで特集上映中。
ワシも見て来ます!


★3/25(土)からシアター・イメージフォーラムで公開。

「タレンタイム ~優しい歌」公式サイト
コメント
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