ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

神様メール

2016-05-23 23:41:42 | か行

「トト・ザ・ヒーロー」(91年)
ジャコ・ヴァン・ドルマル監督の新作です。


「神様メール」70点★★★★


**************************

神様は、実は
ブリュッセルのアパートに家族と住んでいた。

神様はパソコンで
人類の運命を左右しては、イヒヒと笑うイヤなヤツ。

神様の10歳の娘エア(ピリ・グロワーヌ)は
そんな父を見て
なんとか世界を救おうと思い立つ。

そして、彼女が取った方法とは――??

**************************


見る人によって20点にも90点にもなりそうな
不思議な映画。

だってまず
神様を根性のねじ曲がった
嫌なオヤジに設定しているんですよ。

本当に見ていて
胸くそ悪くなるほどのDVおやじで(苦笑)
人間たちを苦しめて、悦に入っている。

で、
その娘、つまりキリストの妹である少女エアが
おやじの非道を正すべく、ある行動に出る――という展開。


どうやってついていったらいいのか
最初は迷うとこなんですが

ダークでシュールで、
ファンタジックな映像と

苦いセンスがユニークで、
けっこう余韻がいい。


神様のいじわるっぷりにも
今日の宗教観に対する思いがあるんだろうなと感じるし、

そのいじわるが
戦争を引き起こすという大きなものから
「スーパーのレジの列に並ぶと、必ず隣の列から先に進む」とか
セコいけど「あるある!」なネタなのにもウケた(笑)

日常の「ムカッ!」「イラッ」
やっぱり神様が操作してるんだ!ってね。


で、そんな神様をなんとかしようと
娘のエアがやるのは
父のパソコンに入っていた
人間たちの「余命」をメールで全員に知らせるというもの。

これまた、なんで?!と思うんですが
意外と、そのストーリーの行く先はおもしろく

自分も「神様メール」で
余命宣告を受けた気分になってみると

確かにいまの自分をじっくり
考えられるような気もしました。

ファンタジックな映像センス、
予測不能なシュールさ
ビターさ、可愛らしさなどから

ヤン・シュヴァンクマイエルの世界や「アメリ」、
ミシェル・ゴンドリーを混ぜ合わせたような感じもしました。


★5/27(金)からTOHOシネマズ シャンテほか全国で公開。

「神様メール」公式サイト
コメント (2)
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする