英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

残念な将棋世界7月号 その2「盤上盤外 一手有情」

2016-07-30 17:37:11 | 将棋
まずは、次の記事(抜粋)をお読みください。


 第1図は4月20日に行われた中村真梨花女流三段―高浜愛子女流2級。両者はともに振り飛車党で、相振り飛車の戦型になった。中村は銀を前線に進めると、9筋から仕掛けた。
 実戦は▲9三歩△同銀▲9五香△9四歩▲同香△同銀▲同銀△同香▲9二銀△8四銀(第2図)▲同飛△同歩▲8三角△7一玉▲9四角成(第3図)と進んだ。
 中村は香を捨てて銀交換し、▲9二銀と打って8筋を攻めた。高浜の△8四銀(△8二銀は▲9五歩△同香▲9四角でよい)の受けには、▲同飛と切って▲8三角の王手をかけた。中村らしい強烈な「マリカ攻め」だった。

 実戦は第3図から△7二香▲8一銀不成△9八飛(第4図)と進んだ。中村は左金の浮き駒が響いて馬金取りをかけられ、攻め続けることができなかった。
 高浜は攻勢に転じると有利になった。しかし、疑問手を重ねて形勢は次第にもつれていった。そして183手の激闘の末に中村が逆転勝ちした。
 3月号の本欄でも書いたが、高浜は2月の女流名人戦の中村桃子女流初段との対局に敗れると、規定によって女流棋士の資格を失う瀬戸際に立たされていた。
 高浜は対局前日に……(中略)……まったく眠れなかったという。
 高浜は一睡もしないで臨んだ運命の対局で中村に勝って女流2級に昇級し、正式に女流棋士として認定された。2年間にわたった3級時代は長くてつらかったそうだが、自力で道を開いた経験は今後の棋士人生に生かせると思う。



 指し手については後述するが、そもそも文脈がおかしい
 ≪強烈な「マリカ攻め」が発動≫した。しかし、その3手後には≪左金の浮き駒が響いて馬金取りをかけられ、攻め続けることができなかった≫となっている。
 この間の3手の善悪には触れていないので、指し手は順当であり、順当に攻めが不発に終わったことになる。となると、『中村らしい強烈な「マリカ攻め」だった』という表現はおかしく、『強烈だという定評のある「マリカ攻め」だが、今回は暴発気味だった』というような言い回しでなければならない。
 しかも、後に続く文章が、高浜女流の「2級昇級or女流棋士資格の失権」について述べているので、『「マリカ攻め」を不発に終わらせた高浜女流2級の受け』について言及すべきである。
 さらに、第4図以降の戦況も、文の羅列に終わっている。


 その上、指し手の解説もおかしい

 第2図の△8四銀に替えて△8二銀とすると、▲9五歩(変化図1)△同香▲9四角(変化図2)でよいと述べているが……

 確かに変化図2まで進むと後手は8三を守ることができず(△8四香は▲同飛があり無効)、先手よしだが、▲9五歩に△同歩と応じず、△9一歩と攻め駒の銀を責める手があり、以下▲8一銀不成△同玉▲9四歩△9二歩で先手の攻めは息切れ気味となる。また、▲9五歩(変化図1)の時、一旦飛車当たりに△7五角と出て、先手の飛車の態度を聞くのも有効だ。

 さらに、△8四銀に▲同飛と切った「マリカ攻め」の成否であるが、▲8三角△7一玉に▲9四角成とした手が問題で、▲9四角成とせず▲8二歩と打っておけば先手の攻めが続くようだ。
 そしてさらに、▲9四角成(第3図)に対し、△7二香と守った手が堅実に見えたが疑問手で、打った香が目標となる可能性が高い(馬筋が6一まで利いているのは怖いが、香を打たずに△9八飛と打つべき)。▲8一銀不成△9八飛と進んだ第4図は、先手を持ちたい。
 
 第4図では馬金両取りが掛かっているが、▲8三桂△6一玉(△8一玉と銀を取るのは詰み)を決めて▲6七馬と引けば、先手も容易に負けないだろう。


 ここ2、3年、『将棋世界』誌の質の低下が気になっていたが、最近、その傾向が顕著になってきている。
(例えば、これとかこれとかこれ

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2 コメント

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金無双に端攻めって (岡本哲)
2016-08-01 00:04:19
金無双に端攻めという段階でどうなんでしょうか?
それがマリカ攻めたる所以 ()
2016-08-01 12:03:58
岡本さん、こんにちは。

>金無双に端攻めという段階でどうなんでしょうか?

 ええ、8二に銀がいるのに、8、9筋を攻めるのですから、不合理で無理気味だと思います。
 本局の場合、▲9二銀に△8四銀と守ったのがやや疑問で、▲同飛~▲8三角で手にされてしまいました(△8二香や△8二銀の方が手堅かった)。
 しかし、▲8三角△7一玉に▲9四角成が甘く(▲8二歩を入れるべき)、その後の△7二香も疑問で、形勢が揺れています。

 多少無理でも、相手も最善手を続けるのが難しく、攻めが強力の為、「マリカ攻め」が通ってしまうことが多いようです。

 将棋世界の記事は、文脈もおかしく、変化や形勢判断も吟味不足で、非常に不満を感じました。

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