英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

2015NHK杯体操 女子

2015-05-23 00:52:25 | スポーツ
 女子の体操は、男子の6種目に対し4種目と少なく1種目の比重が大きく、また、年齢層も低いので、「ハラハラドキドキ度」が高い
 当然、競技者が異性……可憐な少女という要因もある。
 特に平均台は、落下(大減点)の危険が高く、怖い種目だ。男子の鉄棒における離れ技も落下の危険も高いが、どちらかというと、平均台の落下はあん馬のそれと質が似ている。わずかなバランスの乱れが落下に繋がるのだが、落ちる時は≪ああぁ…≫と、どうしようもない感じで落ちていく。
 鉄棒の離れ技も、鉄棒をつかもうとした手が虚しく空を切ることもあるが、少しのタイミングのずれなら体の開き具合で修正が利くようだし、多少、力を加減して鉄棒から近い軌道を描くという安全策も取れる。
 ところが、あん馬や平均台は≪安全に≫とか≪確実に≫と神経を使う方が却って不安定になるように思える。まあ、とにかく、観ているだけでも平均台はドキドキする。落下は1点の減点であるが、0.6ぐらいにしてくれないモノか……。4種目と少ない女子は、「平均台の落下→表彰台からの滑落」の悲劇が繰り返されてきた。落下せず、完璧にこなすことが、世界一の条件ではあるのだが、あまりにも、プレッシャーが大きい……

 取り留めのない話になってしまい、全然本題に入れない。もう、思いつくまま、書いてしまおう。まとまりのない文章になると思いますが、ご了承ください。

 思いつくままと言うと、多くの選手やシーンが去来するが、まず、笹田夏実
 彼女を語るには、まず、彼女の母、笹田(旧姓・加納弥生について語らねばならない
 私の記憶に残る最初の日本女子の名選手と言えば、彼女だ。全日本では1978年、80年、81年、NHK杯では79年~82年までの4連覇と、輝かしい実績を持つ。他の選手を圧倒する強さだったと思う。
 しかし、五輪出場はない。……彼女の絶頂期であったモスクワ五輪はボイコットにより出場できなかった。その悲運のエースを母に持つのが笹田だ。
 そして、思い出すのが、3年前のNHK杯体操。日本体操界の2大大会と言えば、全日本体操選手権とNHK杯体操である。今年で69回となった(NHK杯は54回)全日本が、格から言えば上だ(“全日本”と“NHK杯”だから当然)が、NHK杯の方が開催が後なので、五輪や世界選手権の代表の最終選考会となることが多く、勝負の緊迫感はこちらの方が高い。特に、五輪代表が掛かる年の第1班(上位6名)は、将棋のA級順位戦の最終日のような張りつめた雰囲気である。
 この3年前のNHK杯は、ロンドン五輪の最終選考会。笹田は2日目の第2種目を終え(この年は2日間で「4種目×2」に全日本の成績を加算して代表を決めた)、上位につけていた。代表権は5位までだが、確か2位か3位だったと思う。
 しかし、3種目目の平均台で大きくバランスを崩し、落下はしなかったものの台に手をついてしまい、大減点。結局、この失敗がたたり、代表権を逃した。顔を歪めて涙を流す笹田の姿は脳裏に焼き付いている。
 ロンドン五輪の代表は、田中理恵、美濃部ゆう、寺本明日香、鶴見虹子、新竹優子。
 田中はこの時は総得点で2位に7.5点の大差をつけて悠々代表を決めたが、この田中にしても、北京五輪代表をこの時の笹田と同じパターンで逃していた。また、鶴見は前年まで、NHK杯では3連覇、全日本では6連覇していた絶対的エースであったが、この年の全日本は体調不良で6位で、そこから巻き返しての代表権獲得だった。
 また、5位の新竹は2種目目の段違い平行棒で足がバーに当たり0.5の減点をされ、6位に後退してからの逆転代表であった。
 その後の笹田選手は素晴らしく、全日本は2013年、14年と連覇、NHK杯も2014年に優勝している。
 今年のNHK杯は、笹田らしい丁寧な演技を見せ2位に入り、代表権を獲得した。若干、ボリュームのあり過ぎる体型なのが気になったが、右手首の故障を考えるとまずまずの演技だった。

 鶴見虹子。上記のように長年にわたる絶対的エースである。北京、ロンドン五輪に出場(北京では団体5位の原動力、個人総合決勝に進出)、2009年の世界選手権では個人総合銅メダル、段違い平行棒で銀メダルを獲得している。
 そんな彼女もここ2年は、一昨年に右足首を故障、昨春には左アキレス腱を断裂するなど故障に悩まされ、大会は3年ぶり出場。全日本では優勝を目指したものの、得意の平均台で2度の落下、総合5位に終わっている。
 このNHK杯では1種目目の跳馬で着地が決まらず6位に後退したが、得意の段違い平行棒で高得点を上げ、笹田と並んで3位に浮上していた。
 しかし、3種目目の平均台は本来得意種目だが、全日本での落下の心理的影響があるのか、動きが固くぐらつきが目立つ。それでも何とかこらえて落下せずに最後の収束技まで持ってきた。しかし、着地で重心が後ろに掛かり、足を送って堪えようとしたが、3、4歩後ずさった末、転倒、12.550に終わり、6位に後退。
 全日本の時にも感じたが、鶴見は落下すると本当にがっかりした表情になる。演技終了後も次の演技が始まるまでの間も泣き出しそうな表情だった。失敗を引っ張ってしまう弱さを感じてしまう。
 その鶴見に、さらに不運が……。床運動のウォーミングアップ中、右アキレス腱を断裂、無念の危険となってしまった。「平均台で踏ん張った際、痛めたのではないか」というコーチのコメントもあったようだ。できれば、もう一度、彼女のち密な演技を見たいが……。

 寺本明日香
 中学時代からの抜きつ抜かれつの笹田の良きライバル。
 ロンドン五輪選考会でも、隣同士で腰掛け、声を掛け合っていたが、寺本だけが五輪に。「団体総合ではただ1人全4種目に出場した。しかも、14点台を3種目でたたき出し、北京に続く団体8位入賞に貢献した。さらに個人総合でも11位に入る活躍」(byウィキペディア)により、日本のエースに。勢いのある技と、大きなミスをしない安定感がある。(若干、技の捌きが雑)
 春先に手の指を骨折したが、全日本を初制覇。この日も跳馬で得点を伸ばし、2位以下に1点以上の差をつけた時は優勝確実かと思えたが、段違い平行棒は意外と得点が伸びず、平均台で大きくぐらつき、台に手をついてしまう過失(0.5点の減点)や、連続技を省いたり、収束技で3回捻りが2回捻りに留まったりと、彼女にしては珍しくミスが多く13.450と点が伸びず、3種目終了時点で杉原に0.325の逆転を許してしまう。
 逆転を掛けた床では、最後の着地で堪えきれずしりもちをつき場外に飛び出すという大失敗を犯し12.950、3位に落ちた。

 優勝は杉原愛子
 全日本は3位で、この日は伸び伸びした演技で得点を伸ばし、優勝。ミスが少なく4種目すべて14点台の安定した演技だった。床運動のタンブリングの高さも魅力昨年12位、高校1年生の伸び盛りで、今後が楽しみ。

 4位は湯元さくら。全日本は6位で、この日(NHK杯)は15.200の平均台が素晴らしかった。表現力が豊か。昨年13位からの躍進。

 5位は内山由綺。全日本は2位で、寺本と優勝を争うと目されていた。
 得意の床の落下が痛く、平均台にも影響したのか落下。5位にとどまった。
 試合前のインタビューで「2種目目の段違い平行棒でトップに立って、平均台で持ちこたえれば」と答えていたが、優勝を意識し過ぎた感もある。
 ただ、平均台で落下した後、大きく息を吐いたあとグッと口を結び、気を取り直した表情は素晴らしかった。



 今回のNHK杯の順位決定規定は、全日本の得点を持ち点として加算した総得点で順位を決定していた。当日の得点だけで決定した年もあり、順位決定方式が一定しないのはおかしい。

 もう一人の代表は、種目別選手権で決定するとのこと。
   
コメント
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