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ローマ人の物語Ⅳ-ユリウス・カエサル ルビコン以前-/塩野七生

2007-10-27 09:42:09 | 
この一連の作品の中でおそらくひとつのクライマックスになるだろうと思われるのが、ユリウス・カエサルが登場してくるこの巻だと思う。
ユリウス・カエサル。英語で言うところのジュリアス・シーザー。シェイクスピアの戯曲名でもあるこの英語名の方が有名か。
稀代の戦略家。人間的魅力にあふれるリーダー。その人間的なスケールの大きさが描かれている。
物語はおおよそ3つの構成になっている。
一つめは幼少から青年期を経てローマの政界に登場してくるまで。
二つめはポンペイウス、クラッススとの三頭政治を背景に、ガリアの制圧を果たすまで。
三つめはクラッススの死去後、ポンペイウスとの対立が顕在化し、元老院最終勧告により
ガリアの属州総督の任を解かれたカエサルが、ついにローマを目指してルビコン川を渡るまで。
共和制ローマの大きな転換点に立ったカエサルは、情勢の変化とその先を見通す卓越した識見の持ち主だったと言える。

カエサルの魅力はそうした才能に留まらず、人間的な器の大きさを感じさせる人物像にもある。
有名な三頭政治の一員であり経済力のあるクラッススをパトロンにして、莫大な借金をしてもまったく意に介さない。
借金は私財に費やすわけではなく、その金で私兵を雇ったりするのだ。
借金は少額のうちは貸したほうが強いが額が大きくなると貸したほうは不安になる。
そうした心理を見抜いて、クラッススを一蓮托生の経済的後見人にしてしまうのだ。

もうひとつは、カエサルの色男ぶりである。「英雄色を好む」を地でいった人である。
同時に何人もの愛人がいたそうであるから、なんともうらやましい(笑)限りである。
極めつけは、同じく三頭政治で政治的な同盟を結んでいた、ポンペイウスの妻までを寝取っていたという事実である。
今とはおそらく倫理感覚も違っていただろうとは思うが、なんとも豪傑である。
人間的な度量がなければできないことである。
そのポンペイウスが後に元老院派に寝返ってしまい、カエサルにルビコン川を渡らせることになるのは、
このときの妻を寝取られた怨念なのか、歴史の面白さでもある。

また、カエサルは文筆家としても才能のある人だったようだ。
ガリア戦役について書き残した「ガリア戦記」や「内乱記」など今に残るラテン文学の傑作が多い。

著者の思い入れもある程度は含まれているにせよ、読んでいてわくわくさせられるようなカエサルの器の大きさ。
部下の人身掌握術、情報収集と分析能力、冷静緻密で大胆な戦略。
このようなリーダーの下にいられたら、と思う。
混迷した現代世界を、草葉の陰からカエサルはどう見ているだろうか。


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