Manaboo 電子政府・電子申請コラム 

電子政府コンサルタントの牟田学が、電子政府・電子申請、その他もろもろ、気まぐれにコメントしてます。

米国の社会保障番号(SSN)から学ぶ番号制度

2011年02月25日 | 共通番号と国民ID
先日、ツイッターで

韓国や米国みたいに「番号が無いと日常生活に支障をきたす」「あらゆる場面で番号が要求される」といった「番号社会」は避けないとダメですね

と発言したら、「いい加減なこと言うな」と怒られてしまいました。

確かにいい加減な発言でしたので、反省とお詫びの意味も込めて、米国の社会保障番号について整理しておきたいと思います。

また、日本の番号制度を考える上でも、特に運用面において米国を反面教師とすることで、多くのことを学べるのではないかと思います。


●米国の公的年金、公的医療保険制度

連邦社会保障年金制度(老齢・遺族・障害)があり、課税所得に比例して徴収される社会保障税(目的税)を財源としています。自営業者を含む全職域の95%が加入しているとされています。

参考>>アメリカの年金制度(人事院作成:PDF)The United States Social Security Administration(米国社会保障庁)

医療保険は、
・メディケア:65歳以上の高齢者向け医療サービス、税金で賄う
・メディケイド:低所得者・障害者向けの医療サービス、税金で賄う
があり、サービスの対象は米国市民および永住者に限られています。日本のような全国民対象の公的医療保険については、実現を目指してオバマ大統領が奮闘している最中です。

参考>>HealthCare.govGet the facts about the stability and security you get from health insurance reform (医療保険改革の安定性等をチェック)米医療保険制度改革法、連邦地裁が違憲判決


●社会保障番号(Social Security Number)

社会保障番号(SSN:Social Security Number)は、社会保障に必要な個人収支の正確な把握・記録のために導入された番号制度です。納税者番号としても使われるため、納税者番号の類型として米国は「社会保障番号型」であると言われたりします。

社会保障番号の歴史は古く、1936年にニューディール政策の社会保障プログラムの一環として導入されました。1962年には納税者番号としての利用が制度化され、1986年、1990年の租税法改正で、社会保障番号が税控除の条件となる年齢が引き下げられたことで、普及が急速に拡大しました。現在は、出生登録の時に番号を取得(付番)するのが一般的となっています。

社会保障番号の対象は、「合衆国市民、合法的な在留資格(労働ビザ)を持つ外国人」で、米国社会保障庁(SSA)が付番します。

参考>>Social Security Number & CardSocial Security Number Chronology(歴史・年表)


●個人用納税者番号(ITIN)と雇用者ID番号(EINs)

社会保障番号を取得できない人(家族滞在などで米国に住んでいる外国人など)は、納税者番号(税識別番号)が、内国歳入庁 (IRS) から取得できるようになっています。

納税者番号があると、確定申告で夫婦合算申告や配偶者・扶養控除が認められるので、必要が無ければ取得しなくてもかまいません。社会保障番号と異なり、税専用の番号なので、確定申告時ぐらいしか使い道はありません。作者のツイッターにコメントをくれた人は、この納税者番号を取得されていたようです。

また、企業(ビジネス主体)の税識別番号として、雇用者ID番号(EINs)があります。こちらは、取得が義務付けられています。

参考>>Individual Taxpayer Identification Number (ITIN)個人用納税者番号(ITIN:米国大使館)Employer Identification Number (EIN)


●社会保障番号(SSN)の特徴

(1)番号の取得が義務ではない

社会保障番号の特徴はいくつかありますが、「取得が任意であること」は注目に値します。任意ですが、取得しておかないと税や社会保障で不利な扱いを受けるので、多くの対象者が出生と同時に取得しているという例です。オーストラリアの納税者番号も、同じような形態です。

(2)カードが交付される

社会保障番号を取得すると、社会保障カードも交付されます。身分証明書としても使われますが、社会保障カードには写真や住所の記載も無いので、場面によっては運転免許証など他の身分証明書の提示を求められるでしょう。日本の年金手帳と健康保険証の中間ぐらいの位置づけかもしれません。

参考>>社会保障番号・カードについて(米国大使館)Social Security Number Search

(3)法的根拠が無くても社会保障番号を求められる

社会保障番号の用途は、税務、社会保険、年金、選挙等とされています。

参考>>主要国における税務面で利用されている番号制度の概要(財務省調べ)

しかし、上記以外にも様々な場面で利用(要求)されるので、defacto National Identification Number(事実上の国民ID)と呼ばれることが多いようです。


●社会保障番号(SSN)の利用場面

社会保障番号(SSN)の利用場面には、番号の提示が法律で定められているものと、そうでないものがあります。社会保障庁が認めている公的な機関だけでも、16種類もあります。

参考>>Legal requirements to provide your Social Security number

社会保障番号(SSN)が求められるのは、政府機関だけではありません。利用場面としては、次のようなものがあります。社会保障番号を要求された場合は、それが義務なのか任意なのかを確認することができます。

・預金口座、証券取引口座の開設に社会保障番号の告知が必要
・納税申告や納税証明書、税務関連書類の提出時には、社会保障番号を記載
・扶養家族または配偶者控除を申告する場合は、所得税申告書に、控除家族や配偶者の社会保障番号を記載
・就職、クレジットカード取得などでも、社会保障番号が必要
・運転免許証や車両登録の取得の際にも社会保障番号が必要
・アパート賃貸契約時・不動産購入契約時には、社会保障番号が求められる
・医療保険加入時、治療の時などでも、社会保障番号が求められる
・学校入学時にも、社会保障番号が求められる

ただし、「社会保障番号が無いと絶対にダメ」というケースは少なく、他の条件を満たすことで(例えば、アパートの保証金を多めに払う等)手続自体は済ませることができます。税関係の手続であれば、前述の納税者番号で足ります。預金口座は、非居住者口座であれば社会保障番号が無くても開設できます。

テロ対策やIT窃盗防止等の関係で、社会保障番号の発行や再交付の要件が厳しくなっているため、社会保障番号の提出以外の代替措置を用意しておく必要が増えたという事情もあります。

参考>>Actions to take in the case of identity theft

米国政府は、社会保障番号の利用に関して1973年に調査レポートを発表し、利用制限を勧告。1974年には連邦プライバシー法を制定し、「社会保障番号の不提示を理由に、個人の権利や給付を拒否することは違法」としましたが、民間利用は対象外となっています。

ということで、「社会保障番号を提出しないことで、民間サービスの利用を拒否されることがある」のは確かと言えるでしょう。特に、米国の永住している人、米国に出生ルーツを持って在住している人にとっては、社会保障番号(SSN)無しで生活していくのは、多くの不利益を覚悟しなければいけません。

他方、就労を目的としない短期・中期滞在の外国人であれば、社会保障番号は必要ありません(取得できません)し、無くて困ることもありません。パスポートや国際運転免許証の方が、圧倒的に利用機会は高いでしょう。クレジットカードも、日本で発行したものを使えば良いだけです。


●携帯電話の利用

携帯電話の契約時にも、社会保障番号(SSN)が必要になります。クレジット(与信)情報を確認するためとされています。

もちろん、「携帯電話なら何でもいいよ」と言う人には、KDDI Mobileなど外国人向けサービスの選択肢があります。しかし、iPhoneは使えませんね。

参考>>アメリカ携帯契約時の難関:SSNWhy do you need my Social Security number? (AT&T社のFAQ)アクティベーションには社会保障番号と米国住所のクレジットカードが必須


●レンタルビデオの利用

レンタルビデオの会員登録では、社会保障番号が要求されることがあるようですが、確認できませんでした。ただし、身分証明書として社会保障カードを提示すれば、その記載事項は記録されることでしょう。

ちなみに、ID 盗難を防止するための 5 つの簡単な方法では、「オンラインのDVDレンタルサービスが、口座の設定用に社会保障番号を必要とすることはありません」とあります。Netflix社のサービスを利用する際には、社会保障番号は不要のようです。


●社会保障番号(SSN)の課題と対応策

社会保障番号(SSN)は、1970年代前半まで民間での利用を放置したため、様々な分野で無制限に利用が拡大し、法的根拠も無いのに社会保障番号を求められることが増えました。

基本情報(住所、氏名、生年月日)と社会保障番号だけで本人確認をするケースもあったため、成りすましや個人情報の売買等も起きています。

また、部門別には一定の制限があるものの、現在も、社会保障番号の利用を包括的に規制する連邦法はありません。社会保障番号(SSN)が社会に広く普及・利用された今となっては、利用規制に対する業界等からの懸念もあります。

なお、社会保障庁では、社会保障番号(SSN)とカードの取り扱いには特に注意するように呼びかけています。

参考>>Identity Theft And Your Social Security Number

日本における番号制度では、米国のような事態を避けるためには
・本人確認の方法について統一的な基準を作る
・民間利用については、法律で規定して、様子を見ながら少しずつ拡大していく

のが良いでしょう。

関連ブログ>>個人情報・プライバシー保護と本人の同意不正行為が起きることを想定した制度設計を
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