アブソリュート・エゴ・レビュー

書籍、映画、音楽、その他もろもろの極私的レビュー。未見の人の参考になればいいなあ。

流れよ我が涙、と警官は言った

2017-04-20 22:04:52 | 
『流れよ我が涙、と警官は言った』 フィリップ・K・ディック   ☆☆☆★  自慢するが、私はサンリオ文庫版の『流れよ我が涙、と警官は言った』を持っている。今となっては新訳が創元から出ているのでありがた味は薄いが、たとえボロボロになっても、この本を処分する気にはなれない。この気持ちはかつてのサンリオ文庫の、あのどこまでも我が道をいく孤高の存在感に魅せられた本読みなら分かると思う。ちなみに自慢は続く . . . 本文を読む
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嗤う伊右衛門(映画)

2017-04-17 22:30:54 | 映画
『嗤う伊右衛門』 蜷川幸雄監督   ☆☆★  日本版DVDで鑑賞。大昔に見たことがあって、唐沢寿明と小雪の悲劇的なカップルのたたずまいがそこはかとなく印象に残っていたので、久しぶりに再見した。京極夏彦の原作は偏愛の一冊である。  監督は演劇人である蜷川幸雄だが、私はこの人の舞台はNYでやった藤原竜也主演の『ムサシ』を観ただけで、正直さほどの印象は残っていない。映画が始まるとまずは唐沢寿明と池内 . . . 本文を読む
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ポッターマック氏の失策

2017-04-14 22:48:03 | 
『ポッターマック氏の失策』 オースチン・フリーマン   ☆☆☆☆  『オシリスの眼』に続き、フリーマンのソーンダイクもの長篇を読了。これは倒叙推理であり、つまり犯人側の視点で物語が進む。犯人は最初から分かっている。罪を逃れるために偽装工作を凝らすが、やがてソーンダイクの捜査と推理によって真相が暴かれる。『オシリスの眼』には及ばないものの、これも面白かった。やはり渋い。言葉を変えれば地味である。が . . . 本文を読む
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八つ墓村(映画)

2017-04-11 22:41:41 | 映画
『八つ墓村』 野村芳太郎監督   ☆☆☆★  日本版ブルーレイで鑑賞。私が子供の頃「たたりじゃあ~」が大流行したのはよく覚えているが、この映画は未見だった。今回、初鑑賞である。あの西村賢太が、横溝正史映画化作品の中でこれが一番好き、とエッセーに書いていたので観てみた。ちなみに横溝正史の原作は既読。  アマゾンのカスタマーレビューなんかを読むとやたら怖い怖いと書いてあるが、さすがに今の目で見ると . . . 本文を読む
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秘密の武器

2017-04-08 23:24:40 | 
『秘密の武器』 コルタサル   ☆☆☆☆☆  岩波文庫で出ているコルタサルの短篇集を読了。実はこの本、同じ岩波文庫の『悪魔の涎・追い求める男』と内容がかなりかぶっているので購入を見送っていたのだが、もはや未読のコルタサル短篇集が希少となったので、あきらめて購入した。なぜそんなに内容が重複した本が二冊出ているかというと、『悪魔の涎・追い求める男』は日本独自編集の傑作選で、こちらはコルタサルのオリジ . . . 本文を読む
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ムード・インディゴ

2017-04-05 23:54:32 | 映画
『ムード・インディゴ』 ミシェル・ゴンドリー監督   ☆☆☆☆  ボリス・ヴィアンの名作『うたかたの日々』の映画化作品である。監督は『エターナル・サンシャイン』のミシェル・ゴンドリー監督。  レーモン・クノーが「現代の恋愛小説中もっとも悲痛な作品」と呼んだ、シャンパンの泡の如き奇想と遊びに満ち満ちたあの『うたかたの日々』を、果たしてどのように映像化したのか興味津々だったが、おそらくおふざけは控 . . . 本文を読む
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検察側の罪人

2017-04-02 23:13:04 | 
『検察側の罪人(上・下)』 雫井脩介     ☆☆☆☆☆  久しぶりに雫井脩介を本を買って、週末で一気読みした。面白い。これまで私が読んだ雫井作品中で最高の出来だろう。『火の粉』より面白かった。  ある意味『火の粉』と共通するテーマで、人を裁くとはどういうことか、を更に突き詰めた小説である。主人公はベテラン検事の最上と、理想に燃える若手検事の沖野。沖野は最上を尊敬している。さて、ある殺人事件の . . . 本文を読む
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人生スイッチ

2017-03-30 23:38:13 | 映画
『人生スイッチ』 ダミアン・ジフロン監督   ☆☆☆★  アルゼンチンのオムニバス映画を、日本版DVDで鑑賞。私は英語以外の言語の映画は英語字幕を読むのが面倒なので、最近はなるべく(値段と相談しつつ)日本のソフトを買うようにしているが、これはわざわざ日本版を購入する価値があったかどうかちょっと微妙、だけどまあいいか、ぐらいの印象である。オムニバムといっても同じ監督の短篇映画の集合体で、プロローグ . . . 本文を読む
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やまいだれの歌

2017-03-27 23:55:42 | 
『やまいだれの歌』 西村賢太   ☆☆☆☆☆  またしても西村賢太の寛多もの。『蠕動で渉れ、汚泥の川を』がとても良かったのでこれはどうかと思ったが、個人的には更に上回る面白さだった。いやー西村賢太は侮れない。  今回は19歳の寛多、横浜の造園会社に勤めるの巻である。江戸っ子としての矜持に強いこだわりを持つ寛多だが、『苦役列車』の事件で自分の生活につくづく嫌気がさしたらしく、新天地を求めて横浜へ . . . 本文を読む
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瞳の奥の秘密

2017-03-24 22:22:45 | 映画
『瞳の奥の秘密』 ファン・ホセ・カンパネラ監督   ☆☆☆☆  アルゼンチンの映画をiTunesのレンタルで鑑賞。2010年のアカデミー賞外国語映画賞受賞作品。レイプ殺人を扱ったサスペンスものだが、そこに25年の歳月の流れを挟む大河ドラマ的手法で関係者の人生の変転を織り込んだり、人生も後半にさしかかった大人たちの恋愛模様を混ぜたりして膨らませてある。また事件の方も単に犯人探しや捜査だけでなく、司 . . . 本文を読む
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ダブル/ダブル

2017-03-21 23:57:12 | 
『ダブル/ダブル』 マイケル・リチャードソン編集   ☆☆☆☆★  分身をテーマにしたアンソロジー。切り口としてなかなか面白いと思うし、実際に面白いアンソロジーになっている。当然ながら幻想文学系の作品が多い。どれも読みごたえがある短篇ばかりだが、特に面白かった短篇について簡単に説明したいと思う。  ランドルフィ「ゴーゴリの妻」。これは異色作家ランドルフィの名刺代わりと言ってもいい有名な短篇だが . . . 本文を読む
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ニウロマンティック

2017-03-18 22:19:10 | 音楽
『ニウロマンティック』 高橋幸宏   ☆☆☆☆☆  高橋幸宏の『ニウロマンティック』、1981年発表。YMOの『BGM』と同じ年である。「ロマン神経症」との副題がついており、「ニウロマンティック」がニュー・ロマンティックとニューロティック=神経症的な、をかけた造語であることは言うまでもない。アルバムジャケットもそうだが、サウンドも『BGM』と非常によく似ており、双生児的なアルバムといっていいだろ . . . 本文を読む
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香りの逃亡

2017-03-16 22:29:14 | 作品
          香りの逃亡  香水の瓶をあけて初めて、私は香りが逃げてしまったことに気づいた。オパール色の液体はそのまま残っているのに、まったく何の香りもしない。私は愕然とした。もちろん、そのままにしておくつもりはなかった。その香水を手に入れるために、私は大変な犠牲を払ったのだ。すぐに探索を開始する。幸運なことに、最初の重要な情報は簡単に手に入った。香りは私のアパートの窓から逃げ出し、ベラン . . . 本文を読む
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Her

2017-03-14 09:56:28 | 映画
『Her』 スパイク・ジョーンズ監督   ☆☆☆  iTunesのレンタルで鑑賞。近未来のLAを舞台に、孤独な男とAIが恋に落ちるちょっとSF的な物語である。といってももはやAIがどんどん実用化されつつある現在、映画の中の世界は今の私たちの世界をほんのちょっと先に進めたぐらいのリアル感だ。すなわち、スマホも兼ねた小型のタブレット、音声認識、ホログラムのゲーム画面、AI制御の住居、などなど。   . . . 本文を読む
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オシリスの眼

2017-03-11 23:58:43 | 
『オシリスの眼』 オースティン・フリーマン   ☆☆☆☆☆  ソーンダイクものの長篇『オシリスの眼』を読了。最高傑作と言われることもある本書、確かに面白かった。本書にはいろんな意味で他のミステリにはないフリーマンの独自性が凝縮されている。その独自性については訳者あとがきに詳しく書いてあるが、まずは何といってもずば抜けた論理性。あのレイモンド・チャンドラーはフリーマンのミステリをそのロジカルな整合 . . . 本文を読む
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