さんぽ道から

散歩中の雑感・モノローグを書いてみました

英国製

2005-09-29 15:57:32 | Weblog
 秋めいて毛布を掛け始めた。寝巻きもTシャツからパジャマにした。パジャマは10年ほど前に買った、ボンソワール・オブ・ロンドンという英国製のものだ。臙脂と濃紺の配色に魅せられて、二着で「100ポンドか」と通貨単位に錯覚し、買ってしまった。後で円換算し「しまった」と思ったが、まだ、木綿も仕立てもしっかりとしていて、また、肌にやさしい。特に英国製ブランドのレインコート、スーツ、ジャケット、ネクタイにジャンパーなどは、良心的な材質と飽きのこないデザインで、少し高いが、長持ちすると世界に知れたお買い得品だ。因みに、靴や鞄は、デザインの無骨な米国製のほうが長持ちする。体型が昔に戻り、私も25年前に買ったレインコートを「また着てみよう」と箪笥の奥から取り出した。
 英国は、大陸近く位置する島国、一極集中型首都、米政府のパートナーと日本と外面似ているが、その実、かなり違う。先ず、英国人は比較的新しい。先住民のケルト人に、2000年前、ローマ人が、1500年前にドイツ系のアングル人やサクソン人が、北方からデーン人がやって来て、1000年前に、北方系のノルマン人が渡ってきた。1000年間に六つの人種がブリテン島で交流した。金と力の新興支配階級は権威付けに家系、伝統、歴史を重んじる。弥生人の渡来以降、他人種と大きな交流のなかった日本とは大分違う。為政者の引継ぎが効をなし、英国は未だに階級社会にある。「王室、貴族、代々続く大地主・大資本家が上流。大企業経営者、高級官僚、一流の医者・弁護士・作家・芸術家が中の上。高学歴サラリーマン、大学教授・研究者、中堅以上の自営業が中流。サラリーマン、公務員、自営業、農民は中の下クラス。下層階級は労働者。この下に移民・難民がある。労働者階級出身の首相は、一代貴族にはなれるが、元労働者階級はついてまわり、上流階級になれない。階級一つ上るのに三世代かかる」と書物にある。確かに、会社の事務職と現業職・運転手との会話は日本の同社同志のものとは異なる命令調だ。労働者の上昇意欲を削ぐ階級制度は英国製造現場、組み立てライン等での低品質で有名だが、個人間の伝承がベースの所謂、職人世界では、技能・知識が受け継がれ、質のよい物がつくられ続けている。歴史と、税制などの仕組みで支えられる階級制度により、概して、アンティーク物・年長、持ちの良いもの・価値観が尊ばれている。パジャマが伝統の職人によって作られているとは思わないが、職人の目がきく範囲で縫製されているのは確かだろう。
 大概はビスケットとスコーンしか買わないが、百貨店の主催する英国フェアーにはよく出かける。女房は、スコーンよりスーパーの蒸しパンの方がいいと言うが、私は紅茶にあうパサパサ感のスコーンが好きだ。もしかして、このパサパサ感は日本への輸送中によるものだろうか?
 今、日本はブランドブーム。英国製品の体験から、ブランド=高品質=長持ち=一生もの=お買い得のフォーミュラで売れていると思っていたが、どうも、ブランド=高額=余裕=お金持ち=成功者=幸せ、でブランド品が売れているようだ。お金持ちに見られたいと思うのは、戦後の物質文明によるところ大ですが、私も英国製レインコートを着てジェントルマン気取りを楽しんだ口。ブランド品=幸せ感、は分かりますが、購入価格でブランド間に格差が出来き、持っているブランドで、外見で、幸不幸の尺度は少し行きすぎだ。高価なブランド品への買い増し、買い漁りが進むと物もお金も死んでしまい、もったいない。ブランド品を買い増す余力を、紅茶、スコーン・ビスケット、演劇・ミュージカルにガーデニングなど等にまわし、英国流儀の生活を試してみては?ここ、階級社会のない日本にて...

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