エコヴィレッジ鶴川は一日にしてならず

鶴川某地にて展開する自然志向のコーポラティブハウス「エコヴィレッジ鶴川」。
住民の手で心地よい暮らし、現在進行形。

パーマカルチャー講座 第7回 (デザインしてみよう)

2006年04月09日 | パーマカルチャー公開講座
日時:2006年4月9日 11:00~13:30
会場:東京農業大学 世田谷キャンパス 森林総合科学実験室
講師:酒匂徹(さかわとおる)さん 自然農園ウレシパシモリ
主催:エコヴィレッジ鶴川建設組合
協賛:NPO全国コープ住宅推進協議会

開会挨拶 アンビエックス 相根さん

酒匂さん講義

【ビデオ上映&今日のテーマ】
<最初にロンドンの事例を上映>
・アーバンパーマカルチャー(農的暮らし)を皆さんと一緒に考えていきたいということで今回7回目となる講義をしてきました。すでに世界中の大都市では狭い空間で自給を高める試みはいろいろなところで続けられています。日本でもパーマカルチャーという言い方をしなくても街の中でそういった取り組みをしている例もかなりあります。鶴川でも30~40年前まではあたりまえに農的暮らしは行われていました。今ではライフスタイルも変わってしまって思い通りにいかない部分ももちろんありますが、30~40年前のことを考えればすごく難しいことをしようとしているわけではありません。工夫次第ではいろいろなことができるのではないかということを今まで提案させて頂いてきましたし今日もお話ししたいと思います。
・以前の講義でお話したフォレストガーデンは立体的に土地を利用する技術としてパーマカルチャーをやっている人の中でも重要視している人は多いです。狭い敷地で多様性を確保しながら生産性をあげるという取り組みの中でイギリスのロバート・ハートさんが提唱した技術です。自然の生態系では、高木、低木、かん木、草本、地衣植物、根菜、蔓性植物の7つの形態の植物が、日光や養分を分け合うなどして共生います。この自然植生をモチーフにして例えば野菜だけでその7つの形態ををデザインします。狭い土地の利用では高さの違いを活かしていろいろな工夫ができることをビデオでも話していました。
・ビデオでは、堆肥箱の熱(発酵熱)を利用していろいろなことをしていました。上にアルミ箔をはって輻射熱を利用して箱の中の温度を一定に保っていますが、そのアルミ箔の反射光を利用してメシャロットを乾燥したり、プランターを置いて熱を利用して、カボチャの育苗などをしていました。
・他にビデオでは、古タイヤでジャガイモを育てていました。下にジャガイモを植えて芽が出たら上に順々にタイヤを積んでいきます。下から馬糞堆肥、稲藁、干草、落ち葉などを、古タイヤに詰め込んで重ねていきます。上に高くなるので狭い面積でも可能です。ただ、ニュージーランドでは気候が一定しているので4段も5段もできますが、日本では秋じゃがの品種を使ってもせいぜい2段か3段しかできません。このように、パーマカルチャーの本は海外の訳本しかないので海外の情報が多くなりますが、気候風土やライフスタイルが違うので真似をしてもうまくいく保証はありません。今日もニュージーランドの例をたくさんお見せしますが、本当に日本で可能かという疑問の目を常にもって見てほしいと思います。

【デザインの基本原則の復習】
これまで核論をしてきましたが、今日はトータルのデザインとして皆さんと一緒に考えたいと思います。デザインの基本原則を復習します。パーマカルチャーの基本原則は、自然生態系の様子、伝統的な技法、現代の科学の知識を融合してビル・モリソンという人が中心となってまとめました。いろいろな大事なことがありますが、基本的には10個ぐらいあります。

①適所・・・物事を適所に配置する。私たちが暮らしの中でどう動くかという導線を考えます。それに従ってどこに何を配置したら暮らしがスムーズになるかということを考えます。狭いところでも広いところでも同じです。私が暮らしている広い農場のようなところでは車がどのように動くかということが基本になります。

②多目的・・・もし何か必要なものがあった場合は多目的なことを果たしてくれる要素を考えます。木を一本植える場合も一石5長ぐらいは考えたい。例えば、シンボルツリーになる、花がきれい、枝振りが良い、土地を肥やしてくれる、実をつける、蜜源になる、などです。

③バックアップ体制・・・難しい言葉でいうと、「重要な機能はいくつかの要素によって支えられる」と言います。暮らしに欠かせないことはいろいろありますが、重要なこととして災害に対する備えがあります。例えば、オール電化の住宅だと電気がカットされると何もできません。水道の蛇口だけに頼っていると水道が止まったら水を得ることができません。そこで雨水の利用や井戸の準備ができないかということを考えます。1つの重要な機能を何かしらでバックアップできないかということです。

④自然エネルギー・・・なるべく自然エネルギーを利用することを考えましょう。効率的なエネルギー計画ということで、なるべくその場所で手に入るものが良いです。地域や風土によっても効率良く利用できるものは全然違います。最近は自然エネルギーを手作りできる可能性も出てきて、コストも下がってきています。ちょっとした不便さを受け入れられれば取り入れら可能性は多いにあります。

⑤生物資源・・・私たちの労力も含めて生物資源を利用します。チキントラクターやミミズなどが例としてあります。ミミズが活躍できる条件をどのように作るかなどを考えます。

⑥多様性・・・いかに多様性を作っていけるかを考えます。パーマカルチャーでは利用できるものは最大限利用するという話が良く出ますが、利用できる、できないの前に存在するだけで価値があるものがあります。ただの雑草や雑木や虫などでもその土地で果たすべき役割があって私たちの暮らしを支えてくれているものがたくさんあります。それらのものは、ちょっと視点を変えるとすごく役立つものもあります。出来る限り多様性を維持することでいろいろなものがいろいろと役に立ちます。

⑦自然植生の遷移・・・土地を開発すると、ゼロにしたものから植物が自分たちで働いて森になります。やせた土地には、タラの芽などトゲのあるものがまず出て、それらに守られて木が育ち森に戻そうという力が働きます。自然の中では何十年もかかって森になりますが、やせた土地を肥やすものが何かなどの自然植生を学び、それを手助けして加速化するのがパーマカルチャーです。神宮の森は自然の力で森を再生した例です。やせた土地を再生して食べられる生態系にするのがパーマカルチャーが目指すものです。

⑧時間と空間の重なり・・・ある意味、近代文明は、時間と空間のつながりを断ち切って、それをすべてお金に変えて動かしてきいる部分があります。我が家ではツバメのおかげでカメムシの食害がここ3年ぐらいはなくなりました。でもツバメは田1枚だけのために生きているわけではありません。水もそうです。田1枚だけのために雨が降るわけではありません。昔は地力はその土地の7倍の森林面積にささえられていました。1年間という時間や、単位面積あたりとういう考え方にとらわれない、自分たちの土地だけでなく地域に目をひろげて取り込んいくことが大切です。

そいうったデザインの基本原則に基づいた世界中の実践例をスライドで見てみたいと思います。

【スライド】
・前半は都市型パーマカルチャーは置いておいて全体の話からします。パーマカルチャーは、本来は、広い牧場地帯で家畜をいれて行くなかで生まれた考え方です。ニュージーランドでは、うっそうとした原生林を侵略して木を切って更地にした人にその土地を与えました。北海道も同じです。その結果、山火事、川の汚染、などの問題が起こってパーマカルチャーが叫ばれるようになりました。
・この農場は木のない更地だったところに1本、1本、木を植えて10年たった写真です。一番低いところに池があって、風車で水をあげて配っています。斜面がきついところは植林で土壌侵食を防いでいます。こういう大きいところでパーマカルチャーは生まれました。
・新規に田舎に入る人は、条件があまり良くないところになります。この家は、真夏でも霜が降りるようなところです。南向きの斜面に石壁を作ってトウモロコシなどの夏野菜を育てています。石壁のすぐ前は霜にやられていないのが写真で分かります。建物の際の微気象があるところを活かしています。家の隣に温室を作ってお互いの熱を利用しています。壁面にはキュウイフルーツを植えています。壁は反射光と保温を考えると、白と黒50%ずつが一番良いという実験結果があります。
・日本の山形の写真です。壁面にトマトを植えています。温室からの熱も利用しています。微気候を作り出すものとして常緑の木があります。壁と同じ様に陽だまり、反射光を作ってくれます。木がない場合は霜よけの化学繊維のネットをやったり昔は古タイヤを燃やしていました。木を利用するのは生物資源を使って化学の物を減らしている1つ例です。
・微気象という意味では日陰もあります。涼しいところを作る。木陰は50%であればだいたいの植物は育てることができます。ネムの木はうまく剪定できればちょうど50%ぐらいになる。遮光ネットのかわりになって果樹の苗木を育てることができます。半日陰が丁度良い。苗木の間にローズマリーなどのハーブも一緒に植えれば虫もつきません。
・斜面の利用例。斜面を活かした段々畑の例です。1m幅ぐらいなら耕機を使わなくても手作り出来ます。もう一つ斜面をいかしているある家の庭の例です。斜面は肥えていない土地が多いので植物で覆って土壌微生物などが活発に動く状況を作ることが大事です。ハーブ類は乾燥して肥えてない土地のほうが良く育つので、乾燥しやすい斜面には向きます。また、昔から農家は斜面に穴ぐらほって保存庫を作って野菜などを冬の間入れていました。
・また、斜面では水の流れを利用することもできます。これはキッチンから排水ろ過装置をつけて水を流し、砂利と水生植物の間を斜面をつたって流れています。かっこ良く言うとビオトープです。もう1つこれはフロフォームといいます。特にシュタイナー関係の農場では液肥に宇宙のエネルギーを注ぎ込むために使われている活性装置(デザイン)です。水の流れは基本的に八の字のスパイラルになっています。川が真っ直ぐに見えてもスパイラルが重なり合っています。フロフォームに上から水を流すときれいにスパイラルを描いてリズムカルに下に落ちるようになっています。ヨーロッパだと先進的なオフィスビルの吹き抜けなどにあります。リズムカルに流れ落ちる水の音は、そこで働く人に精神的な安定感をもたらしてくれたり、また滝と同じようにマイナスイオンが出たり、酸素も多くしてくれます。自然のパターンをデザインに活かしています。自然の中ではまっすぐのラインはほとんどありません。木の枝も螺旋を描いていることが多いです。そういった自然界の特徴を活かした例として螺旋型のハーブ階段があります。良く紹介される例です。上に行くに従って日向を好むハーブを植えて下に行くに従って日陰を好んで水を必要とするハーブを植えています。狭い空間でいろんなものを植えることができます。
・バーベキュースペースやアースオーブンの写真です。鶴川では樹木がたくさんありますので剪定枝や倒れた樹木を薪として活かすことができます。
・外トイレの写真です。使用した後は落ち葉やオガクズなどの有機質を入れます。蓋をちゃんとして有機質を入れることによって匂いはほとんどしません。ミミズを入れて堆肥にすることができます。直接畑に入れる場合はオガクズは良くないですが、木の肥料としても使えます。
・木は存在するだけで周りの土を肥やします。落葉樹はもちろん落ち葉がありますが、常緑樹も木の葉っぱには必ず微生物や小さい細菌が活動しているので雨が降るとその亡骸を洗い流してまわりの土の養分になります。窒素固定をするのは豆科の木だけではありません。例えばハンの木やグミの木、ヤマモモなどがあります。
・木を上手くデザインしている例でこれはオリーブの木です。オリーブの木は潮風にも強いと言われていますが苗木のときは弱い木です。オリーブは成長がゆっくりなので、成長が早い豆科の防風林をまず植えてその内側にオリーブ木の木を植えます。10年経つとオリーブが防風林になっています。最初に植えた豆科の植物は薪になります。成長の差、自然植生の遷移をうまく利用しています。
・ユーカリの木の写真です。ユーカリの木は成長が早くすぐ伐採できるので東南アジアなどでも良く植えられていますが、その土地の地力を奪ってしまうということが問題視されています。でもユーカリ自体が悪いわけではなくいろいろと使い道があります。この農場ではユーカリの木の間に窒素固定をするカジュリナを植えることによって地力を失わないようにしています。いろいろな木の多様性を利用して共存しています。他にもカキとローズマリーを一緒に植えることによってカキに虫が寄ってこないということもあります。
・リンゴ園の写真です。有機と農薬の農場が隣り合っているので対照的に見ることができます。有機の農場は何百種類もの多様性があります。農薬のほうは防風林の柳とリンゴだけです。有機のほうは虫の鳴き声が賑やかですが、農薬のほうは虫の鳴き声がしません。かける手間は有機のほうが少しは多いですが、生態が安定してくるとほとんど差はありません。長い時間かけて多様性がある土地を作り出しています。やせた土地から再生する試みで、まず雑草の種をまいて、次にりんごの種をまいて雑草が生えないようにマルチをします。空いたスペースにはハーブやレタスも植えて畑としても少し利用します。5年後にはリンゴが収穫できるようになります。その時にはもう野菜を植えるスペースはありません。これが時間と空間のかかわりをデザインする良い例です。将来を見越してデザインします。

【質問】
(受講者)コンポストトイレでオガクズを入れたものを畑に直接入れると良くないのはなぜですか?
(回答)炭素の割合が多いので窒素を吸い取ってしまいます。堆肥を購入する時オガクズをベースにしている場合は3年熟成していないと危険です。

(受講者)パイオニアプランツで荒地を改良していくのには何年ぐらいかかりますか?
(回答)ネムの木が窒素固定していくスピードは、堆肥などを持ち込むなど人が手を入れないとかなり遅いです。だいたい10年たたないと野菜が育つようにはなりません。畑の土を木で肥やすのは狭いスペースでは難しいです。20~30年のスパンで考える必要があります。

(受講者)以前の講義でもコンパニオンプランツの話が出ていましたが、養分を取り合うことはないのでしょうか?
(回答)条件や組み合わせによってはあります。ただ基本的には植物は与えた肥料の3割ぐらいしか実際は使えていないと言われています。それが効率的に使える可能性があります。

(受講者)タイヤの話でマルチを入れるという話がでてきましたが、マルチと腐葉土の違いは?
(回答)マルチは有機質という意味で使っていました。マルチは覆うものという意味なので有機質を入れるという言い方に訂正させてください。

(受講者)日照がほとんどなくてもできる作物はありますが?
(回答)みつ葉、サトイモなど。真夏であれば半日陰で菜っ葉やレタスが良いのではないでしょうか。風が強いところは暴風ネットしたほうが良いです。

(受講者)グミの木とビワの木の相性はありますか?20年ビワの木を育てていて実がつかないのですが何か理由は考えられますか?
(回答)ビワの木を家のそばに植えたからといって必ず病気になるわけではありませんが、わざわざ植えるのであればできれば家から離したほうが良いという程度の話です。ビワは葉っぱが大きくて日陰を作りますしビワは多少日陰でも育つので、グミを日向側にして上手く剪定して育てるのが良いです。ビワの木に実がつかない理由は、流通しているものは通常はつぎ木で育てて実をつけます。種から育てると実がつかない可能性が高いのです。

(受講者)例えばスギナが多く出ているところは酸性の土地と言われますが、特徴によってどういうものを植えるのが良いのでしょうか?
(回答)取り組む人次第だとは思います。例えばスギナは酸性土壌なのでほうれん草は育てにくいですが、どうしてもその土地でほうれん草を育てたければ完熟堆肥をたくさん入れるなどやり方はあります。

【災害に対する備え】
・災害に対する備えについてもう少し考えたいと思います。これからお見せするスライドはニュージーランドで自給自足を実践している例ですが、雨水利用を積極的に取り入れています。その直接的な理由は、阪神淡路大地震がニュージーランドでも大きく取り上げられて、それがきっかけだっということです。
・皆さんは普段何にどれくらい水を使っているかを把握していますか?東京の水道料金の内訳は、風呂26%、トイレ24%、台所22%、洗濯20%、洗面その他8%です。でも少なくとも洗濯やトイレは飲める水でなくても良いのではないでしょうか。ニュージーランドの取り組みでもそれぐらいは雨水でも良いのではないかという考え方でやっているます。ニュージーランドは潅水20%ぐらい。台所10%です。ニュージーランドも日本も下水料金は水道料金の割合に応じて請求されます。そのため雨水を利用すれば下水料金が安くなりそうですが、日本では雨水利用を公にすると水道局がその分の下水料金を取りに来ます。もちろん他の理由もありますがこれが日本で雨水利用が広がらない一つの理由と考えられます。データ的には今皆さんの住んでいる屋根を利用すれば雨水利用で充分まかなえます。雨水利用する装置も簡単なものであれば1年間水道料金を払う経費で充分まかなえる計算です。

【スライド~ニュージーランド実践例~】
・ニュージーランドは都市部ではみどりの党が中心になっている党が3割あります。財政に対する基本的な考え方が日本みたいにエネルギー消費のピークを基準にしていません。もしピークを基準にすると発電所が余計に1つ必要なのであれば、その分の使用量をなるべくおさえるという考え方です。発電に関しても風力、地熱、水力ですべてまかなっていて、化石燃料は使っていません。
・そのようなバックグランドの中で、パーマカルチャーを実践している人たちは自治体から補助金をもらって自分達のやっているエコロジカルな活動を世間に紹介しているます。自宅にオープンデーを設けて自分の実践例をアピールしています。
・この例はオークランドの郊外で中古住宅を買って実践している例です。家の前の街路樹もさくらんぼの木を植えています。キッチンの前にハーブ類やサラダ類を植え、キッチンの壁にはトマトやインゲンを植えています。雨水タンクから水をひいています。パーマカルチャーでは役に立たないとされている芝生も少し残して子供の遊び場にしています。芝生にはえるクローバーはマルチとして使っています。ペニーロイヤルミントは蚊をよせつけないし蜜源にもなります。ガレージの上ではミツバチを飼っています。日の良いところではバナナ、その中でニワトリも飼っています。生垣もリンゴにしています。軌道に乗ってからは1日1時間の作業で充分収穫できています。

【最後に】
・土地の状況はニュージーランドと日本では違いますが、農的暮らしを出来る可能性というのは大きくは変わらないと思います。パーマカルチャーは子育てをしながら会社勤めをしながらでもやれる。我が家は街でやっているわけではなく実際は田舎でやっていてそのような違いはありますが皆さんのお手伝いを少しはできればと思って7回の講義をやらせていただきました。事例はあくまで事例で答えではないので、今後皆さんが実践する中でうまくいかないこともあると思います。そのような結果も私のほうにも返して頂ければと思います。そのような実践の中でまた農的暮らしの可能性が広がるのではないかと思います。将来はぜひ田舎で暮らしたいと考えている人でも今からそのような生活と少しでもかかわりを持っておけば必ずプラスになります。都市と田舎でも共通で変わらないことはたくさんあります。わずかな空間でもデザインについて考えていければ良いと思います。この講座がそのための少しでも力になればと思います。ありがとうございました。

パーマカルチャー講座 第6回 (動物を飼おう)

2006年03月19日 | パーマカルチャー公開講座
日時:2006年3月19日 11:00~13:30
会場:東京農業大学 世田谷キャンパス 森林総合科学実験室
講師:酒匂徹(さかわとおる)さん 自然農園ウレシパシモリ
主催:エコヴィレッジ鶴川建設組合
協賛:NPO全国コープ住宅推進協議会

開会挨拶 アンビエックス 相根さん

酒匂さん講義

【今日のテーマ】
・こんにちは。東京は暖かいですね。すっかり春ですね。岩手は暖かくなってきましたがまだ氷点下があります。電車の窓から菜花も見えるようになりました。菜花が咲き始めるとミツバチには良い季節になります。今日はミツバチから身近な家畜、ミミズとニワトリの関係などお話しします。
・我が家ではニワトリは100羽飼っています。20羽に1羽ぐらいが雄鶏なので卵は有精卵です。卵は、半分はオス、半分はメスが産まれます。皆さん、オンドリとメンドリの違い分かりますか?養鶏業界では判別士がいて産まれたばかりのヒヨコをオス、メスに分けます。オスは残念ながらほとんど廃棄物になります。テキヤのお兄さんはそれを無料でもらってきて100円で売るのです。我が家ではなるべく自然に近い形でニワトリにストレスをかけないように育てる努力をしていますが、それでもやはり半分のオスを犠牲にして成り立っています。
・家畜を飼うと考えた場合、ある意味人間の都合で動物をお世話するということになりますが、それが現代はかなり進んで本当に人間の都合で生産させるシステムになってしまっています。家畜産業はいろんな動物達の命を犠牲にして成り立っています。ヨーロッパでは動物福祉という考え方があります。ただ安全というだけでなく動物達の権利を最大限尊重されている必要があるという考え方です。ぜひ、家畜達の命の大切さを日々の食卓の中でも考えることが出来たら良いと思います。
・日本では1960年代以前から比べると動物性のタンパク質を約10倍摂っています。そんな量が本当に必要か、動物の命を食べ物として頂く時に、安い高いという価値観だけでなく、命に立ち返って考えているかということを一緒に考えてもらいたいと思います。その上でどのように動物達と関わっていくかということになると思います。私も卵、豚肉を売っているので偉そうなことは言える立場ではありませませんが、本当は2週間に1回、質の良いお肉を食べ後は素食にするのが健康にも良いのです。お客さんが来た時に食べるぐらいが丁度良い。今日は自給を目的にした動物の飼い方がテーマになるますが、なるべく家畜と共存して自給に貢献してくれ、しかも動物がなるべく快適に過ごせるにはどうしたら良いかということを考えていきたいと思います。

【ニワトリについて】
・パーマカルチャーは、対象となるものについて個性を調べてからデザインするというのが基本的な考え方です。ニワトリを飼うためになにが必要でしょうか?土地、エサ、水、日光、小屋、空気、敷料etc(※詳しくは配布資料「ニワトリとミミズの循環」参照)
・自分でニワトリを飼う場合に何が必要か、どんなものが得られるか考えていきます。小屋の中で飼うのであれば敷料をします。ニワトリはダニが体に付きやすいので体を砂でこすります。歯がないので小さな砂粒が必要です。胃の中の小石ですり合わせてエサを消化します。もともと消化能力が弱いのでその分、鶏糞を堆肥にした時に肥料成分が高いのです。
・ニワトリは1羽だと寂しがります。自分の実感で一番良いと思うのは50羽ぐらいです。自然有機でやっている仲間では100羽ぐらいが多いですが、ケンカを良くする。本当は50羽以下が良いです。オスが1羽に対してメスが15~16羽ぐらいなので、50羽だとオスが3羽になります。それぐらいだとオスの序列が決まるのでケンカも少ない。これは年代が同じ場合ですが、150羽以上で違う年代を混ぜても安定します。品種が違う場合でも雛から一緒に飼っていれば問題ないです。
・野生の鳥は春しか卵を産みません。ニワトリもそうでしたが、これまでの歴史の中で1年中産むニワトリを人間の都合で選別してきました。雛から半年してから産み出してそれから1年ぐらいで産業廃棄物になってしまいます。私達の養鶏では2年~3年が寿命です。本当は10年ぐらい生きます。3~4年経つと春しか産まなくなり本来の姿になります。実はアヒルのほうが採卵の歴史が古いのでアヒルはニワトリよりも母性本能が退化しています。母性本能が強いと卵を温めてしまいその間卵を産まないので生産するほうから見ると都合が悪いのです。ニワトリも母性本能の強いものは養鶏所では肉にされてしまう。時間をかけて人間の都合の良い形に作りかえられています。卵を1年中欲しい場合は、春と同じ状態を作り続けます。日の長さで卵を産むので日が段々短くなると卵を産まなくなる。電気を点灯することによって調整します。もし冬休んでもらうのであれば点灯しなくても良いです。
・ニワトリは外が好きです。我が家は最初は2年ぐらいたった卵を産まなくなったものを人からもらって飼い始めましたが、外に離したら卵を産みました。ただ外敵もいる場合はフェンスも必要になります。
・あと得られるものは、ニワトリは、肉、卵以外に毛も取れます。体温が高いので熱がある。鶏糞からメタンガスも出ます。呼吸の結果の炭酸ガスも出ます。土地を引っ掻く特徴もあります。他に、エサをあさる、飛ぶ、ケンカする。品種によってもそれぞれ特徴があります。こういった要素を書き出してから私達とニワトリの関係をどうしたら良いかデザインします。例えば、土地を引っ掻く特徴を利用したチキントラクターというものがあります。移動可能な鶏舎に入れておくと5cmぐらいの深さまでは土を掘り返して雑草や虫をついばんできれいにしてくれます。本当に狭い場所でも簡単に導入することができます。
・自給のために飼う場合で、1日1~2個卵が必要な場合、メスが5~6羽いれば1日1個は卵を産んでくれます。有精卵が欲しい場合はオスを飼いますが、オスはエサを良く食べるし、朝鳴くので街中の場合はあきらめたほうが良いかもしれません。オスを飼っているとほとんどは有精卵になります。有精卵と無精卵では味や栄養価は変わりません。1つ変わるとすれば生命力は違います。私は生命力というものを重視はしていますが、目に見える違いはありません。無精卵は卵子、有精卵は受精卵なので無精卵に生命力がないわけではないです。
・平台で坪あたり10羽がストレスを感じない最低限の条件です。タタミ1畳分に5羽が目安(最低限)です。1箇所ちょっと暗くして高くしておくとそこに卵を産んでくれます。タタミ1畳に5羽いると1週間もするときれいに草取りをしてくれます。そこに種をまくことができる。金網がなくても安心して休める止まり木がある安心感があるようなところであれば、1~2時間遊ばせたら勝手に巣に戻ります。
・もう少し大きい鶏舎で10~20羽を飼う場合。我が家では止まり木の下に金網をしてその下にミミズを入れた箱を置いています。そうするとニワトリの糞をミミズが食べます。増えたミミズがニワトリのエサになります。なるべくその場所で循環できるようにする。しかも内蓋に使う紙ゴミもミミズが食べる。丁度ミミズが必要な条件が鶏舎と共通します。温度、湿度や暗さetc。汚れたニワトリの飲み水はミミズ箱の湿度を保つために使うこともできます。ニワトリとミミズが共存することでお互いにメリットが出ます。このようにつながりを付ける事がデザインの基本的な考え方になります。

【質問】
(受講者)ニワトリを飼ったら家を留守にできますか?
(回答)5羽であれば、エサなどを工夫しておけば3~4日程度あけられます。

【スライド】
■ミツバチの飼育例
・街の中は意外と蜜源が多い。ミツバチは半径3kmからエサを集めてくれる。ミツバチは農薬に弱いということもあるので、ミツバチを飼うと3km四方の街の環境を意識するということにもなる。街路樹の桜や花壇も貴重な蜜源になる。
■ニワトリの飼育例
・果樹園の例・・・果樹の一角でネットで囲って飼っています。有機質で乾いたフカフカの状況を作ればほとんど匂いません。オスでなければクゥクゥ鳴く程度です。果樹園の草取りをしてくれるし、果樹に付く害虫も食べてくれます。なるべく飼料を与えないでも飼える工夫をしています。
・農場のカフェ&傾斜地の例・・・カフェの残飯をエサに利用しています。ニワトリの平地にしたがる習性を利用して堆肥を作っています。下のほうが傾斜になっているとニワトリは高いほうの敷量をどんどん下のほうに積んでいきます。それに糞と残飯が混ざっているので自然と堆肥が積み上がります。
・エサの例・・・基本的には配合飼料でアメリカのトウモロコシですが、絶対に遺伝子組替えでないトウモロコシを手に入れることが今は難しくなっています。そのためなるべく地域の資源を生かすことが良い方法です。岩手は牡蠣の名産なので廃棄物となった牡蠣ガラがエサに利用できます。他にオカラや米ぬか、クズ麦、カボチャなどをエサに利用できます。それに菜っ葉類を半分ぐらい混ぜれば充分です。
・ミミズとの共存例・・・ミミズの箱としては、排水溝から余分な水分が落ちるので古い浴槽が手に入れば一番良いです。それを受けるとミミズのおしっこが取れ素晴らしい肥料になる。底には炭をしいて通気性を高める。赤いしまミミズが養殖に適する。ニワトリにミミズを与えるとミミズの糞もきれいに食べる。よく知られていますがミミズは生ゴミを分解してくれます。ニュージーランドではキャノンアームというミミズ養殖用の商品が街中でも手軽にできるものとして売られています。日本では4~5万する。通気性と保温とを上手にデザインしている商品です。
・他の共存例・・・ニワトリと温室を隣にしている。温度、二酸化炭素をニワトリから得られるメリットがある。
■そのほかの動物の飼育例
・カモも良いがうるさい。池がなくてもカモは生きられる。ニュージーランドでは果樹園で放し飼いにしている。害虫を食べてくれる。口はまるいので木も痛めない。果樹もつつかない。
・ガチョウは番犬がわりにもなる。イネ科の草が大好き。イチゴ、ブドウ畑に放すと雑草だけ食べてくれる。
・犬もちゃんと躾をすれば、ニワトリ、ブタ、カモなどと共存できる。
・ホロホロチョウ。番犬がわりにもなる。天敵の鷹を見つけて騒ぐ能力は犬よりもすぐれている。虫を良く食べて草をあまり食べないので野菜畑に放しても問題ない。肉は高級。
・ウサギ。草だけで肉が得られる可能性は一番高い。輸入品のソーセージやハンバーグに入っていることがある。ウサギは掘るので下のネットも必要。
・ブタ。30年ぐらい前までは庭先で飼っているところもあった。本来きれい好きで広いところだとトイレも決めてできる。泥遊びが大好き。上手にやれば街中でも飼える可能性がある。
・ヤギ。大きい4つ足の動物でで街中で飼える可能性が一番あるのはヤギかもしれない。エサが多様性がある。庭木の剪定枝も食べる。落ち葉も食べる。濡れたエサは嫌いで乾燥を好む。ヤギを飼う一番の目的はたぶん乳。味は評判は良くないが成分は母乳に近いということで注目はされている。実は冬に干草を食べたヤギの乳は臭みがなく美味しい。ヨーグルトも割といける。エサは2㎏ぐらいの干草でOK。乳は1日2~4L出る。1家族が自給用に飼うには丁度良い量。牛は20L出るので自給用というレベルではない。
・ヒツジは狭いところではなかなか飼えない。衣類を自給したい人、羊毛が主な目的。
・ウシは広い牧場でなくても育つ。果樹園に離すと草を食べてくれる。アボガドの果樹園の例では、4時間ぐらいは下の草だけ食べていたが4時間すぎると果樹も食べた。そのことが観察していると分かったので4時間まで果樹園にウシを放した。このように動物の個性を見極めることが大切。
・ニュージーランドでパーマカルチャーをやっている人は自給用に向く品種を復旧させる努力をしている。例えば小さいウシのデキスター、クニクニというブタなど。

【質問】
(受講者)ヤギは子供が産まれたらどうしていますか?また寿命になったら?
(回答)我が家はまだ子供なので産みません。ヤギは30年前は全国に60万頭いましたが、今は2万頭ぐらいです。激減しています。身のまわりで種付けをすることも難しくなっています。役目を果たしたら命を頂く覚悟ではいます。動物を飼うということはそのような覚悟するということでもあります。でも、良いか悪いかは別にして、現代では自分で殺さなくても出荷するという方法もあります。

(受講者)ヤギのお肉はどうか?
(回答)流通しているお肉はとても柔らかくて私たちはそれに慣れているので素直に美味しいと思えるかどうか分からない。でも煮込みで食べる分には充分食べられます。

【ミミズ堆肥について】
(※詳しくは、配布資料の「ミミズ堆肥の作る方」参照。)
・キャノアームというりっぱな巣箱を購入しても良いが、手作りでも充分可能です。家庭の毎日の平均の生ゴミ量の500gを処理するには90×60×30cm程度の大きさで良いです。通気孔を空けます。底にも穴を空けたほうが良いですが、置く場所にもよります。アメリカなどではシステムキッチンやベンチでミミズを飼っている人もいます。できれば段差をつけたほうが通気には良いです。底には古新聞を裂いて濡らしてしきつめる。新聞紙8kgぐらい敷き詰める。75%ぐらいの湿度にします。新聞紙はカラーは毒なので出来れば白黒だけのほうが良い。もちろん可能であれば落ち葉やオガクズを入れてもらっても良いです。あと一握りの砂とか土を敷く。
・生ゴミを500g処理するのであればミミズは1kg必要ですが、最初から1kgは大変なので500g程度から始めても良いです。ミミズは買うことも可能ですが、できれば堆肥を作っている農家などからもらってきたほうがもらったほうが良い。もらえるならもらったほうが良いです。
・飼えるのは赤ミミズです。土ミミズはダメです。ミミズは4000種類もいます。出来ればいろいろ混ざっているほがおもしろい。あまり元気がないことが多いのですが釣り道具屋のミミズを一部入れてもおもしろいと思います。
・箱の下から2~3cmつめものをして、その上にミミズ、その上につめもの、その上に内蓋(麻布など)をします。湿度は75%ぐらいが丁度良いです。生ゴミは80~90%の湿度があるのであまりにも湿っている時は新聞紙に包んでから入れます。生ゴミの上にまた蓋をします。順調にいくと2ヶ月半で堆肥になります。堆肥を取り出したい時は、半分明るくして半分暗くすると5分ぐらいするとミミズは暗いほうへ逃げます。
・生ゴミは必ずしも毎日あげる必要はない。ミミズが一番きらいなのは柑橘類の皮です。柑橘類の皮を有効に利用できるのは、乾しておいてネギ定植時に一緒に植えるとネギの赤錆病を防ぐ。動物性タンパク質はなるべく入れないほうが良いです。ミミズのためにも素食にしたほうが良いということです。寿命は1年で半年で200倍に増えます。温度は15度~25度に保つことが必要です。冬は屋外だと寒い。4度以下だと冬眠してしまいます。夏は場所によっては断熱が必要です。25度以上になると動かないし死ぬこともあります。直射日光が夏あたるようなところは良くないです。箱はできれば木が良い。余った焼き杉の板でもできます。

【質問】
(受講者)風呂の桶でも穴を空けたほうが良いですか?
(回答)できればあけたほうが良いですが、空けない場合は通気を高めるためのもの(ダンボールなど)を壁の内側に入れます。
(受講者)箱を使わずに庭の隅でもできますか?
(回答)庭の隅ならモグラやネズミが入らないように気をつける必要があります。
(受講者)畑にミミズがいると作物の根もモグラに食べられてしまうことになりますか?
(回答)モグラは作物は食べないが穴からネズミが入ることもある。害がひどければ風車をまわして下に振動をいくようにして退治する手もある。
(受講者)しまミミズを畑に放す方法もあるか?
(回答)残念ながらしまミミズは日本の生態系だと畑に放しても育ちません。

【日本ミツバチについて】
・西洋ミツバチのほうが生産性が高いが、日本ミツバチのほうが味も良く、病気にも強く、スズメ蜂にも抵抗力があります。日本に対する気候も適している。定住しないということが問題点として言われていますが、ちゃんと環境を整えてあげれば大丈夫です。エサが多様なのも良い点で、果樹のエキスでも集めてきます。寒さにも強いです。伐採した木にも巣を作る可能性がありますし、電柱に巣を作ることもあります。キンリョウヘンというラン科の花の匂いに寄ってくるので、そのランを使って巣別れの時に箱の中に捕獲するという技術があります。主要蜜源であるエゴノキやクロガネモチなどはEV鶴川の敷地にもありました。街の中でも生かせる蜜源がたくさんあります。3km先からエサを集めてくるので自分の身のまわりの環境に気を配るきっかけにもなります。自分達だけでやることは難しくても毎年業者から譲ってもらうことも可能です。またミツバチの蜜源は、ヤギが食べたい枝に共通することが多いです。鶴川でも大きな可能性があると思います。

パーマカルチャー講座 第5回

2006年02月12日 | パーマカルチャー公開講座
日時:2006年2月12日 11:00~13:30
会場:東京農業大学 世田谷キャンパス 森林総合科学実験室
講師:酒匂徹(さかわとおる)さん 自然農園ウレシパシモリ
主催:エコヴィレッジ鶴川建設組合
協賛:NPO全国コープ住宅推進協議会

開会挨拶 日高さん

酒匂さん講義

【今日のテーマ】
・おはようございます。こちらは暖かいですね。岩手は寒いです。昨日は私が学生時代にお世話になった房総半島の三芳村の日本有機農業研究会のイベントに参加してきました。
・今日は樹木がテーマですが、アンケートの結果も考慮し、また都会の人にとっては樹木は身近な話題ではないということもあり、予定していたデザインワークはしません。楽しみにしていた方は申し訳ありません。

【バイオダイナミックについて】
・皆さん昨日夜月見ましたか?明日は満月です。ニューヨークでは満月に犯罪が多いという統計結果もあるそうです。満潮の時間にはお腹の赤ちゃんが外に出ようとするということもあります。霜は大潮と新月、満月の時におりやすい。このように月の満ち欠けは私達の体や自然界に影響を与えています。
・1920年代は農薬や化学肥料の弊害が出始めた頃ですが、その頃にオーストリアのシュタイナーという人が、農薬や化学肥料で育てられた作物は、本来の作物が持つ力(エネルギー)が相当落ちていることに気付き、農薬や化学肥料の害を世界で1番最初に訴えました。バイオダイナミック農法のもとになる考え方を提唱しました。シュタイナーの考え方は教育や建築、医療などの他分野にも広まっています。ホメオパシーというのも近い考え方です。私はバイオダイナミック農法をすべて実践しているわけではありません。バイオダイナミックに「農業講座」という本がありますがとても読みずらく3回読んでなんとか読破しました。私たちの文明生活では想像できない考え方がベースになっているために頭が対応し切れず読みずらいのではないかと思います。というわけで、今日はバイオダイナミックの深い精神世界のをお話するこをはできません。表面的な考え方のお話しになります。
・バイオダイナミックの考え方の1つの特徴として宇宙から降りそそいでくるエネルギーがあります。最近ではノーベル化学賞を取った小柴さんが、宇宙からは素粒子が降りそそいでいるということをおしゃっています。太陽光線は身近で一番強いものですが、月やそれ以外でも多少なりとも影響を与えているものがあります。

【バイオダイナミック~種まきカレンダー~ 】
・シュタイナーの弟子のマリアトゥーンは、植物がどのような影響受けているか検証するために10年間にわたり種をまき続けて統計を採ったものがあります。「種まきカレンダー」というもので世界中で使われています。統計を取ってみると、科学的に認識している惑星だけではどうしても数が足りない、冥王星の外側にまだ惑星があるはずということに気付きました。最近になってようやく世間でもそのような説が出てきましたが、植物を良く観察していると宇宙の彼方が想像できるということが分かります。
・本日の資料に5月のカレンダーを載せています。黒の部分が植物の生育には適さない休耕日です。自然界は厳しいようですがちゃんと自然のリズムの中に休む日がある。宗教の安息日も関係あるのではないかと思います。自給自足の暮らしをしている私に取っては毎日やることが山積みなのでこのような日があるとほっとします。逆に休耕日に木を伐採すると、木が活発に動いていないので伐採した後に木が暴れずらくて木の力が残りやすい。木の伐採については私は専門ではありませんが、「木と付き合う知恵」(自由社)というおもしろ本がありますし、「新月の木」というNPOが活動していてHPもありますので関心のある方はぜひご覧になってください。カレンダーを見ると新月は5月8日で2日後に休耕日があります。2月は28日が新月で27日~28日が休耕日になります。新月の時かその前後が休耕日になります。
・休耕日の例で1つ宇宙と植物の関係をあげました。それ以外に、私たちの食べる植物はいろんなところにエネルギー(養分)が溜まります。実り部分といいますが、例えば米であれば実、大根であれば根、ブロッコリーやなばなは花、なっぱは葉を収穫します。大きく分けると4つに分けられます。それらが必要するエネルギーに影響する惑星は次の通りです。月が水のエネルギーに関係するのは例えば海の潮の満ち引きに関係していることからも分かります。また月が天空を廻る時にどこにあるかでエネルギーに力を与えます。実の中でも種のために収穫する場合はしし座が適しています。

 ◎実・・・熱のエネルギーを必要とする。熱に力を与える月の位置:おひつじ座/しし座/いて座。熱に力を与える惑星:水星/土星/冥王星
 ◎花・・・光のエネルギーを必要とする。光に力を与える月の位置:ふたご座/てんびん座/みずかめ座。光に力を与える惑星:金星/木星/天王星
 ◎葉・・・水のエネルギーを必要とする。水に力を与える月の位置:うお座/かに座/さそり座。水に力を与える惑星:月/火星/海王星
 ◎根・・・土のエネルギーを必要とする。土に力を与える月の位置:おうし座/おとめ座/やぎ座。土に力を与える惑星:太陽/地球/(リンガル)

月の満ち欠けは27.3日の周期です。それぞれの星座の位置にくる日が2~3日ずつある。カレンダーを見ると休耕日と合わせて5つの周期になっている。時々変なパターンが入っているのは惑星の影響です。
・もう1つお話ししておくと、資料の5月のカレンダーを見てみると、5月12日~25日がグレーになっています。これは月が下降している時です。月には3つのリズムがあります。①満ち欠け、②天空を周る、③高さの上下です。下に落ちている時は作物が根をはる力が強い。この時を定植適期といいます。
・例えば、5月16日~18日に我が家は田植えをしました。定植適期の実の日を選べれば一番良い。夏野菜(トマトなど)も実の日が良いのでこの日に植えたいのですが、もう1つ霜には気をつけないといけない。新月、満月が霜が降りやすい。カレンダーを見ると5月上旬と下旬にあります。5月下旬まで待つのは難しかったので定植適期に夏野菜を植えました。今年は5月下旬の霜はおりなかったのでラッキーでした。5月9日がしし座なのでごぼうの種つけをしました。次の日にたまねぎとにんにくに液肥をやりました。実に関わる作業は、できればあらゆる作業を実の日にするのが良いのですがなかなかそうもいきません。カレンダーは優先順位を付けてくれるものです。例えば根の日であれば、人参、大根を植えることを考える、できなければ土寄せをすることを考えるということです。
・仲間で自然農をやっている人の話です。5月24日は8時までが葉の日でした。その日、ほうれん草の種を朝に蒔いて、昼からも蒔いた。それを観察していると、葉の日の朝に蒔いたほうが早く発芽してりっぱなものができた。
・ニンニクも根の日とそれ以外の日に収穫したものでは根の日のほうが腐ったものが少なかった。ドライフラワーの出来も葉の日と花の日では違う。我が家で味噌作りをした時も、豆の良い匂いがしない日がありましたがその日は葉の日でした。葉の日は水の力が強いので植物に水が入ろうとする。腐りやすいので保存食をやる日に向かない。微妙な変化なので絶対だめというわけではありませんが、適した日に良い条件が重なれば良い結果が出る可能性が高いということです。
・枝豆やインゲン、エンドウ豆は実になる途中の花に近いものを食べます。そのため同じ大豆を蒔くにしても枝豆にしたい時は花の日に蒔くのが良い。使い道によって花の日と実の日を使いわけると良いです。微妙なのはねぎですが、ねぎは基本的には葉の日です。葉の日でなければ根の日が良い。このように両方の性質を持っているものもあります。

【質疑応答】
(受講者)みそ作りは実の日が良いですか?
(回答)葉の日でなければ良いと思います。
(受講者)2月、3月の葉の日は?
(回答) 今年の種まきカレンダーはまだなので2月までしかありません。「種まきカレンダー」は旺文社から発売されます。2月の葉の日は11日、12日、21日、22日、23日。
(受講者)家菜類も同じ考え方ですか?
(回答)同じトマトでも例えばトマトピューレなどの保存食にする時は葉の日はさけるのが良い。でもとらわれすぎるととストレスになります。
(受講者)動物や卵は同じ様に影響を受けますか?
(回答)産まれた日で優劣はないのでないのではないかと思いますが、知っていれば個性が輝く可能性はある。家畜に関しては与える飼料がカレンダーに沿ったものではあればやはり力を与える。卵も周期がある。ミツバチはかなりカレンダー通りに動く。ミツバチが動かない日とそうでない日に仕事をするのでは全然大変さが違います。釣りは半月の日はよく釣れます。
(受講者)種取りがしし座が良いというのは根菜など何でもあてはまりますか?
(回答)そうです。

こだわりすぎる必要はないですが、植物にリズムがあるということを知ることで、植物との関わりの中で楽しみが出てくると思います。

【樹木について~農業にとって樹木がいかに大事か~】
・シュタイナーやパーマカルチャーでは、農業の中で樹木はとても大事という考え方が共通しています。確かに1本の木を植えると農業のための面積が少なくなります。でも無農薬、無肥料がうまくいかないという時は、たぶん木の力を借りていない。木を増やすことは作物が良く育つことと密接に結びつきます。物理的には水や空気の調整をしています。生態学的には、昆虫の住み家になる。昆虫というとすぐ害虫が思いつきますが、例えばモンシロチョウでも良い種ではないものに卵を産んでせん定してくれる。ミツバチは花粉を運んだりしてくれる。幼虫は腐食土を分解する。昆虫は木が出しているエネルギーを分散させる仕事をしている。それだけでなく生態系が豊かになることで田畑に良い影響を与えてくれます。また木は鳥の巣にもなります。ツバメやスズメは虫を食べてくれる。のっぺらぼうな田んぼでも止まり木一つあるだけで鳥はきてくれます。
・シュタイナーは、木を切って収穫量がいっけん増えたように見えても、作物に含まれるエネルギーの質は全然変わると言っています。木は単に製材ではない。街中の公園や学校でも木を身近に感じることができる。ぜひ身近にある木を感じてほしいと思います。ヤマモモは空気中の窒素を土に保有してくれる。落ち葉が落ちるとミミズが増える。微生物と共存することで相乗効果が出ます。この前お話ししたように温帯の木は40%~50%の養分を土の中に保有しています。焼畑は、20~30年のサイクルで、山⇒畑⇒山⇒畑・・・を繰り返して、ほとんど肥料をやらなくてもなりたっていた。ずっと畑をやるとなりたたなくなります。
・木は水分を多面的にコントロールしています。まず木は9割が水で出来ています。枝葉のあたりは湿度が常に90%あります。雨が降った時は、雨をしずくにして勢いを弱めてくれる。樹皮も水を含んでいます。木があることで相当の水が保有されています。また誰でも知っていることですが、質の良い酸素を供給してくれます。木は共同組合そのものだという概念です。窒素固定は微生物と根、葉と微生物で共存関係を作っています。スライドを観ながら木がどのように役立つかを見たいと思います。

【スライド~木がどのように役立つか~】
◎ぶどうの棚・・・木はスペースがなくても蔓性のものを這わしたり、地面がなくてもプランターで育つことができます。
◎雪が降り積もった木・・・災害で倒れることもあるのでもし家の近くの狭い場所に植える時は倒れずらい木を選ぶ必要があります。例えば松はやせた土地でも良く育ちますが粘りがない。
◎田んぼのまわりの木・・・ネムの木は窒素固定をしてくれて土地を肥やしてくれる。特にネムの木はそれほど茂らないので都会の狭い場所でも良い。夏には美しい花をさかせます。
◎土手の木・・・普通は植えないような場所でも木を植える試みをしてほしい。オーストラリアでは校庭に食べられる木を植えています。日本でも桜の木が良くありますがさくらんぼで子供たちが楽しめても良いと思います。
◎ネムの木・・・造成をしてほったらかしにしていたところにネムの木が自生しました。造成した後はたいてい土を肥やしてくてる開拓樹=パイオニアプランツが入ってきます。写真では木のまわりで根がはっているところまで緑が豊かなのがはっきり分かります。
◎サイカチの木・・・豆の木。ちょっと前までは河川敷に自生していました。サポニンという成分を持っていて石鹸の変わりになる。サポニンを含む木は他にエゴの木があります。エゴの木は鶴川にありましたが残りましたでしょうか?カブトムシはサイカチの木が好きだし花もきれいです。でもトゲが多い木です。サイカチゾウムシはその木しかつかないので絶滅の危機になっています。
◎防風林(生垣)・・・高いもの低いもの、常緑、落葉、が混在しているほうが機能する。アセビなどの常緑の潅木があると良い。たいてい常緑の潅木は半日陰でも充分育つ。オーストラリアでは山火事が多いので燃えすらい木を防風林にしている。
◎果樹・・・西洋ナシ。一緒にハーブやコンフリーを植えると空間を利用できる。コンフリーは果樹が届かない奥まで根をはる。年に4回収穫できますし収穫しなくてもミミズはコンフリーが好きなのでそのままにしておいても土が肥えます。花はミツバチも好きです。

【どういう防風林(生垣)が理想的が】
・ブロック塀は100%風を遮断しますが、強い風が来るとつむじを巻いて中に入ってくる。丈夫な家は良いがビニールハウスや苗木などは影響を受ける可能性がある。防風林は普通は杉だが下のほうがスカスカになる。中くらいの木。低、中、高、多層に配置できれば良いです。その結果、風が50%遮断できる。理想的には50%風を遮断できる防風林が良い。そうすれば一番高い木の15倍先まで守ってくれる。
・どうせ植えるのであれば生活の役たつものを植える。食べられるもの、毒になるもの、まきや肥料になるもの。参考として今日の資料「有用樹チェックリスト」準備しました。準備した後で気付いたのですが有用樹と書くと反対が無用樹になってりまう。特用樹に書き換えてください。例えばアセビは自然の殺虫剤になる。イタヤカエデは蜜源になる。葉は防腐効果もあり根菜類をムロに保存する時に使うと効果がある。量は少ないがメープルシロップが取れる。樹液をそのまま飲むだけですごく美味しい。樹液でコーヒーを入れるとほんのり甘い。樹液は新月の時は吸上げない。逆に満月の時に聴診器をあてて聞くと樹液の音がよく聞こえます。カキは実を食べられることもあるが、青い時には柿渋として使え、熟したら渋柿を亀にいれて密封しておけばまろやかな酢になります。手軽にできる。干し柿を砂糖がわりにもできるしミツバチの蜜源にもなる。コナラや白樫はシイタケの原木になる。どんぐりは家畜の餌になる。ヨーロッパでは高級豚を雑木林にはなしてナッツを食べさせます。グミは窒素固定してくれます。渋いですが実が食べられ、ジャムにもできる。蜜源にもなります。ツバキは油が取れますが、お茶からも油が取れます。ヤマモモは窒素固定もしてくれ食べられ薬用にもなります。蔓性のマタタビやサルナシも這わせることで防風林になります。昔話で山へ芝刈り、川へ洗濯へと出てきます。木を切るのではなく芝狩りです。細かい木を集めてかまどなどに使った。森がなくてもまきを収穫できます。まだまだ木はいっぱい利用価値があります。皆さんにももっともっと身近な木を利用することを考えてもらえれればと思います。

【質疑応答】
(受講者)苗木の入手経路を紹介してください。
(回答)オーストラリアやニュージーランドは苗木を職業としているところで買い求められる。日本では今日の話しに出たものは普通の植木屋さんで揃います。マナーを守って山から調達する方法もある。その時に気をつけることは、新芽が緑の葉になる前に植えることです。できれば夏の間に探しておいてショックをあたえておくのが良い。1mの木なら木から50cmのところでスコップで根に切れ目を入れて移動することに慣らしておく。果樹に関しては無農薬でやっている草木屋というところがあります。
(受講者)マルチ材に向くものの基準は?
(回答)落葉樹の落ち葉のほうがミミズが分解しやすい。葉のマルチ材という意味です。
(受講者)今日のリストでコンテナでも出来るものは?
(回答)果樹はたいていできますが、アケビ、イチジク、ウメ、オオムレスズメ、カキ、サルナシ、サクランボ、ナツグミ、ネム、ハマナス、マタタビ、ミヤギノハギ、ツバキ、ヤマグワ、ヤマブドウ、ヤマボウシ、などです。
(受講者)天敵誘因とは?
(回答)例えばイチジクは葉が大きくて鳥から虫が守られる。周りの生態系が守られるということです。マタタビはアブラムシの天敵のクサカゲロウが集まります。
(受講者)木の葉をマルチとして使うには?
(回答)いろんな条件があるが、できれば腐葉土に近い形にするために湿らせる。斜面では囲いをするなど。

デザインワークを楽しみにしてきた人には申し訳なかったですがその分時間があったので話したいことをすべて話すことができました。ありがとうございました。

パーマカルチャー講座 第4回

2006年01月29日 | パーマカルチャー公開講座
日時:2006年1月29日 11:00~13:30(午前の部)
会場:東京農業大学 世田谷キャンパス 森林総合科学実験室
講師:酒匂徹(さかわとおる)さん 自然農園ウレシパシモリ
主催:エコヴィレッジ鶴川建設組合
協賛:NPO全国コープ住宅推進協議会

開会挨拶 アンビエックス 相根さん

酒匂さん講義

【今日のテーマ】
・あけましておめでとうございます。新年の挨拶が遅くなりましたが、でも今日はちょうど旧暦の元旦にあたります。いつもは家で感謝の気持ちをどぶろくでお祝いしています。
・今日のテーマは「ベランダで作物を育てる」です。ベランダで作物やお花を育てたことがある方はいっしゃいますか?(大勢手をあげる)皆さんすごいですね今日は楽勝ですね。
・では、なぜ作物を育てるのしょうか?
(受講者)「アスパラガスを育てています。新鮮なものが食べられます。」
(受講者)「将来自給生活したいので予行練習と思っています。」
  ⇒大切なことですね。将来に備えて今のうちから植物と関係を作ることは意味あることです。
(受講者)「ベランダは日当たり良いし目の前にあると成長が確認できる。」
  ⇒都会の限られたスペースを生かすという意味もありますね。
・まさか食費をうかせるためにと思って育てている人はいますか?
(受講者)「ラズベリーのお茶を飲むために育てている。買うと高い。」
  ⇒特別の付加価値のものは別にして、食費の足しにすることはあきらめてください。道具をそろえるだけでもお金がかかります。でも作物を育てることはいろんな意味で気付かせてくれることがあり、癒しを与えてくれます。経済的なものだけではありません。

【作物が育つために必要なものは何か】
・畑でないところで育てるために何が必要ですか?
(受講者)順に、「土」「容器(⇒空間)」「水」「種」「肥料(⇒養分)」「水」「日光」「風」。
  ⇒米は風速1mで理想的な光合成ができるそうです。温度もないと育てられません。
・丸の内ビルなど東京では人工的な空間で植物を育てていますが、そういうところでは何を代用しているでしょうか?
 日光・・・電気、水・・・水道水、土・・・化学繊維、養分・・・化学肥料、種(苗)・・・F1、空間・・・人工、風/温度・・・コントロールしている。
・では、都会でパーマカルチャー目指す人はどう準備したら良いでしょうか?ベランダではある程度人工にならざるをえませんが、なるべく安全、自然なものでローコストにするにはどうすれば良いでしょう?都会の空間(コンクリートジャングル)に少しでも緑を増やす活動をする人達のことをニュージーランドでは、グリーンゲリラと呼んだりしています。英語の本に「緑のゆび」という本があります。最初の講座でお話した”飼い(買い)ならされるな”ということにも通じます。本では、少年1人が管理社会の象徴(病院、学校・・・)などを緑にするために立ち向かいます。最後は戦争に立ち向かい戦場や兵器を緑にします。グリーンゲリラの人たちの作戦は植物を使って管理社会を少しでも開放しようということです。先ほどの丸の内ビルが管理をおしすすめる帝国なら、パーマカルチャーが目指すのはグリーンゲリラですね。

【作物が育つために必要なものを、パーマカルチャー(グリーンゲリラ)ではどう準備するか】
 ◎日光・・・太陽を最大限生かすパッシブソーラーデザインという考え方があります。太陽の高度差と軌道を考えて私達が太陽に合わせることが大切です。6時間日照があれば植物は順調に育ちます。ベランダで6時間日照があるところを探します。1mの壁があって日光があたらなければ棚を作るという手もあります。夏は暑すぎるのでどう防ぐかが課題になります。
 ◎水・・・植物は水道水が好きではないので雨水が良い。種はちょっと弱酸性のほうが良いので雨水は丁度良いです。ビニールシートで集める方法もあるし工夫はいくらでもできます。雨水がない時は汲み置きの水が良い。おふろの残り水でも天然の石鹸であれば問題ない。米のとぎ汁なども良い。どうしても水道水を使う時はせめてあっためてください。
 ◎土・・・生産者のを分けてもらうことができればそれが良いです。河川敷から持ってくる方法もあります。最終的には買いますが、できるだけもらいます。
 ◎養分・・・うちでは液肥を使っていますが、さすがに都会の人には言えません。残飯は4人家族で1日あたり500gが日本の平均です。最初に良い土であることが前提ですが、残飯を毎日ちゃんと土に返せば20㎡の野菜が育てられます。その他には可能であれば豆腐屋でおからをもらってくる、米屋で米ぬかをもらってくるなどの方法もあります。都市で暮らすからにはその土地での循環を考えたい。排気ガスなどの問題もありますが落ち葉も利用できます。河川敷の土手草など植物の有機質も土に有効です。このように都市でも充分栄養分が補給でき可能性があります。
 ◎種・・・前回も話ましたが、できれば在来種が良い。もしくは自分のところで取れるのが良いです。
 ◎空間・・・プランターが使えますが、一番良いのは木製です。EV鶴川では外装に焼杉を使うそうですが、焼杉の切れ端を使うことも考えられます。60cm×60cmのプランターであればいろんなものが育てられます。焼杉は雨にも強いのでプランターに向いています。木だけだと通気性は悪いので、あまり人工的なものは使いたくないですが寒冷紗(かんれいしゃ)を内側にします。これだと水は流れるが土は流れない。木がなければビールケースに寒冷紗(かんれいしゃ)という手もあります。でもできれば自然素材が良い。麻袋もそのまま使えます。劣化しますが土にかえります。麻袋がなくてもゴミにする肥料袋などを切って使ってもよい。どうしようもなければ最後にプラスチックを選ぶ。その場合でも木でカバーしてやれば保温性なども随分違います。
 ◎風・・・アンケートでもベランダは風が強すぎるという回答がいくつかありましたが、風が大好きな植物もある。代表的なものはインゲンです。ベランダの外側にすれば風を遮ることができます。風は50%ぐらい遮るのが良いので蔓性ものを風除けにするのは丁度いい。
 ◎温度・・・温度は難しい。コンテナは地温が上がり易く下がり易い。手間ですが、1週間に一度(できれば毎日)、日当り面と日陰面をまわして入れ替えるのが良い。根の生え方が変わります。直置きにはしないほうが良い。果樹は特にしないほうが良い。それに直置きにすると根が外に出ようとします。出た根は生きられません。鉢が浮いていると外に出てはこない。
 ◎水・・・農家では水遣り3年という言葉があります。うまくいかないときは水が原因のことが多い。自然環境では広い畑の中で部分的に足りなくても全体としてうまくまわっているが、ベランダでは常に管理しないといけないので大事です。失敗するときは回数をやりすぎることが多い。1回にドバーとあげるのが良い。自然環境では常に少し湿った地面に雨がふります。それと同じ環境が良い。常に少しづつあげるとプランターの上のほうだけ水がある状態になってしまいます。1番大事な一番先の根っこに水がいかない。自信がない人はバケツにプランターごと入れる手もあります。じょうろであげる時も植物に直接かけない。雨のあたり過ぎが嫌いな植物が多い。また、水分が均質に保たれるためには最初に有機質の良い土を入れるのが大前提。均質に保つためには敷き藁などの有機質のマルチをしてあげることも大事。そうすると蒸散しない。水をあげる時は、1回に土の80%に対して、水は20%やります。3~4日に1回ぐらいが良い。ドバーとやって染み込ませる。潅水の方法を他にも紹介しておきます。少しづつ染み込ませる環境を作り出す一番手間がかからない方法は、下に穴が空いていない素焼き鉢を植え込んで、そこに水をやるのが理想的です。オーストラリアにはウエットポットという製品があった。それぞれの鉢に素焼き鉢を埋めホースの管を通って上のバケツから水が落ちます。ウエットポットは素晴らしい商品でしたが今は売っていません。ぜひ誰かビジネスにしてくだいさい。コンテナ栽培の本にも潅水のやり方がのっているが一番エコロジカルなのはウエットポットだったと思います。もしかしたら手作りできるかもしれません。

 【質疑応答】
(受講者):素焼き鉢でじわじわ水をやる方法と、ドバーと水をやる方法の両者のバランスが良く分からない?(矛盾していないか?)
(回答) :素焼き鉢は充分な水があるところに素焼き鉢を埋めて適湿な条件保つ方法です。ドバーと水をやるのは適湿な条件を一気に作ってなるべくそれを持続させようということです。少しづつ水をあげながら適湿な条件を保つのはすごく難しい。表面にちょこちょこ散水するのは良くない。

(受講者):汲み置きの水は夏は熱すぎないか?
(回答) :お湯はダメです。夏は70%の日射角度がある。家か日陰に汲み置きするのが良い。ホースの水も熱いのはダメ。熱いお湯よりは冷たい水のほうがましです。でも常温が一番良い。

(受講者):季節によっても水のあげ方が違う?
(回答) :季節にもよる。土によっても違う。プランターの深さでも違う。何日に1回とはいえない。でも夏でも1日に1回以内が良い。朝が良い。

(受講者):水をあげすぎるとどうなる?
(回答) :根が働けず養分が吸いきれないことになる。状況によるので良く見てつきあうことが大切だが、やりすぎになる傾向が強い。

(受講者):マルチは炭でも良いか?
(回答) :良い。直射日光があたりすぎると熱すぎるので注意は必要です。

(受講者):マルチの種類は何が良いか?
(回答) :できれば土にかえるもの。新聞紙はよっぽど工夫しないとすぐに乾燥する。インクの問題もある。

(受講者):素焼き鉢のサイズは?
(回答) :0.3m×0.6mなら良い。
 そんな感じで、なるべく自然なものを使うと人工的な管理でも可能性が出てきます。

【実例についてスライド上映】
・建物際の例・・・建物際は温度変化も少ないので壁際のスペースは有効です。霜もおりません。反射を利用すればトマト、ブドウなど熟し方も違います。実は建物の軒下は畑より作物が育つことがあります。
・沢の上に木を組んだ例・・・畑のとなりの沢に木を組んでかぼちゃなどの栽培することもできます。田舎はいくらでも土地があるように思いますが、昔は皆な小作でしたのでこういう工夫をしました。例えばベランダや屋上で応用できます。
・壁面の例(複数)・・・典型的な例はキヅタをはわせる。ヨーロッパでは、壁面の植物で冷暖房費3割削減できるというデータあります。ただ、ヨーロッパは石の建物です。日本の木の建物だと痛めてしまう。でも家を傷めるのはキヅタの場合です。別の蔓性のものは可能性あります。キヅタは断熱性は優れるが他に使い道がないのでパーマカルチャー的には芸がない。ツタは夏と冬で日射角度を自分で調整するのですぐれた断熱効果があります。壁面で可能性があるのはフルーツ。柿やブドウなど。ニュージーランドで20年パーマカルチャーをやっている人はパッションフルーツを使ってパッシブソーラーデザインを植物で実現している。スギカズラは繁殖力が強い。茎や葉はお茶になる。花は薬草になる。多目的に使える。蔓細工としても使える。マタタビは薬草になる。アブラ虫がつきやすくその天敵のクサカゲロウを呼び寄せてくれるので畑のとなりに植えると良い。お茶にもなるし食べられる。アケビは食用になるし花もきれい。若い蔓や葉も食べられるしお茶にもなる。薬草にもなる。実も食べられる。お酒のつまみにもなる。蔓細工にもなる。仲間のムベは常緑でアケビは落葉です。
・コンテナ栽培の例・・・ポットで育てられないものはない。果樹も育てられる。3mぐらいまでの木は育てられる。リンゴは20個ぐらいは取れる。相性の良いハーブを一緒に植えるとスペースも利用できる。
・小さい鉢の例・・・自宅(酒匂さん)のキンカンの例です。柑橘類は日陰でも大丈夫です。やはり甘くするには日向が良いですが、木は日陰でも大丈夫です。最近はお店でアボガド、フェージュなどが売られています。トロピカルフルーツも意外と半日陰でも大丈夫です。
・コンテナ栽培リンゴの例・・・ワイン樽の半分でできます。これはアルプスおとめという姫りんごです。最近は、果樹のコンテナ栽培はプロもやっていてます。さくらんぼなどはコンテナのほうが管理がしやすい。
・ブドウ棚の例・・・プランターから伸びてはわせることで日陰とかアプローチができます。
・古タイヤでジャガイモの例・・・まず、きれいな堆肥をひいてジャガイモを植えます。育ってきたら上に古タイヤを順番に足します。一般的にジャガイモは大量の土が必要と言われますが、土が少なくても育ちます。ただこの方法は高温多湿でないところで考えられたもので、日本では6月~7月で枯れてしまうので上にいかない。これは岩手の葛巻で試した例です。
・ビニール袋でヤマトイモの例・・・袋に入れてフェンス際に並べています。ヤマトイモは多年生で管理しやすくい。失敗が少ないです。
・デザインの例・・・プランターを立体的に利用している。日光の関係で段々にするとスペースを有効利用できる。ベランダの外側に蔓性の植物をはわすこともできる。グループワークのベランダのデザインの参考にしてください。

【相根さんからEV鶴川の概要説明】
 300年もつ住宅を目指しています。外壁は焼杉を予定していて住民の皆さんと有志で焼く予定です。自然素材にあふれた建物になりますベランダは6m×1.5mあります。住民の皆さんが実際にどう使われるか楽しみにしています。敷地には地主さんの古民家や土蔵もあります。土壁を直したり茅葺の屋根を直したり、田んぼを一緒にやりたいということも地主さんとも話しています。

【今日の演習について】

---フォレストガーデン ----------------------
           【例】
高木(5M~    ⇒果樹。りんごなど
低木(~5M    ⇒ブルーベリー
かん木(~3M   ⇒ピーマン
草本類(~2M   ⇒ニラ
地衣植物      ⇒サツマイモ
根菜類       ⇒大根
つる性植物     ⇒ヤマトイモ
野菜 (一)    ⇒インゲン、きゅうり、かぼちゃ、エンドウ
   (多)    ⇒ヤマトイモ、ハヤトウリ、アピオス
樹木 (落)    ⇒キウイ ブドウ、サルナシ、アケビ、マタタビ、フジ
   (常用)   ⇒ムベ、ツルグミ、スイカズラ、ツタ
-----------------------------------

・パーマカルチャーでは空間を最大限生かすための1つの方法論としてフォレストガーデンというものを提唱しています。フォレストガーデンとは名前の通り林のような庭です。私達が暮らしているところの雑木林は(上記のような)7つの形態の植物がお互いの日光や水分をシェアしているのが自然の安定した生態系です。この形態を私達がデザインできると空間を最大限生かせるのではないかということが提唱されています。これは広い土地だけの話ではない。ベランダなどの空間でも同じことが言える。考え方は林、果樹園、畑でも通用する。
・パーマカルチャーでは作物を育てるとき食料生産だけでなく見た目も美しいことを考えている。エディブルランドスケープ、食べられる景観作りと言います。
・植生の多様さが害虫のコントロールになることが良く知られているが、色によっても虫の好き嫌いがあることがだんだん分かってきている。例えば、黄色が好きな虫が多い。アブラムシは赤いものが嫌いな傾向がある。昨今では色の多様性が重要ということが言われている。今回の演習ではフォレストガーデンの7種類の植物と7つの色を入れてください。
・デザイン例を4つ紹介しますので演習の参考にしてください。(資料の絵で紹介)ブドウのまわりにブッシュ状のトマトを植える、レモンのまわりにアブラムシがつきにくいスタチュームを植える。ブルーベリーのまわりにシキナリイチゴを植える。両方とも酸性が好きです。リンゴのまわりにニラ植える。1つのプランターにいろいろ植えることができます。
・野菜の一覧を見て余裕があれば前回やったコンパニオンプランツも取り入れてください。

【質疑応答】
(受講者):(土について質問)
(回答) :できればプランターの土を取り替えることが必要。生ゴミ:2、土:1にしてサンドイッチにして作る。野菜⇔果樹⇔堆肥で土を循環させるのが良い。野菜は養分を3割ぐらいしか使わないので野菜の次に果樹に使う。終わったのを堆肥にまわします。

(受講者):建築基準法では、幅60cmぐらいの通路は確保する必要があります。両脇は物を置かないでください。
(回答) :一応そういう法律はありますが、皆さん工夫してみてください。

(受講者):穀類はプランターでやる現実性は?
(回答) :例えば米は加工する手間があるので難しい。小麦は一番現実的。

(受講者):アマランサスは穀類?
(回答) :アマランサスは葉を食べる用と穀類用などいろいろな種類がある。

(受講者):(生ゴミ堆肥についての質問)
(回答) :生ゴミ堆肥作り方は次回のミミズの話の時にできればやりたい。参考文献を後で紹介します。(「ベランダで作るコンパクト堆肥」)

(受講者):エゴマは他の作物との相性はありますか?
(回答) :昔はサトイモのカブ間に植えた。どちらかというと大きな面積で育てる。

【演習の発表】
2グループが発表。
◎1グループ目の酒匂さんのコメント
 ・姫りんごは直列型でせまい場所には良い。
 ・麻袋で蔓性の植物を植えるのはすばらしいと思います。

◎2グループ目の酒匂さんのコメント
 ・サツマイモは蔓がはってスペース取る難しいという話があったが、壁際に植えて蔓を下に垂らす手もある。
 ・普段日があたらない場所でも冬はあたるので冬なら大根などが充分育つということがあります。季節ごとに育てるものを変える手もある。

【終わりの挨拶】
 農的暮らしの準備として、家でもワークの続きをしてみてください。ベランダ堆肥についてはいろいろ質問を頂きました。自分にとってはベランダ堆肥についてはミミズで作るのが一番お勧めです。詳しくは「動物を飼う」の回でやりたいと思います。堆肥についてはいろんな本でも紹介しています。果樹の作り方や、コンテナ栽培の本もあります。限られた時間ですが一番必要なことをお話しできればと思っています。次回は樹木のことについてやります。アンケートでは新月に木を伐採することについて質問がありました。バイオダイミックとの関連の中で次回お話したいと思います。来月もぜひ参加してください。ありがとうございました。

パーマカルチャー講座 第3回

2005年12月29日 | パーマカルチャー公開講座
日時:2005年12月11日 11:00~13:30
会場:東京農業大学 世田谷キャンパス 森林総合科学実験室
講師:酒匂徹(さかわとおる)さん 自然農園ウレシパシモリ
主催:エコヴィレッジ鶴川建設組合
協賛:NPO全国コープ住宅推進協議会

開会挨拶 アンビエックス 相根さん

酒匂さん講義
【自己紹介と今日のテーマ】
・ 岩手で新規就農を始めて10年経ちます。妻と子ども2人で現在は農業だけで生計を立てています。
・ 今日は食べ物を育てようというテーマです。前回までは総論だったので、いよいよ具体的に話を進めていきます。
・ 農業、食べ物を育てるということはパーマカルチャーの中でも大事なことです。街の中でのパーマカルチャーとすると、自給自足ですべての食べ物を育てるのは大変です。限られた土地の中で何を選んで育てるか考えると、新鮮な野菜を育てるということになるのではないかと思います。

【土壌とは】
・ まず農業で大事になってくるのは土です。土には、鉱物、有機質、微生物が含まれます。たとえば土壁にする時には、表土ではなく、深いところの鉱物としての土を使います。鉱物としての土は、粘土と腐植が含んでおり、このバランスが農業にとっては大事になってきます。
・ 農法にはいろいろあります。まず自然農法という福岡正信さん(*1)が考案したものがあります。また自然農という川口由一さん(*2)が考案したもの。バイオダイナミック農法というシュタイナーの方法。この他にも、有機農法、植物波農法、韓国では自然農業(趙漢珪(チョウ・ハンギュ)さん提唱(*3)などがあります。いろいろなアプローチはありますが、できるだけ化学肥料や農薬を使わないという共通点の他、違いとして、腐植質としての土の使い方が違っています。
・ 自然界の腐植菌の分解の速さ(年間5mm)をそのまま利用するのは自然農法だけで、他の方法は、多かれ少なかれ、このスピードを早めようとします。バイオダイナミック農法はスピードを早めるために宇宙の力を使います。有機農法は機械も使ってさらにそのスピードを速めます。化学肥料や農薬を使うともっとスピードは速まるのですが、今回は有機の農法を前提に話を進めていきます。
・ 人間や機械、肥料など作物を作るためのすべての投入エネルギーの違いということで言うと、有機農法と慣行農法では農薬の部分だけが違うことになりますので、エネルギーはあまり変わりません。ですから、パーマカルチャーでは、自然農法、自然農を目指そうということになります。
・ また、このうち、不耕起で行うのは、自然農法、自然農、バイオダイナミック農法です。では何のために耕すのでしょうか。(会場からの意見として、空気を入れる、土をほぐすなどの意見。)有機農法をやっている方で、土を良くする目的で耕している人はもはや減っていて、農業研究の分野でも耕さないほうが良いと言われています。ただ耕す意味があるとすれば、雑草を無くすためということはあります。
・ 基本的に腐植している土は森に戻ろうというエネルギーを持っています。砂漠はこうしたエネルギーを本当に失ってしまった土地ということになります。腐植質が地表・地下のいずれにあるか言うと、熱帯では地表に70%の腐食質が出ている、30%が地下にあるといわれます。温帯ではこのバランスが50%、50%。だから熱帯雨林を切るということは影響が大きいのです。
・ いわゆる世界の穀倉地帯では、このバランスが地下に偏っていているために優れていて、土の力がよいのです。アメリカの穀倉地帯はこの何百年に蓄積された資産に拠っていると言える訳です。土壌がいいためにアメリカの有機農法ではほとんど肥料が要りません。

*1 自然農法…福岡 正信さん
【参考】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4393741412/qid=1134381693/sr=1-1/ref=sr_1_10_1/249-3795215-8928368

*2 自然農…川口 由一さん
【参考】
http://www.6348.co.jp/sizen/kawaguti/

*3 韓国の「自然農業」・・・趙漢珪(チョウ・ハンギュ)さん
http://www.shizennougyou.com/hello/hello.html

【ミミズが望む土壌】
・ 土をほぐす、とさっき言いました。ミミズは土をほぐしてくれます。年間5mmの腐植土を糞として作り出してくれます。ですが耕されるとミミズは逃げます。ミミズにとって大事なことは、土が常に何かに覆われていて、暗く、湿った土であってくれることです。シマミミズは表面を食べます。フトミミズは1mくらいの深いところを食べます。しかし日本ではシマミミズはうまく安定して育ちません。一方ニュージーランドではシマミミズがよく育ちます。ですから、日本ではフトミミズに期待しなければなりません。フトミミズは深いところと表土を往復して活動しますので、活動を邪魔しないためにはやはり耕してはいけません。石灰を土に入れましょうと教科書には書いてありますが、ミミズは石灰が嫌いです。ミミズの活動はいいことだらけなのです。できるだけミミズにとって何がいいか考えて農業をするのがいいのです。マルチをセットして不耕起にすると、いいです。それから土を歩いてしまうと硬くなりますので、作物を育てるところと通路を分ける必要があります。1~1.2mの幅で作物を植えるスペースを作り、その両側で作業をすることになります。自然農法では、収穫するときに根を抜かずに、切ります。なぜ根を残すかというと、根穴が空気を通してくれるからです。根は収穫後、なくなっていきますが、その穴が土の中に跡として残って、ミミズや微生物の通路になるのです。ただ、根を残すと付いた虫がまた付くことになりますので、
・ こうしてだんだん土を作っていきますと、ふかふかの団粒構造になります。私のところでは粘土の状態から7~8年たちますが、ふかふかです。よっぽど悪い条件の土でなければ2~3年でふかふかになります。こうした条件で育てた土は、乾燥にも、湿気にも強いです。
・ 2m×3mの家庭菜園を条件にすると、300gのミミズが必要です。子どもに捕まえてもらうといいでしょう。釣りえさのミミズではどうも元気がなく、活躍してくれません。飼いならされたミミズではだめなのです。

【よい種】
・ ただわれわれが育てている作物は、品種改良されていて、見た目を重視したできばえを優先いますので、まずはいい種を確保し、作っていくことも欠かせません。だから販売されている種では、なかなか期待しているおいしさや栄養を実現できません。有機農業のネットワークが有機の種を販売しているものを買う他、とにかく安い種を買うのも手です。安ければ安いほど、在来種であってF1種でなく、消毒されていないというよい条件を備えているからです。また在来種のほうが強く、ミネラル分など栄養価が優れています。ひとつだけ欠点があるとしたら、作物が揃わず、規格化しにくいのです。F1種や遺伝子組換はこの点で、規格からの外れが少ないです。

【コンパニオインプランツ】
・ コンパニオンプランツの話をします。資料を見てください。植物は花の形で科に分かれています。われわれが良く食べる菜の花科の野菜は、花びら4枚の十字型の花をしています。
・ この相性をよく考えて、相性の良い作物をいっしょに育てると良く育つ、悪い作物を一緒に育てると良く育たない、特性があります。資料は私が私なりにまとめたものです。・ ただコンパニオンプランツはやれば必ずよく育つというわけではないです。土壌が第一の条件になりますし、気候条件、品種によっても組み合わせが変わってくる可能性があります。
・ アメリカインディアンが言っている3姉妹の原則というのがありまして、トウモロコシ、ツガイインゲンとかぼちゃというセットがあります。これは学術的にも収量があがることは証明されていますが、ただ収穫に機械が使えなくなるので、アメリカでは実用化されません。ところが実際うまくいかないこともあります。それは例えば、インディアンの人たちは保存食として硬いトウモロコシを作っていたのに対し、われわれは生で食べるようになっています。またインゲンを蒔くタイミングを間違えるとトウモロコシに巻きついて倒してしまいます。よく研究しないとうまくいかないことも承知しておいてください。

【スライドによるコンパニオンプランツの例】
・ スライドで説明します。パーマカルチャーでは、丸い畑を作ることがあります。私のところでも不耕起+マルチで作り始めて5年目になると、うっそうとした畑になってきます。ニュージーランドの実験ほ場では、野菜を育てているのか花を育てているのか分からないような畑になっています。花を咲かせるのはミツバチなどを呼ぶ上で大事なことになります。千葉県の三芳村では、重粘土の土をマルチで作っていき、いまではずぶずぶと棒が刺さるほどの状態です。
・ コンパニオンプランツの例として、白菜の間にカブを播いています。田んぼのあぜに大豆を作るのは昔からの習慣でもありました。ニュージーランドでは畑の周りにコンフリーを植えている例もあります。多年性のラベンダーやローズマリーなどシソ科のハーブで畑を縁取ると、その匂いでモンシロチョウ除けになります。寄生蜂はハセリアという景観作物やせり科のニンジン、セロリ、せりが花を咲かせていると、やってきて害虫を食べてくれます。リンカーン大学でニンジンの脇にハセリアを植えた例を論文にした学生がいました。ヒマワリやトウモロコシの下にカボチャを栽培するのも良いです。私はトウモロコシの脇に小豆を植えていますし、ピーマンの周囲にナスタチウムを植えアブラムシを遠ざけています。

【コンパニオンプランツの資料】
・ 資料の相性が悪いというのにも、注意してください。じゃがいもの横にトマトに植えますと、ジャガイモの収穫のあと、虫がトマトへ移動し、同じ虫が両方を食べてしまいます。
・ 確かではないですが、一緒に食べておいしいものは相性がいいと言えます。トマトとスイートバジル(イタリア料理に欠かせない組み合わせ)、大根とジャガイモ、トマトと唐辛子などです。
・ コンパニオンプランツの植え方としては、間作(間に植える)、混作(まぜまぜに植える)、輪作などの方法があります。

【演習】
・ さて、今日の演習ですが、家庭菜園を意識して、どんな作物をどのように植えるか考えていただきます。
・ その前提として、エコヴィレッジ鶴川の様子をスライドで紹介しました。
・ 屋上菜園のイメージはひとりあたり2×3mのスペースです。ここで年間を通して、家族2~3人分のお味噌汁を2種類は作っていけるために、何をどう植えればよいか、考えていただきたい。8種類くらいの野菜を作付け計画に載せてください。その際、A3の紙を8等分して、8種類の野菜を12ヶ月育てる作付け(ひとまず収穫期を表にマークしていく)のスケジュールを作ってください。収穫期があまり重ならないように気をつけてください。
・ 次に作付け計画を基に、栽培の図面を作ってください。6平方mの日当たりが良いスペースに、資料の作付け間隔を参考に、実際の栽培の広さや場所を図示してください。
・ 酒匂さんの例としては、真ん中にまず通路をつけます。通路にアーチをつけます。アーチにカボチャを這わせます。アーチの反対に、サヤエンドウを11月ごろ、ササゲを6~9月植えます。ナスが好きなので3本植えます。ツルムラサキをなすの間に植えます。ナスの横にインゲンを、夏以降インゲンを追いかけて、ニンジン、大根を植えます。この他、レタス、夏播きのダイコンを3本、にら、三つ葉など多年性のもの、キャベツを4つか5つ植えます。
・ まずはスペースと季節を考えながら、配置をして、1つくらいはコンパニオンプランツの相性の良い組み合わせが活きているようにやってみてください。
・ グループの発表も実施した。酒匂さんの講評のポイントとしては、ダイコンの周りに小松菜を播いて置くとよい、とか、早春は手薄になるのでセリなどを植えるとか、アドバイスをいただいた。

・ 以上ありがとうございました。

パーマカルチャー 第2回

2005年12月11日 | パーマカルチャー公開講座
日時:12月11日 11:00~13:30
会場:東京農業大学 世田谷キャンパス 森林総合科学実験室
講師:酒匂 徹(さかわとおる)さん 自然農園ウレシパモシリ
主催:エコヴィレッジ鶴川建設組合
協賛:NPO全国コープ住宅推進協議会

開会挨拶 アンビエックス 相根さん
・7年前ほどから酒匂さんとエコヴィレッジを作りたいと話してきた。鶴川にエコ住宅の建設をすることとなったが、今回建設後の暮らし方として、パーマカルチャーを勉強することとなった。
・今回は、実践的な講座内容とする予定である。

酒匂さん講義
■1.パーマカルチャーとは
【歴史】
・ビルモリソンさん(生態学者)が提唱した、持続可能な暮らし方の概念です。オーストラリアで生態系を守る環境運動をやっていたが、反対することを中心とした運動を飛び越えて、新しい暮らし方のデザインを提唱することになった。
・この考えに賛同して、パーマカルチャーの実践をする人が増え、都市にも都市型のパーマカルチャーを行う人たちが増えてきた。
・実際、東京の多摩にも3世代前くらいは、かなり自給自足的な暮らしをしていたことがある。食べ物が手近に手に入るだけでなく、他の物も共有するような状況があった。なぜ、それが失われたのだろうか。それは、経済効率を優先してきたからだと思う。

【経済効率】
・宮城県の気仙沼のカキ漁の漁師さんが、山に広葉樹を植林している。なぜか。海の良質のプランクトンが増えるには、山からやってくる水にミネラルが豊富に含まれていることが条件になる。山作りがきちんとできていないと、よい海にならず、良いカキが取れないと言うことに気づいた。経済効率から見るとおかしなことであるが、長期的な視点で植林をすることを始めた。

【飼い・買いならされていること】
・ビルモリソンは常々「飼いならされるな」と言っていた。ある時、別の講座で生徒さんが私に「買いならされるな」のことか、と聞かれたが、「飼う」と「買う」は同じようなことだと思う。確かに完全な自給自足は難しいけれど、安易に買わないということが重要になる。自給自足という考え方も昔から1家族でやりぬくということではなかったと思う。地域で共同で、共有をして、生活が成り立つ。例えば、わらぶき屋根の葺き替えも1世帯単位では大変だが、30軒が年に一棟ずつやっていけば、さほどでもなくなる。
・買えるということは、確かに便利です。私も子供の教育費をどうするのか、と周りから心配される。不安をあおられると、確かにお金を貯め、買うことに依存することになる。それを断ち切るきっかけとして、今日は不安をとりはらって聞いて欲しいと思う。アンケートにも、農的暮らしをするには土地を買うお金がありませんと書いた方がいた。今日は、こうした問題もなんとかなる、と考えてください。
・本来パーマカルチャーの基礎のプログラムを学ぶには、2週間かかる。今回は、6回の講義なので「都市型」に絞ってお話をします。

■2.森と風のがっこう
【経緯】
・岩手県葛巻で2年前、廃校になった跡地を利用して、「森と風のがっこう」を作った(以下がっこうと略)。子供にどう自然や環境について、教えることができるか取りくむ目的である。
・廃校を利用して自然環境教育の拠点をつくり、私もお手伝いすることになった。滞在型の施設にし、合宿もできるようにした。環境としては恵まれているが、学校の敷地と言う限られた範囲で、パーマカルチャーを実践する例としてご紹介します。

【環境づくり】
・まず近くの川を汚染しないよう、排水を素焼きの陶管で微生物により浄化するようにした。また、校舎に簡易温室をつけて、暖かいスペースを作った。独立した温室ではなく、建物に接地していることで、温度が下がりにくい温室になった。
・一般に学校の土はいい土ではなく、農業には適さない。造成用の土は締まるような質になっているから、だめです。さらに校庭には塩をまくことも多いので、さらに農業に適さない。そこでまずはプランター栽培から始めることにし、廃タイヤや肥料袋を鉢の代わりにして、ごぼうなどを育てている。
・山に放置されている間伐材をもらって、製材所で加工して、建材にした。山の作業には危険が伴うので林業の方に教えてもらいながら、もったいない材を集めた。カラマツは好まれないがよい材料である。農耕スペースは耕さないように、どんどん上へ重ねていく。土は黒土を残土でもらい、製材時のおがくずを畑にまいて雑草が出ないようにした。さらに土から出るバイオガスを集めて、湯沸しなどに使っている。温室にとってもガスがあるのは、保温にも役立っている。
・温室の隣ではメスの鶏を2-3羽飼っている。鶏は土をつつきながら、耕すので、耕運機のような役割を担う。(チキントラクターという発想)小屋自体を動かしながら、次々にスペースを耕していく。一坪1週間くらいで耕せる。
・ほとんど廃材だけで、鶏舎をみんなで建てた。
・トイレ、風呂は東京の専門家にもお手伝いしてもらい、空き缶で作った。風呂桶はコーヒーの空き缶を骨材にして、回りをセメントで固める。
・間伐材は、あまったものは、輪切りにして、床のタイルとして活用した。
・トイレはくみとりでは臭いので、簡易にコンポストトイレを作った。
・日干しレンガを作って、建材にしている。木枠に粘土分の多い土を入れて、乾かす。

【カフェづくり】
・このがっこうでカフェが作れたらいいね、というアイデアがでた。立地が悪いのだが、どういうデザインがよいのかみんなで絵をたくさん描いた。
・その場所の文化を学ぶ姿勢は大事です。表に出てくる言葉は外来の言葉が多いのだが、一昔前にはパーマカルチャーは地域にふんだんにあった。これをきちんと学んでいきたいと考えた。地域に行って豆腐作りなどを学んだり、地域の祭りを見たりした。
・カフェ建設に当たっては、光風林という建築グループの力を借り、間伐材をフルに、また廃材を使った、輪切りにした丸太の建築で作ることにした。屋根はできれば畑になる草屋根にすることにし、その土は、どぶの土をすくって、使うことにした。実は側溝の土というのは良質な土が多い。断熱材は酪農からもらった古い干草を使い、内装もほとんど廃材などで作った。
・校庭の緑化をするために、砂漠緑化の技術(福岡正信さん考案)である、粘土だんごを使って、鶏も食べられるクローバーを植えて緑化を進めた。学校は校庭に塩をまいているので、植物はなかなか育たない。

【まとめとして】
・がっこうでの合言葉はもったいないので・・・、せっかくだから・・・、ありがたい・・・である。
・その後がっこうには視察団が絶えない状況で、少しずつ取組みを周りに広めるよい機会になっている。

■3.グループデザイン
【デザインの要素】
・4つの要素で考える。
・ここから参加者に酒匂さんが質問して、前回参加者から、鶴川の敷地に何があったかを出し合い、リストアップした。
・出てきた例)丘、地下水脈、竹やぶ、松竹梅、防風林、蜂の巣、たぬき、ひのき、山椒、柿、水田、糸杉、ふきのとう、彼岸花、ぐみ、井戸、古民家、お墓、蔵、広葉樹、お茶、枇杷、やつで(トイレの脇)、よい土壌(ふわふわ)
・これらを4つの要素に分類する。「土地」に関するもの(樹木など)、「エネルギー」に関するもの(井戸など)、「社会的構成要素」(近隣環境やお金)に関するもの、「抽象的な構成要素」に関するもの(考え方、データなど)がある。
・実践的にデザインをするには、土地だけではなく、全ての要素で考えていくことになる。パーマカルチャーの教科書には、まずその地でパーマカルチャーをデザインするには、そこに1年くらい住む、と書いてある。本来そのくらい土地と向き合わなければいけないのだが、今日は短時間で自由な発想で考えてみたい。

【グループワーク】
・鶴川の敷地(東京の町田で30人が都市型パーマカルチャーで暮らす)を前提にして、どんな暮らし方ができたらよいか20~30分で考えてもらう。結果は模造紙に絵や言葉、チャートとして書き出して、グループごとに発表する。(実際は午前の部で30分以上かかった)
【各グループ発表(午前の部)】発表は各グループ2分で行った。
□グループその1
・水路、貯水施設を作ったり、カフェや直売所を作ったり、ツリーハウスを作ったりしたい
□グループその2
・ハッピーな生活をしたい。ソーラー、有機野菜、養鶏、コンポストトイレなどのアイデア。
□グループその3
・開かれたコーポラティブハウスを作る。子供のエネルギーがツリーハウスから出てくる。水源、菜園を通じて近所とつながる。コーポラは住むだけの空間ではなくて、ツリーハウスを使った宿泊施設のアイデア。カーシェアリング、震災の際にスペースを活用するなどのアイデア。
□グループその4
・水源があるので、井戸を掘り、水田まで水を引き、蛍が流れるくらいの水路をつくる。雑木林に子供も大人も遊べるツリーハウスを作る。夜焚き火を囲んでお酒を飲める場所を作る。羊を飼って、服を作る。古民家を改造してカフェ、ミニコンサートができるようにする。カフェで出せるものの栽培、蜂蜜、ジャムなどを作る。かまどを作り、ピザなどを焼く。
□グループその5
・コーポラが高齢化していくことを前提に。子育て、コンサート、地元の高齢者がなごんでいる。コーポラでこどもと高齢者の交流がある環境になる。直売所があり、近所の産物も売られている。地域通貨も使える。収穫祭を行い、地域の人も参加する。近所の小学校の生徒がコーポラを見ていると、買わなくても作ればいいのだ、とパーマカルチャーを自然と学んでいる。機織、染物、加工食品作りを教える拠点になる。
□グループその6
・忙しいサラリーマン世帯を前提に時間の使い方を考えた。手間のかからない野菜を植える。街路樹の落ち葉をもらって使う。子育て中に仕事のできない人たちが集まって、古民家でジャムを作り、時間のない人に回すなどのアイデア。高齢者になって仕事ができなくなったときに、孤独になるのではなく、共同炊事場を作って、そこで集うなどの関係を維持する。
□グループその7
・ビオトープ、蛍、ソーラー、コンポスト、壁面を立体的に利用したキーウィなどの栽培。
□グループその8
・雑木林の間伐材で遊具を作ろう。小学校での学習の場にしてもらう。墨を作って、オーブンにしたり、水の浄化をしたり、菜園で綿を作って、衣類を作れないか。古民家で蚕を飼ってもいい。
・集会室もあるので、排泄物を利用したバイオガスを使いたい。
□グループその9
・果樹園を作ってフルーツを食べたい。羊を育てて、羊毛をとりたい。
・西日を使って、干し柿。梅を植えて、梅干を作り、カフェを作って、近所の人に来てもらいたい。
□グループその10
・自然食レストランを作る。井戸端会議をする場にベンチをおき、野外劇、コンサートができる小さなステージをつくる。使われていない納屋などを地域向けの集会室として、クラフト教室などを開く。記念樹を植える植林をする。野鳥も来るように巣箱も置く。

【各グループ発表(午後の部)】発表は各グループ2分で行った。
□グループその11
・その場でみんなで食事ができたらよいな。レストランがあるといい。共有できる屋根がある平らな空間(子供が走り、お年寄りが座り、子供を見てもらえる)、癒しの空間が欲しい。ツリーハウスがいい、ブランコが欲しい。記念樹を植樹してシンボルにすればよいと思う。バイオガス、太陽光、風力が使えないか。
□グループその12
・しいたけ、そば(手打ちそばにする)が作れないか。屋上菜園で野菜を作る。四季の果樹園をつくり何時でもジュースが作れない。じゃがいも、根菜がつくれないか。やぎを育てて、ミルクを取れないか。
・オーガニックレストランを作れないか。ツリーハウス、風力発電、池、ビオトープを作れないか。
□グループその13
・社会的要素として古民家から議論した。住民が集う場、ファーマーズマーケット、無人スタンド、地域通貨などのアイデア。炭焼き場を作れないか。住民のみならず、例えば近隣の小学校にも情報発信するとかもできるのではないか。
□グループその14
・エネルギーの源をできるだけ電気だけに頼らないよう、風、ソーラー、水車などを作っておく。
・壁面を温室にしてパッションフルーツを育てる。雑穀、家畜を育てる。
・世代交代があるときに、住み方をどう考えておくかも重要だと思う。
□グループその16
・テニスコートは田んぼにする。井戸より水を引き、水田でもち米をつくり、カフェをつくり、竹炭をつかう。カフェではライブや勉強会ができる。住棟真ん中にハーブガーデンにつくる。屋根は葉もの、地面では根菜を中心に作る。ゴミはミミズコンポストをする
□グループその17
・住民でジャム、味噌など加工品をつくろう。そこから必要なものを育てよう。ビオトープで植物を育て、蛍が戻ってくるようにしよう。竹林から竹炭や楽器を作るのもいい。パーマカルチャーに関心のある人が宿泊し体験できる体験入居システムがある。(ウーフのような)
□以下グループは退出のため略。

【酒匂さんの講評】
・ひとつのものが複数の用途で使える、効果を持つなどがパーマカルチャーの基本原則。・地域資源を生かす視点では、東京の人口は使える。中国では公衆トイレの排泄物でバスが走っている。
・重要な機能を1つのところに頼るのではなく、いくつで支えるというのも基本原則。
・地域通貨は自給のネットワークとして重要なものだと思う。まだ実際に交換したいと思うものをみなが持っていないから、今のところは流通が限られている。
・農的な暮らしではどんな人でも(障害があっても)仕事がある。農的な暮らしの条件があれば、いろんな人と関わる機会が生まれる。
・垂直面でも栽培できるものは多い。ぶどう、キーウィは手間のかかる方なので注意。
・果樹の下で動物を育てるという具合に機能を重ねると効率的になる。
・地方の山の荒廃をなんとかしたい、都会でお墓がない、これを結んで、山をお寺が買い取って、山を樹木葬の場とするスタイルがある。
・具体的に絵としてデザインする上では、動線を考える、路をどうつけるかが重要となる。
・みなさんのアイデアを実現するには、一人くらいの専従スタッフがいる。
・楽しい提案が多くありました。次回以降、コンテナ栽培、壁面緑化など具体的なトピックを考えていくが、今日のワークでもすでにいろいろな話が出たと思います。ありがとうございました。

くりこま・ウレシパモシリツアー 顛末記3

2005年07月31日 | パーマカルチャー公開講座
【2日目 ウレシパモシリ見学】
■いざ!東和町へ
2日目は我々へのパーマカルチャ伝導を請け負って頂いた酒匂さんの自然農園-ウレシパモシリ-見学です。朝,旅館を出発し,東和インターチェンジ出口で酒匂さんと待ち合わせです。

インターチェンジについてふとスケジュールを見ると,「11:30 東和IC合流,11:30 西洋風ガーデン見学」とあります。「あ-あ,移動時間計算してないよこりゃ,押しちゃうよー」と思ったのですが・・な-んとガーデンはインターチェンジのすぐとなり(本当に隣・ものすごぉく隣)でした。てくてく歩いていく人もいて車で移動するのがばからしいくらいです。とりあえず,そば屋さんで昼食となりました。

■西洋風ガーデン見学

昼食後は西洋風ガーデンの見学です。酒匂さんの奥様がガーデンを作る際,かかわられたそうです。このガーデンは20R,600坪あります。通常,植木屋さんが育てた大きな木を持ってきて植えるのが当たり前だそうですが,全ての木々が苗から育てられたそうです。10年前から始められたとは思えないほど木々が茂っていました。

このガーデンの特徴は当然,有機管理であることに加えて,食べられる景観作りを目指している点だそうです。まず,センターにやせた土地でも早く育ち,木陰を作り出すアカシアなどを植え,回りにじょじょにいろいろな植物を植えていくそうです。タラ,はしばみ,アーモンド,すいかずら,リンゴ,バレー,グミ,ベリーなどの木々を観察しました。

これらは鶴川でも十分栽培可能であり,様々な味覚を楽しめ,かつ,垣根代わりになったり,日陰を作ったり,窒素固定したりと大活躍するそうです。

あと,ベランダなどで栽培するのにいいのが,麻袋栽培!だそうです。コーヒー豆なんかが入っている麻袋に,ここではメロンを栽培していました。

麻袋は保温性,通気性に優れ,すごく良いそうです。

もう1つのこのガーデンの特徴は園芸療法です。基本的に植生が車いすの目線で美しく見えるように設定されています。

導線に関しても(ハーブガーデンは特に)車いすで動きやすいようになっています。さらに,園芸作業を精神疾患や障害を持つ方々への療法として活用しているそうです。これに関しては,「精神科・作業療法士のある人(私の頭が上がらない人)」が興味津々でした。

いつまでも興味のつきないガーデン見学でしたが,時間がやってきてしまい,いよいよウレシパモシリ見学です!

■ウレシパモシリ見学

ウレシパモシリ-アイヌ語で「自然界」-に到着しました。2軒の家屋の周辺に田畑が広がり,空は青く,空気は澄んでいました。我々を歓迎するために豚君まで現れてくれ,一同で大騒ぎ。奥さんとお子様をご紹介頂き,早速,農園見学に出発しました。

はじめに,お子様たちの名前の由来になっている,はんの木,ねむの木についてのお話がありました。

これらは,昔,たんぼの畦に植えられていたそうです。畦を安定させ,窒素固定をするそうです。また,伐っても再生力が強く,薪の材料として重宝したそうです。

水田では見事に稲が育っていました。

今年から,全ての水田で不耕起農法を行っており,もっぱら「合鴨たち」が耕したそうです。

除草のため,くず大豆を撒いたそうですが,ほとんど鴨のえさになっているのではとのこと。そのせいか,なんと野生の鴨まで夜勤(ハンターを避けるため)で耕しに来てくれるそうです。

また,畦の草は刈ったあと,持ち出さないと行けないそうです。なぜかというと刈った葉をその場においておくと有機質の良い土になってしまい,畦が崩れてしまうからだそうです。そこで,ウレシパモシリでは,牛に畦の草を食べてもらっているそうです。

えさ代の節約,手間の節約になり,しかも,畦の草さえも無駄にしないという,まさに「循環」といったところでしょうか。さらに,排水路では蛍の幼虫のえさとなる貝が生息しており,そのおかげで,大乱舞がみられるそうです(みたーい)。

次に,ため池に移動です。

ウレシパモシリの農業用水は全てこのため池でまかなわれているそうです。深さは3mもあり,ふな,こい,沼エビなどがいるそうです。これらは食卓にならぶ事もあるそうです。ちょうど,まわりの山々の雪解け水が集まってくるようにデザインされているそうで,昔の人はすごいなと思いました。

面白かったのは,「ふなはわく」というお話です。ため池などに生息しているふなというのは人が放した訳ではないのにいつの間にか住み着いているそうです。これを地元の人々は「ふなはわく」というそうです。

ため池から戻る途中,畑でキュウリをもいで食べさせてもらいました。

甘いこと,びっくりしました。こんな,野菜を鶴川でも作れたらと夢は膨らみます。

母屋の前まで戻ってきてから,豚舎,やぎ,鶏舎を見学しました。

なにが,びっくりって全く臭くないんです。これなら,十分鶴川でも飼える!と思いました(豚は無理かもしれませんが・・鶏とヤギならイケル?)。方法について聴きましたが詳細が理解できませんでした。また,教えてもらいましょう。鶏に関しては鶏舎の中にミミズの養殖箱がおいてあります。ミミズを鶏が食べ,鶏の糞をミミズが食べるという「循環」がここでも出来上がっています。

これらの見学のあと,即席タープの下で頂いたお茶とケーキ(ウレシパモシリ製 卵&にんじん)のおいしかったこと!感動的でした。

これらを頂きつつ,酒匂さんへの質問タイムとなりましたが,いやー盛り上がりましたね。やがて,終了,順次解散となっても誰一人帰りません。本当にいつまでも帰りたくない,心温まる思いがしました。

我が家も,蛍乱舞に後ろ髪を引かれつつ,風の又三郎の地,種山高原へキャンプに向かうためウレシパモシリを後にしました。こりゃ,また来なきゃね。ていうか間違いなく来ます(みなさんもそう思いますよね?)。酒匂さん,そして奥様とお子様方,本当にありがとうございました。

■二日目のまとめ
二日目は,西洋風ガーデンで実際の外構の参考になる体験をしました。かなり,具体的にイメージが湧いてきました。ウレシパモシリでは,まさに,パーマカルチャ-循環型社会が実践されていました。

そして,それらを目の当たりにできたこと,いろいろなお話を聴けたことは非常に有意儀でした。しかし,この場所の美しさ,においを感じ,空気を吸い,音を楽しみ,それを皆で共有した-体感したこと-の方がより重要である気がします。この体感をぜひ鶴川でも実現したいと思います。

【最後に】
このツアーを企画・運営して下さったアンビエックスの皆様,お忙しい中,細心の配慮を賜りありがとうございました。くりこまの皆様,ウレシパモシリの皆様,大勢で押し掛けた我々を暖かく,凄まじい情熱で迎えて頂いて本当にありがとうございました。ツアーに参加した皆様,この体験をぜひ,今後に生かしていきましょう。そして,また行きましょう!


この顛末記を最後まで,読んで下さってありがとうございます。くだらない点,至らない点が多々あると思いますが,できうる限り正確に情報を網羅したつもりです。また,少しでも旅の雰囲気,今自分の中に残っている思いをこの文章の中に凍結できるよう書いたつもりです。年月が経っても,この思いを忘れぬように・・

(文・かわちや)

くりこま・ウレシパモシリツアー 顛末記2

2005年07月30日 | パーマカルチャー公開講座
【1日目 旅館・夜の勉強会】
■旅館への移動
植林体験のあと,全員で旅館へ向けて移動しました。車9台を連ねての移動のため,信号で後続車が取り残されてしまい途中で待ったり,はぐれる車がでたりと先導係のくりこまの方,本当にお疲れ様でした。旅館は佐藤旅館と温湯旅館に別れての宿泊です。

我が家は佐藤旅館に泊まりました。中庭に面して部屋がぐるりと配置されている変わった造りで,部屋の扉はなんと障子戸のみ!風情ですね~。

お風呂も露天風呂も情緒たっぷりで最高でした。ただし,強行スケジュールのため,旅館到着から次の夜の勉強会まで1時間ほどしかありません!みなさん,大慌てで入浴し食事を済ませ,いざ,山の講義へ出かけました。

■夜の勉強会・山の講義

夜の勉強会は,旅館近くの道の駅にあるレストランで行われました。呑める人はビール片手に,そうでない方はめいめい好きなものを飲みつつお話を伺いました。

まず,くりこま杉協同組合理事長の千葉さんから組合の現状についてのお話がありました。

平成2年にスタートした組合ですが,3つの基本方針があるとのことです。まず,山を守ること。放置され荒廃していく山に手を入れ守っていくためには,地元で製材し地元経済を活性化する必要がある。加えて,雇用の確保も大切なポイントであるそうです。2番目に,建てられた住宅で深呼吸できる空間を提供すること。かつ,それらを実現できる材を提供することだそうです。3番目に,安全性およびトレーサビリティの確立です。これは,深呼吸できる空間を作るために必要なことであり,国産材に対する信頼を向上させるためだそうです。

これらを掲げ活動されてきたそうですが,去年民事再生を申請したそうです。幸い,不採算部門を閉め20名の職員を解雇し,7月14日から再スタートを切ったところだそうです。これだけのすばらしい取り組みがなされているのに,経済的になり立たないという現状に強い憤りを感じました。

ついでに1杯目のジョッキが空に・・

次に,山武の社長である大場さんから山側の事情に関するお話がありました。

かつて,くりこまを含めた宮城の山というのはブナの原生林であったものを,戦後の拡大植林計画でどんどん伐採し,杉の人工林に変えていったそうです。

続いて,我が国の木材の使用に関するデータが示されました。一人当たりの木材消費量は20年前と比べて15%も減少しており,木造住宅割合というのもどんどん低下してきている。さらに,柱材における国産材の割合は平成5年には7割であったものが,平成14年には5割に減少してきている。木材の需要が低下し,かつ,安価で危険な外材に押されシェア自体も低下しているのが現状だそうです。このように,国産材で採算が取れないため,手入れされず放置される山が日本中でみられるようになってしまったとのこと。

さらに,問題なのは人工林の3割が同時期に植えられ現在45年生のもので占められていることだそうです。10年後には一斉に伐採時期を迎えるので,それまでにこれらを有効利用できる方法を確立する必要があるとのことでした。

大場さんのお話で印象的であったのは「山・木を守るということは水を守ることである」とのお言葉です。大きく育ち二酸化炭素還元能力や保水力の落ちた木を伐り,若い苗に変えていく事でこれらの能力が保たれるとのこと。まさに大きな循環を担う仕事だと思いました。

ここで,2杯目のジョッキも空に・・

続いて,相根さんからこれらの現状を改善するためのプロジェクト-エコハウスプロジェクトーが紹介されました。木材の原産地で製材のみでなく,住宅を組み立てられる寸前の加工まで行うことで山側に経済的な還元を行い,それを都市部に運んで住宅を造るというプロジェクトです。これに関しては相根さんから総会などで詳しくお話ししてもらいたいですね。

ついに,3杯目のジョッキも空に・・

最後にSさんから,森林経営の現状についてお話がありました。林業を守るために,日本の山を守るために様々な取り組みがなされているのだなと感じました。

私も大分いい感じに・・

こんな話を伺ってあっという間に時間が過ぎましたが,みなさん白熱した議論はなかなか終わりません。終了時間を1時間も延長して頂きようやく終了となりました(お店の方ありがとうございます)。ちなみに,子どもたちは外でカブトやらクワガタを捕まえて大喜びしていました。しかも,虫かごまでもらって!上機嫌でした(重ね重ねありがとうございます)。

このあと,帰ったあとも,それぞれの旅館で白熱した意見交換が行われたようです・・すごい・・。

■1日目のまとめ
ツアー1日目は,自分達の住まいに使われる木材がどんな山で育ち,どんな人たちによって守られ,どのように作られているのかを体験し,日本の山や林業の問題点について考えさせられました。我々の住まいや活動がこれらの改善に少しでも寄与できるよう願ってやみません。

(文・かわちや)

くりこま・ウレシパモシリツアー 顛末記1

2005年07月30日 | パーマカルチャー公開講座
■はじめに
さる,7月30日,31日の2日間に渡り,くりこま杉協同組合およびウレシパモシリ(酒匂さんの自然農園)を見学するツアーに行ってきました。大人31名,子ども14名の計45名がツアーに参加しました。強行スケジュールの中,皆さん非常に熱心に見学されていました。まさに,エコビレッジ鶴川の住まい(建物)と価値観を支える重要な部分を体感した気がします。
行けなかった人も行った人もこれを読んで楽しんで下さいませ!

【1日目 くりこま杉協同組合の見学】
■集 合

ツアーの集合はくりこま杉協同組合へ13時となっていました。直接現地に行かれる方と東北新幹線くりこま高原駅に集合してから現地に向かう班に別れました。

駅に着いてみたら,くりこま杉協同組合の方がワゴン車を出して迎えに来てくれていました!現地での移動を全て(2日目の移動も)まかなって下さるとのこと!ありがたいですね~(もちろんガソリン代,高速代は自己負担です)。

ワゴン車に先導されること30分でくりこま杉協同組合に到着。アンビエックススタッフ,現地集合の方々と合流し開会式のあと早速工場見学となりました。

■工場見学・燻煙乾燥プラント

工場見学では,まず燻煙乾燥プラントを見学しました。感想としてはとにかく大きいことにびっくりしました。もっと炭焼き小屋みたいなイメージでいたのですが,実際はまさにプラントという感じでした。プラントは454型で80から100立方の材の乾燥が可能とのことでした。

燻煙乾燥の一番のキモは端材,チップ,かんな屑などの本来は捨てていたものを燃料(バイオマス燃料)として利用している点だそうです。重油などを使用する場合にくらべ1回の乾燥につき80万円程コストが安くすむそうです。化石燃料を使用しないため環境負荷も少なく,かつ,科学物質汚染もありません。さらに,大量の木酢液がとれます(1000L×4本)。

このあたり,循環型社会の構築を目指すエコビレッジに最適の材だなと思いました。

実際の燻煙乾燥の行程ですが,まず製材された材を桟にのせ重ねて積み上げます。これらをプラントに入れ大体15日前後燻煙するそうです。燻煙する時間は,端材やチップなどを入れる量で決定するそうです。これは職人わざですね。何せ,燃え尽きるまで蓋を開けることはできないそうで,途中でもう少し燻煙しようとか,もう止めようといったことができないそうです。

燻煙によって含水率は概ね半分に,60%のものは30%程度になるそうです。これではフローリング材の基準である10%以下に達しないため,自然乾燥や人工乾燥を追加するそうです。燻煙乾燥のみで乾燥しきれないというのが目下のところジレンマであると思われました。

しかし,木の持つ調湿作用を失わず,防虫,防カビ,防腐能力をノンケミカルに添加できる「バイオマス燃料による燻煙乾燥」の技術はすばらしいなと感じました。

■鶴川の材

次に,製材所に向かう途中で,鶴川から送った材を確認しました。私は伐採時も見学していたのですが,その時のイメージと比べてなんか乾燥して縮んだ?様な気がしました。基本的には丸太のままでしたが,これは,使用する用途(例えばテーブルとかいす)によって製材方法が違うためだそうです。ですので,何に使うか先に決めないといけないことが判明しました!今後の総会での検討事項ですね。

■製材工場見学
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最後に製材工場を見学しました。丸太を柱状に加工するための機械をまず,見せていただきました。しかも,運転席?からです。

丸太が順番に送られてきて,赤外線で切断線を引き両側をいっぺんに切断します。そして丸太(もう丸太じゃない?)を90度回転させて両側を切断し出来上がり!です。

この工場では通常の製材所の10倍のスピードで製材するそうです。スピードアップの秘訣は通常1面ずつの切断を2面いちどに切断できるこの機械の恩恵に加えて,同じサイズのものをある一定期間内加工するという方式で効率アップをはかっているそうです。

次に、燻煙済みの材をフローリング材に加工する行程を見学しました。

機械に通して加工していくのですが,節の部分は専用のパテで埋めて手作業でヤスリをかけるそうです(ストッキングなんかが引っ掛かってしまうため)。

「基本的にはパテでうめなくても使えるんだけどね」というお話を伺い,聞いてみました。パテうめしない状態での出荷も可能ですか?と・・もちろん可能です!と力強いお返事を頂きました。

それにしても,皆さん,フローリング材の見学は熱心でした。やっぱり,直接「じぶんち」に使う状態になっているものは気になりますよね~。あと,子供達はあちこちに山済みになっている端材をもってっていいよ~といわれ大喜びでした。

我家も夏休みの工作用に何枚かもらっちゃいました。

てな具合で,時間がぁ!・・という相根さんの声に押され,後ろ髪を引かれつつ山の見学へと一同出発しました。

■伐採見学

工場見学のあと全員で山へブブーンと移動し,まず伐採の見学に。到着したとたんにカンカンデリだった天気が怪しくなり雨模様に・・。フフフ,こんなこともあろうかと我家は全員分ちゃーんとカッパを持ってきたのだ。じゃあ,とっとと出せって?無理無理,だってカッパはブルーシートで梱包されて車の屋根の上だから・・って意味ないじゃん!!結局他の方に傘をお借りしました。

で、伐採ですが,50年から55年生の杉を実際に伐採する現場を見学しました。

しかも,エコビレッジを代表してKさんが楔を打ち込む役を担当しました。

巨大な木が伐採されて,しかも倒れていく様は雄大で感動的でした。

さらに,この伐採した木が実際にエコビレッジ鶴川で使われるとのこと。まさに,木材のトレーサビリティが確立されているなと感じました。

次に,伐採した木材の枝打ちやある程度の長さに切断する作業を見学しました。かつては全て手作業で行っていたそうですが,現在は高性能林業機器が用いられていました。

作業効率の向上はもちろんですが,この機械のおかげで事故が減り,若い人が山へ帰ってくるのに一役買っているそうです。

機械自体はパワーショベルの様は形をしていて,木材をがっちりと掴みます。掴んだまま材をスライドさせ,長さをはかりつつ枝を払う作業を行います。長さを計測したらチェンソ-で切断します。

これらの作業がすべて一つの機械で可能です。見学時,チェンソーで材を切断する際,木屑が子供達のほうへちょっとかかったのですが大騒ぎで楽しんでおりました(キャーキャーいってました)。

■植林体験
伐採見学のあと,今度は伐採済みの斜面への植林体験を行いました。はじめ少し雨が弱まるまで待とうと木陰で雨宿りをしました。木陰というのは本当に雨宿りできるのですね。ちょっとびっくりしました。もっと濡れるかと思っていましたので・・

さて,植林作業は「こくわ」で地面を掘り返して30センチほどの深さの穴を掘ります。1年くらい育てた苗木を穴の中に入れて土をかけ,まわりを踏み固めます。

この時,根を丸くまとめて,ゴミが入らないように注意します。その辺に落ちている葉や枝も「ごみ」になってしまい,根が腐る原因になってしまうそうです。これらの点に注意しつつ,いっこうにおさまらない雨に打たれつつ,みなさんで植林しました。

一人10本くらいの苗を植えて終了となりました。

はじめは,大変な作業だったのですが,やっているうちに楽しくなり,もっとやりたいなーというところで終了となってしまいました。

「これらの植えた杉が伐採の時期を迎える頃にはおれたちもお父さんも多分この世にはいないなー」という職人さんの言葉を聞いて,林業ってのは悠久な世代を越えた仕事なんだなーと実感しました。仕事が世代を超えて繋がっていくというのはなんだか不思議な気がします。是非また,成長した木々をみるためにくりこまに行きたいですね。

それにしても,伐採と植林の時に限って雨が降らなくても・・とぼやいていると,「雨が降った方がね,根が定着しやすくて育つ確率が高くなるんですよ」とすてきな言葉をかけて頂き,いやー雨降って良かったと簡単に思い直した次第です。

次回は1日目 夜の勉強会の報告です。

(文・かわちや)

【第0回】パーマカルチャー講座

2005年06月19日 | パーマカルチャー公開講座
パーマカルチャーとは
パーマカルチャーとは、身の回りの自然環境と調和した人間の生活圏を作り出すためのデザインの体系のこと。
デザインの要素には、
(1) 土地に関すること
(2) エネルギー・物質循環に関すること
(3) 社会的なこと(どのくらい関われるかなど)
(4) 抽象的なこと(お金のことなど)
の4つがある。(1)、(2)だけでなく、全ての要素の関わりをイメージしていくことが大切。

食生活のデザインについて
人間の歯の割合からみて理想的な割合は5:2:1(穀物:野菜:嗜好品)。
肉を穀物と同量食べるためには、4倍の穀類が飼料として必要で、さらに大変な手間が必要。穀物をそのまま食べたほうが、簡単で、恵まれたとおりに食べていれば、楽に自給できる。このような食生活を選べば、健康になれるし、環境にも不可をかけなくてすむ。強制ではないが、皆さんの暮らしもこの5:2:1を基本にデザインしていくことも考えられる。デビットフォルムの「受動的な生活から一歩踏み出そう」の言葉どおり、皆さんもどのような生活ができるかイメージを膨らませてほしい。

デザインの基本原則
今後、デザインの基本原則(別紙)をもとにデザインしていく。基本原則の意図するところが上手くまとまっていると思っていて、よく使わせてもらう言葉。
「もったいない。せっかくですから。おかげさまです。」
どうせ植えるのだったら、(植物に)いろんな仕事をしてもらうように考えていこう。

次回は、皆さんと土地を回って、どういう利用価値があるか、様々な要素の関わりを考えていく。